2026年4月26日(日)の日経新聞「社説」より
「ミュトスの脅威から金融守る国際協調を」
米アンソロピックが開発した新型人工知能(AI)モデル「クロード·ミュトス」がソフトの弱点を発見する高い能力を示し、金融システムの潜在的な脅威になるとの危機感か世界に広がっている。
日本でも官民で対策を探る動きが出てきた。個別の金融機関の手に負える話ではない。国を挙げての対応は当然だ。サイバー攻撃で金融が揺らげば衝撃は世界に及ぶ。AIのさらなる進歩を前提に国際連携を急ぐべきだ。
金融庁が24日、日銀や日本取引所グループ、3メガバンクの首脳らと協議し、官民で具体策を詰める作業部会の設置を決めた。
片山さつき金融相は「今そこにある危機」と語り、「サイバー攻撃によって直ちに市場への影響や信用不安にまで波及しうる」と警戒した。すでに米国をはじめ各国で対応を探る動きがある。日本も官民でリスクへの認識を共有し、対応を練るのは適切な判断だ。
金融システムは経済活動を支える根幹の社会インフラだ。預金や株式など多様な取引か相互につながり、一部の被害が全体に及ぶ危険をはらむ。金融庁はサイバーセキュリティーの管理体制を定めた指針をつくり、金融機関に対策を促してきたが、地方の金融機関は対応の遅れも指摘される。
ミュトスはコンピューターを動かすプログラムの脆弱性を発見する能力が極めて高く、人間が何十年も見逃してきたソフトの欠陥さえ検出できるという。サイバー攻撃に悪用されれば、様々なITシステムに甚大な被害が及ぶ。
知られざる弱点を自動的に突かれる「未知のリスク」への対応を強いられ、従来型の予防策や善後策が十分に効かない懸念が強い。
AI技術を適切に管理するとともに、むしろ弱点の早期検出に活用し、システムの防御力を高める努力が必要だ。アンソロピック側と連携し、情報の共有や技術面での協力につなげるためにも、国際的な枠組みが欠かせない。
4月中旬の主要7カ国(G7) や20カ国·地域(G20)の財務相·中央銀行総裁会議でも、この話題がのぼった。すぐに国際協調の方向性を固められなかったのか。米国はべッセント財務長官が欠席と途中退席に終わり、指導力に不安を残した。
ミュトス以外の新たなAIの脅威も想定される。日本は国際的な枠組みを早急に整えるための役害を果たさなければならない。
以上、2026年4月26日(日)の日経新聞「社説」より
「ミュトスの脅威から金融守る国際協調を」