16話
◉ふたりの青春
シオリ効果は絶大で富士2は繁盛店となった。特に、女王はいつ来るという予告が一切ないのが逆に功を奏した。まあ、予告もなにもその辺はシオリの自由なので告知しようがないし、それをマサルは狙っていた。
いつ来るかわからないなら毎日様子を見に来るしかない。何時に来るかも分からないのだ、ずっといるしか会う手段がない。
若くしてマネージャーにまでなっただけあり経営手腕がすばらしい。
経費をかけることなく店の目玉を作ったようなものだ。天才的な発想と言わざるを得ない。
しかし、その功労者にコテツの存在があるのをマサルは忘れてはいなかった。
コテツの強者を見抜き、麻雀を分析する熱心さは変態じみていた。その分析あってこそシオリはコテツに興味を抱き、気に入ってもらえたような感じなのであるから感謝せねばならない。
全部コテツがいるおかげだよ。
マサルが売り上げを見てニコニコしながらコテツにそう言う。
いきなりなんだ?と思ったが。コテツは
その通りです。とだけ返した。生意気なやつである。
しかし、当のコテツとシオリはどうなったかと言うと、どうにもなってない。
コテツは女子バイト全員と仲良くしていたし、南上さんはタラシです!とまで言われるくらいには軽いし女好きだが本命相手となると中学生かと言いたくなるくらい慎重で弱気だった。
そしてそれはシオリも同じだった。
2人して何をやっているんだか。と周りの人はバカバカしいなと思いつつも本人達は一向に進展出来ずにモジモジしているばかりなのである。
周囲から見れば丸分かりの気持ちも本人達には少しも伝わりあってない。でも、それもまた青春だと思ってマサルはただただ眺めているのであった。
そんなある日、シオリとコテツが久しぶりの同卓になる。シオリはこれをきっかけに出来ないかと思ってコテツに言う。
南上くん。話があるの。私が勝ったら聞いて下さい。とシオリが切り出す。さすがは女王。コテツより勇気がある。
はい。ではオレが勝ったらオレの話を聞いて下さい。
トップを取れた方の勝ちね。2人とも負けたら無しってことで。
OK。
今日は勝つわよ!
そう簡単に負けるオレではないけどね。
結果。勝ったのはマサルだった。
強え〜。なんだよ、話聞けないし言えなかったじゃん!
私は2着で浮きだからいいってことにしない?もう言いたいの。たいしたことじゃないからお願い!
じゃあ、…どうぞ。
あのね!私もみんなと同じように南上くんのことコテツって呼びたいの。
シオリの話は本当にたいしたことじゃなかった。だが、こんなことでも本人には大切な話なのだ。
なんだそんなこと。いいに決まってるよ。…じゃあおれも…シオリって呼んでも、いいかな。
シオリは耳まで真っ赤にして小さな声で
…いいよ。
と呟いた。
2人の距離が好形一向聴くらいまで進んだような気がした。