【駐英イラン大使館占拠事件】
年月日：1980年4月30日 - 1980年5月5日
場所：駐英イラン大使館
結果：人質の解放
戦力：SAS隊員30-35人･多数の一般警察官対テロリスト6人
損害：人質2名死亡、2名負傷
SAS隊員1名負傷テロリスト5人死亡、1名逮捕

4月30日にイギリス・ロンドンにあるイラン大使館が6名のホメイニ師体制反対派イラン人テロリストにより占拠されたテロ事件。人質4人を殺害するが、5月5日に特殊部隊が突入し犯人6人中5人を射殺し鎮圧。　

イギリス陸軍特殊部隊ＳＡＳ(SAS=SPECIAL AIR SERVICEの略。
Airから空軍を連想しやすく「空軍特殊部隊」と誤訳されがちだが、陸軍の所属部隊)がもっとも対テロ部隊としての力を発揮し、世界的に存在が知れ渡った事件。

《概要》
1980年4月30日午前11時半頃、ロンドンのプリンセスゲートにあるイラン大使館にDRMLA(アラブ自由と民主革命運動)を名乗る6名のテロリストが侵入し、襲撃の際にイラン人報道官と同じくイラン人のアルバイトを射殺した。

6名はイラン国内で逮捕・収監された同志91名の解放を要求し、要求が聞き入れられない場合は、30分毎に人質の殺害を行うと宣言した。このグループのリーダーは有名なテロリスト「サリム」ことオウン・アリ・モハメドであった。

人質になっていた警察官がテロリストに捕まる前に警察本部に連絡したため、直ちにスコットランドヤード(ロンドン警視庁の通称)が駆けつけた(人質の警察官はロンドン警視庁の警察官で元ＳＡＳ隊員)。

要請を受けたＳＡＳはイラン大使館に集結、対テロ専門家が周囲の状況を分析、それと同時に煙突にマイクロホンを仕掛け、テロリストの情報を収集した。

それを元に「ＳＡＳ/ＣＲＷ中隊(COUNTER REVOLUTIONARY WARFARE)」が待機している兵舎に大使館の原寸モデルを設置して突入訓練を行い有効な突入戦術を検討していた。　

事件発生から3日目に食料及びタバコの供給の際に警察の交渉人が交渉を行い、テロリスト側は当初の要求を撤回、駐英アラブ系大使3名との面会、及びイギリスからの安全な脱出を新たに要求した。

しかし6日目の5月5日に事件は急変する。要求が受け入れられていない事に気づいたテロリストは18時50分頃に人質1名を殺害し死体を玄関へ投下した。

これを重く見たスコットランドヤードは指揮権をイギリス陸軍の特殊部隊ＳＡＳへ委譲。

交渉班が国外への脱出要求を受け入れる対応で時間稼ぎしている間にＳＡＳは作戦準備完了。

テロリスト掃討と人質奪還のため行動を開始する。

その際事件当日に偶然居合わせた元SAS隊員の警察犬トレーナーが降下用ロープを結び付けていた為、2隊の内1隊の突入部隊がそのロープを使い突入する作戦となり、5月5日の19時23分遂に「ニムロッド作戦(狩猟家作戦：Operation Nimrod)」が決行された。

ＳＡＳが大使館に突入、第1突入班が大使館の屋根から侵入、バルコニー・中庭・テラスへロープで懸垂降下、特殊なプラスチック爆弾で窓枠を破壊、スタングレネード(閃光弾)を投入し館内に突入、第2突入班はバルコニーから突入、第3突入班は壁を破壊し館内に突入開始した。

その際犯人が人質を1名射殺したが結果的にリーダーを含め犯人5名のテロリストを射殺し、1名を逮捕。人質となっていた26名も無事救出された。この突入の模様はBBCでも放送され、突入から11分で完了した。（人質のうち2名がBBC職員であった）

犯人グループで唯一生き残た１名は無期懲役の判決が下り服役したが2005年に仮釈放となっている。

この事件を切っ掛けに、各国の特殊部隊はＳＡＳの戦術や装備を参考にした。
1977年に発生したルフトハンザ航空機ハイジャック事件に続いてヘッケラー&コック社製のサブマシンガンであるH&K MP5がニムロッド作戦に使用され一躍有名となった。

映画
『ファイナル・オプション』
1982年、イギリス。1980年のイラン大使館占拠事件をモデルとした映画。多少設定の変更はあるがよく描かれた作品である。
ルイス・コリンズが主人公のピーター・スケルン大尉を演じている。
ビデオ化されたが絶版、後にDVD化されたが、こちらも絶版。

派手さはないが一部の方々には、わりと有名な作品である。

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