こちらは妄想小説となっております。
ご本人様とは一切関係ございません。
現実と区別が付けられる方のみお読みください。



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カーテンの隙間から漏れる光にゆっくりと目を開けると、私の腕の中で身動きせずに私を見ているゆうちゃんと目が合った。


『…おはようございます』

「おはよう」

『目が覚めてたなら、起きてもよかったんですよ』

「だって、起きて横にいない間に、なぁちゃんが帰っちゃったら嫌だったの」


モゾモゾと布団に潜り込んで、拗ねたみたいにそう言うゆうちゃんを、追いかけて口付ける。


『もう、勝手にどこか行かないって、約束したでしょ?だから、ゆうちゃんを置いてくなんてしませんよ』

「ほんとに?」

『うん、本当です』

「そっか、」


じゃあ、と恥ずかしそうに視線を逸らしながら、目をそっと瞑る彼女に、私はもう一度キスをする。
そっと甘噛むと、少しだけ開かれる唇にたまらなくなって、ゆっくりと舌を擦り合わせる。
キスの合間に聞こえる、ゆうちゃんの可愛い声を堪能してから離れると、首まで真っ赤にしたゆうちゃんに目を塞がれる。


「…見ないでよ、昨日はあんなにヘタレだったくせに」 

『違いますって、ゆうちゃんを大事にしたいだけなんです』


路地裏でお互いの想いを伝え合った後、2人でゆうちゃんの家に帰ってきた。
彼女の服を手渡され、先にお風呂に入った私は、ゆうちゃんが出てくるまで暇を潰そうと携帯をいじっていると、10分もしないうちに慌ただしく出てきた。
まだ濡れたままの髪からは、雫がぽたぽたと滴っている。
そんな彼女に駆け寄って、手を引いてソファーまで歩く。


『髪の毛、ちゃんと乾かさなきゃ、風邪ひいちゃいますよ。ほら、乾かしてあげるからそこに座ってください』

「…うん」


どこか、心ここに在らずな彼女を座らせて、ドライヤーで彼女の髪を乾かしていく。
濡れていた髪がサラサラとした手触りに変わっていき、ゆうちゃんは眠そうに何度もまばたきを繰り返している。


『お風呂、早すぎないですか?ちゃんと温まらないと駄目ですよ』

「…だって、なぁちゃんが戻ってきてくれたのも全部、私の妄想で、消えちゃったらどうしようって…」


小さい背中が、もっと小さくなったように感じて、私は少しでも早く心を暖めてあげたくなる。
三角座りをしてる彼女の顔を覗き込んで、手を握る。


『ゆうちゃん、一緒に寝てくれますか?朝まで、ずっと手を繋ぎながら。』

「いいの?」

『うん、私が繋ぎたいんだけど、だめ?』


私の問いかけに、ブンブンと首を横に振って、いいよと答えてくれた彼女は、繋いだ手をギュッと握り返してくれる。
2人でベッドに入った後も、握れらた手が離れることはない。 
ずっと寂しい思いをさせた分、彼女を甘やかしたくて、顔のあちこちにキスをする。
くすぐったそうに笑うゆうちゃんが可愛くて、私の口元も緩んでしまう。
ゆったりと流れる2人きりの時間が幸せで、どうかこの幸せが永遠に続けばいいと思いながら、ゆうちゃんを引き寄せる。
すると、さっきまでの笑顔が無くなったゆうちゃんが、私の目をじっと見つめてくる。
ん?と目線で聞き返すと、聞き取れない何かを呟いた後、視線が右へ左へと泳ぎだす。
何も答えない私に、もう一度言いにくそうに


「…しないの、?」


それは、反則でしょ…。
照れながら、小さい声で囁く彼女に、私の理性は崩壊寸前。
でも、少し不安げな表情を浮かべる彼女を見て、思いとどまる。
ゆうちゃんにとっての初めてが、半ば無理やりだったこともあって、きっと怖いはずなのに、私のために強がっているんだ…
だったら、私は、ゆうちゃんの恐怖心が無くなって、安心出来るようになるまで、彼女を抱くわけにはいかない。
辛い思いをさせてしまった分、次は大切にゆうちゃんに触れたかった。


『うん、今日はこのままひっついて寝ましょう?』

「でも、私、」

『大丈夫です。朝まで手を繋ぐって約束したから、起きたら居ないなんてことはないですよ。
ゆうちゃんがそうする事で、不安が無くなるっていうのならそれでもいいけど、私はちゃんと、大切にしたい。
まだ心が追いついていない状態で、ゆうちゃんを抱きたくないんです。』

「……」

『この間は、無理やりしてごめんなさい。怖かったし、痛かったですよね、もう二度とそんなことはしませんから。』

「………怖かった。腰も、痛かったのに、置いてった…」

『…ん、ごめんね』


瞳に薄い膜を貼りながら、胸をドンドンと叩いてくる愛しい人を、両手を広げて迎入れる。
私がゆうちゃんの心に付けた傷が治るまで、急がずに、ゆっくりと彼女の傍で守っていきたい。
何度も優しく背中を撫でているうちに、重力に逆らえなくなった彼女の瞼が落ちていく。


「なぁ…す、き」


そう呟いて眠りに落ちた彼女に、愛おしさが込み上げてくる。どうしようもないくらいに可愛くて、愛おしいゆうちゃんの手を握って、追いかけるように私も目を閉じた。













「もう、あんな事二度と言わないかもよ?ヘタレ〜」

『いいんです!言ったじゃないですか、大切にしたいって』


ニコニコと笑うゆうちゃんを、腕の中に閉じ込めて、ギュウギュウと力を強める。


「っあ、そんなことより、なぁちゃん今日仕事!」

『大丈夫です。今日はお休みもらってますから。』

「そっか!あ、私はお昼からお店だ…」


そう言いながらシュンとするゆうちゃんと、もっと一緒にいたくて


『じゃあ、待っててもいいですか?終わったら一緒にご飯食べましょう』


その言葉にくしゃっとした顔で笑う彼女は、今まで見てきた中で一番可愛かった。


「じゃあ、お店のお手伝いして!その後、一緒に夕飯作って食べよ?」 


そうやってイタズラっぽくお願いをしてくる彼女が、私の元から離れていかなくて本当によかったと心から思う。
今まで間違った分、もう二度と手を離すことはない。
彼女の事を思った気になって、すれ違ってしまうなら、今度はゆうちゃんに直接愛を伝えていこう。
私が唯一愛する彼女を、幸せにするために。