
ご存知の方もいると思いますが、マイケル・ベイは『アルマゲドン』『パール・ハーバー』『トランスフォーマー』シリーズなど、手掛ける作品の大半が大ヒット。ですが映画評論家の評価は最悪、映画ファンも否定的など、底抜け作品連発監督の印象を持たれています(僕は『アルマゲドン』『パール・ハーバー』とか監督の映画好きですけどね…)。
変化の兆しは『ロストエイジ』(2014)前に手掛けた映画『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』。この企画、『パール・ハーバー』の頃から温めていた企画みたいで、予算は2000万ドル。この額、これまでの作品の中で一番低予算なんです。念願の企画、公開後に挙がった評価も好意的なものもあり(米映画評論サイト“Rotten Tomatoes”の総評は49%で“腐敗”ですが)、ここから『トランスフォーマー』の卒業と、新天地へ動き出します。
前置きが長くなりましたね。こっから『13 Hours』です。本作は先程の『ペイン&ゲイン』同様、実話(「2012年アメリカ在外公館襲撃事件」)が基の作品で、『ブラックホーク・ダウン』タイプのミリタリー映画です。なお、「2012年アメリカ在外公館襲撃事件」とは、
“アメリカ合衆国で制作された映画『Innocence of Muslims』がイスラム教を侮辱するものとして、これに抗議するためエジプトやリビアなどアラブ諸国のアメリカの在外公館が2012年9月11日以降、次々に襲撃された事件の名称。一連の襲撃事件で、在リビアのアメリカ領事館でクリストファー・スティーブンス駐リビア大使ら4人が殺害。公務中のアメリカ大使が殺害されるのは、1979年に駐アフガニスタン大使だったアドルフ・ダブスが殺害されて以来。
エジプト、リビアを発端とした反米デモは他のイスラム諸国にも波及。またスーダンでは、批判の対象はアメリカだけでなく、イギリスやドイツなどといったヨーロッパ諸国にも向けられることになった。各国の治安部隊が在外公館への侵入を許したことは、2010年末からのアラブの春により強権体制が崩壊した影響で、治安維持能力が低下したことを浮き彫りにする結果になった。”
これが事件の主な概要で、きしくも世界を騒がせているイスラム教も関わる事件。しかもその発端が一本のアメリカ映画という、映画好きの自分としては大変複雑な話です。
非常に遺憾と感じたのは、宗教というデリケートな存在を映画が土足で踏み荒らした事実。本来映画は対象となる素材を慎重に扱うべきで、多くのベテラン監督や若手の映画監督は肝に銘じているからこそ、映画を作れる栄誉を得られてるのです。去年見たイーライ・ロスの『サクラメント』という映画にも、カルト教団が人々を扇動、集団自殺を招いたという衝撃的なシーンですら、題材を慎重に扱ったからこその真摯な姿勢がありました。宗教は救いを求める人や懺悔の場として求める人が関わる神聖な存在ですし(僕は無神論者ですけどね)、それを如何様な理由であれ貶めたり侮辱するのは、誰にも許されることではないはず。よりにもよって映画がそれをやってしまった事実というのは、許されることではありません。映画自体を見ていないので、あくまで想像の話ですが、監督のナクーラ・バスリー・ナクーラに映画を作る資格はないのでは?
話が逸れて申し訳ない。気になる映画の方なのですが、果たしてマイケル・ベイ監督はどのようにテーマを扱ったのか?大変気になる限りですが、(前述した)去年公開のエメリッヒ作品『Stonewall』が興行・批評大惨敗、同性愛者の人々からも大ブーイングの嵐という、前例が発生しているため、この作品もどうなるのか非常に心配な限りなんです(予告を見た現地人は批判しているみたいです)。
今年最初の紹介映画がこんな感じで良いのかと思うでしょうが、まあ自由に書けるうちに書こうというのがスタンスなので(当然先ほど記したように、素材は慎重に扱わなければです)、今後もなるべくこの感じでやっていこうと思います。
どう転がるか分からぬ本作は、全米で今週公開です。日本公開は未定ですが…
予告編はこちらから
https://m.youtube.com/playlist?list=PLBvkXcgWx_V91FG4RZG2iV_6ex_S7LXaN
↑新作 Box Office 金曜日速報(1/17)
1. Ride Along 2 $12,000,000(3175) Great!
4. 13 Hours: The Secret Soldiers of Benghazi $5,925,000(2389) Good!
7. Norm of the North $1,580,000(2411) zzz...
“Ride Along 2”
配給:ユニヴァーサル
監督:ティム・ストーリー
Budget:$40,000,000
Weekend Box Office:$35,243,095 Great!
OSCAR PLANET Score:30.2 BIG BOMB!
Razzie Potential:作品賞、監督賞、脚本賞
主演男優賞:ケヴィン・ハート
助演男優賞:アイス・キューブ
“13 Hours: The Secret Soldiers of Benghazi”
配給:パラマウント
監督:マイケル・ベイ
Budget:$50,000,000
Weekend Box Office:$16,193,223(2389)
OSCAR PLANET Score:55.3
Oscar Potential:視覚効果賞、録音賞、音響効果賞
“Norm of the North”
配給:ライオンズゲイト
監督:トレヴァー・ウォール
Budget:$18,000,000
Weekend Box Office:$6,844,137 zzz...
