Iran hostage crisis - 2 -
イラン政府及び学生グループはこれらの人質を「ゲスト」と称し、アボルハサン・バニーサドル暫定外相に視察に行かせたほか、「非常に気をつけてもてなしており感謝されている」と国内外のメディアに対して報じさせた。
さらにその後も、人質の私物の窃盗や私語の禁止のみならず、殴打や手足の拘束、長期間の独房や冷凍庫内への監禁、さらには2人の海兵隊員に目隠しをしたまま、見せしめのために大使館前のパレードを行うなどの残虐行為を受けていた。これらの残虐行為を受けて、4人の館員が逃亡を試み、2人の館員が自殺未遂を起こしたほか、1人の館員がハンガーストライキを行った。
また、大使館占拠当時イラン外務省に出向いていた3人の館員は、大使館占拠後数か月間外務省内に軟禁され、食堂で宿泊し浴室で下着などを洗濯することを余儀なくされた。さらに11月に暫定政権のバーザルガーン首相が辞任した後は、部屋の外への出歩きが制限されるなど、行動範囲がさらに制限されるようになった。
なおその後、人質になった館員に対してカナダなどの中立国かつアメリカの友好国の外交官による接見が認められた。この機会を通じて、人質となった館員とアメリカ国務省の間の秘密連絡が数度に渡り行われる。
また、11月9日には、「抑圧された少数民族と女性への心遣い」と称して、2人のアフリカ系アメリカ人男性館員と1人の白人女性館員が釈放されたほか、同月にはもう1人アフリカ系アメリカ人の館員が釈放された。しかし他のアフリカ系アメリカ人の男性館員と女性館員は最後まで釈放されないままであった。また、1980年7月には、1人の館員が重度な多発性硬化症と診断されたことで解放される。
1980年の夏以降は、人質に対する食糧配給やその他の管理効率の向上という名目、実際は逃亡や救出を困難にするという目的で、人質の一部がテヘラン近郊の刑務所に移された。1980年11月から解放までの期間は、浴槽と温水シャワー、洗濯機などが完備された、元秘密警察の長官で1970年8月に暗殺されたテイームール・バフティヤールの屋敷に集められ軟禁されることになる。
事件が起こると同時に、アメリカ国内ではイランとその政府に対する大きな非難が沸き起こり、アメリカ国内にあるイラン大使館や領事館前でデモが行われたほか、在米イラン人(その多くは旧政権下でアメリカに渡り、その後革命のため帰国できなくなった革命政権に対して批判的な人たちである)に対する暴力事件が起こった。
さらに、学生グループの乱入に対して反撃せずに大使館を明け渡した大使館員及び海兵隊員に対する言われなき批判さえ行われた他、軍事的手段による人質救出作戦を行わなないカーター政権に対する批判も巻き起こり、改選に向けて動き出そうとしていたカーター政権に影響を与えた。
《人質救出作戦の失敗》
アメリカ政府はイラン政府を懐柔するために、パフラヴィー元皇帝を12月5日にアメリカから出国させてパナマへ送ることで事態の打開を図った。しかし、ホメイニー率いる保守派が実権を握るイラン政府は大使館の占拠を解くどころか、それを支援するなどアメリカに対して強硬な態度を取り続けた。さらにアメリカ国内では、保守派を中心に、軍事的手段による人質開放作戦を行わなないカーター政権に対する批判も巻き起こった。
これに対してカーター大統領は、1980年4月24日から4月25日にかけて人質を救出しようと、ペルシャ湾に展開した空母と艦載機による「イーグルクロー作戦」を発令し、軍事力による人質の奪還を試みた。
しかし、作戦開始後に作戦に使用していたヘリコプター、シコルスキー・エアクラフトRH-53D シースタリオンが故障した上に、ロッキードC-130輸送機とヘリコプターが接触し、砂漠上で炎上するという事故が起き作戦は失敗した。これによってイラン政府はさらに態度を硬化し、事態は長期化する傾向を見せた。またこの後、さらなる救出作戦の実施に備えて、人質はイラン国内に分散して軟禁されることになった。
《解決》
アメリカ政府は軍事力による人質の解放を諦め、サウジアラビアやヨルダンなどのイスラム諸国などによるイラン政府の説得を試みるが事態は膠着したままであった。
ところが、1980年7月27日にパフラヴィー元皇帝が、最終的な亡命先のエジプトのカイロで、アンワル・アッ=サーダート大統領の保護下で死去したことで、学生らによる大使館の占拠の理由が薄れ始め、これを受けてアメリカ政府とイラン政府は水面下で交渉を続けた。
その後アメリカで行われた大統領選挙で、再選を狙ったカーターが共和党のロナルド・レーガンに敗北した。
イランは仲介国と人質の返還でアメリカと合意し、レーガンが就任し、カーターが退任する1981年1月20日に人質は444日ぶりに解放され、アメリカ政府が用意した特別機でテヘランを後にした。
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