OSCAR PLANET Score:16.5 BIG BOMB!
Oscar Potential:アニメーション映画賞
“A Perfect Day”
配給:IFCフィルムズ
監督:フェルナンド・レオン・デ・アラノア
Budget:-
Weekend Box Office:-
OSCAR PLANET Score:65.7
Oscar Potential:作品賞、監督賞、脚色賞
主演男優賞:ベニチオ・デル・トロ
助演男優賞:ティム・ロビンス
助演女優賞:オルガ・キュリレンコ
“The Benefactor”
配給:サミュエル・ゴールドウィン・フィルムズ
監督:アンドリュー・レンジー
Budget:-
Weekend Box Office:-
OSCAR PLANET Score:35.5
Razzie Potential:主演男優賞:リチャード・ギア
助演女優賞:ダコタ・ファニング
※OSCAR PLANET Score…各有力媒体の批評を基にOSCAR PLANET独自の計算法により弾き出した評価バロメーター。作品賞、監督賞&脚本賞レース参戦を目指すのであれば、少なくとも70.0以上は欲しく、80.0以上なら堂々たる資格を具えていると考えて良い。ただし、演技賞や技術賞では作品評価が伸びなくても、候補入りする場合が少なくない。
※Oscar Potential…オスカーチャンスのある部門。太字は特にその可能性が高い。
【総括】
『Ride Along 2』は日本ではあっさりDVDスルーとなった「ライド・アロング 相棒見習い」(14年)の続編。結婚を間近に控えたケヴィン・ハートが義理の兄となる予定のアイス・キューブと共にマイアミで麻薬王と対決することに…。一作目同様ハートとキューブの魅力頼みの映画で(とりわけハートのコメディの才能。脚本は前作の焼き直し)、それ以外に観るべきところはないと批評家は相手にしていないが(ラジー賞こんにちは)、それでも一定の集客が見込めるのがこのアフリカ系コメディアンを主人公にしたジャンル。少し前まではマーティン・ローレンスの独壇場だったが、彼が休んでいる間に、そこに上手に潜り込んだのがハートと言えるだろう。今回も週末売り上げ3,524万ドルと一作目ほどの勢いはないものの、十分過ぎるオープニングを迎えている。当然更なる続編が作られることだろう。キューブは「ストレイト・アウタ・コンプトン」(15年)のヒットにより再評価の気配もあるが、自身の主演作でも結果を残せたのは大きい。
『13 Hours: The Secret Soldiers of Benghazi』はミッチェル・ザックオフのノンフィクション小説を基に、2012年リビア、アメリカ領事館襲撃事件の顛末を描くアクション・スリラー。ジェームズ・バッジ・デイルやジョン・クラシンスキー等、実力はあっても「大スター」ではない俳優が起用されているが、実はこれ、あのマイケル・ベイ映画。ビッグバジェット映画しか手掛けられないわけではないことをアピールしたい一作で(それでも製作費は5,000万ドル)、なるほど批評はいつもよりは悪くない。シリアスな部分と気楽に見られる部分の配分が適当で、相変わらず中身がないと斬り捨てた評もあるにはあるが、いつもよりは少なめに抑えられている。興行成績も及第点だろう。決して華々しいスタートというわけではないが、保守派のアクション映画ファンの心を掴んで、まずは堅調な出足となっている。デイルやクラシンスキーにとっても悪くない結果。もちろん賞レース参戦を狙った映画ではない。
ライオンズゲイトが手掛けたアニメーションが『Norm of the North』。ホッキョクグマのノームがニューヨークで、ある企業のマスコットになることから起きる大騒動が描かれる。ライオンズゲイトは実写映画では次々ヒットを飛ばす新進気鋭のスタジオだが、アニメーションの分野においては批評的にも興行的にも結果を残してきたとは言い難い。今回も芳しい成績とは言えない出足になっている。具体的には批評家向け試写が行われないほどに出来が悪く(アニメーション映画にラジー賞があったら、頂点に輝くだろう)、Box Officeでも覇気のないオープニング成績。人々の記憶に残ることなく劇場から退場することは確実で、アニメーション映画賞レース参戦の可能性は限りなく0.00%に近い。
※予測。
「ライド・アロング 相棒見習い」(14年)の続編コメディ『Ride Along 2』が初登場第1位。週末成績は3,500万ドルを超えてくるかどうか。ファミリー映画特有の伸びがあれば4,000万ドルを超えるかもしれない(伸びなければ、順調な推移の続く『レヴェナント:蘇えりし者』に敗れる可能性も…)。全く同じ時期に封切られた一作目の初日売り上げは1,440万ドル。作品の知名度を考えれば、もう少し伸びたかったところだろうが、決して悪いスタートではない。ケヴィン・ハート人気はすっかり定着したものと考えて良いだろう。更なる続編ができてもおかしくない。
『13 Hours: The Secret Soldiers of Benghazi』は出演俳優のパワーを考えれば健闘。実はこれ、マイケル・ベイ映画。保守派のアクション映画ファンに狙いを絞ったマーケティングが成功した感。週末成績は1,600万ドルを超えたあたりか。
ライオンズゲイト製アニメーション『Norm of the North』は大惨敗。3日間では500万ドルを割る可能性が高い。