『戸締まり、ちゃんとしろよ』
急にその声がまた降ってきて、私は戸締まりをしに玄関へ行った。
靴箱の上に、二宮さんの指輪が置いてあった。
寝室へ行き、ベッドにうつ伏せで倒れ込む。
お日様の匂いがする。その匂いを胸一杯吸い込んだ。
浩二さんとの数時間前のここでの出来事が思い返される。
思い出すだけでドキドキする。
けれどあの人は浩二さんではなく、嵐の二宮和也。
なぜ私は言われるまで気が付かなかったのだろう。疎いにも程がある。
起き上がってパソコンを開き【嵐 二宮和也】と検索をしてみた。
しかしあまりの眩しさに私はすぐにパソコンを閉じた。
私はとんでもない世界へ足を突っ込んでいるのではないだろうか。
二宮さんの言葉が頭を巡る。
…なんにも知らないあなたに真実告げるのが怖かったのかな。せっかく見つけたあなたが、離れてっちゃうんじゃないかって。
…今ここにいる方が本物の俺。
…じゃあ後者は?ってなった時、受け取り手によって変わるのかなって。
…プライベートにもかかってくる、かなり
私は頭の中をグルグルさせたまま、寝支度を済ませベッドへと入った。
眠りにつくかという直前。
急にパッと頭の中が開けた気がして目が冴えた。心と頭が繋がったらしい。
私は一体何を悩んでいるんだろう。
私が好きになったのは彼であって、彼がどんな仕事をしていても彼は彼。変わらない。
その仕事ゆえ、プライベートで不自由することもあるだろう。けれどそこは果たして重要だろうか。甘いのかもしれないけれど、彼が彼である限り、私が彼の仕事を理解することで解決するんじゃないだろうか。
私がここで彼から離れてしまったら、彼がついてしまった嘘が無駄になる。悪意のない、むしろ守る為の嘘を無駄にしてはいけない気がした。
お互いの気持ちに正直でいたらいいんじゃないだろうか。
私は彼が好き。
彼との空間が好き。
彼と一緒にいたい。
離れたくない。
それを伝えよう。
ちゃんと伝えよう。
そう思った時、階下からコトン・カタンと音がした気がした。
あ、まだ起きてる。電話してもいいかな…。
思い切って電話してみた。
短いコールで優しい彼の声が受話から聞こえた。
『はい。』
「あの…、遅くにごめんなさい。物音が聞こえたから、まだ起きてるのかもって思って。」
『うん、まだ起きてた。むしろ、眠れなくてゲームしてた。』
私はゆっくり、自分の想いを伝えた。一語一語に想いを込めて。
「だから、私はあなたから離れていかない。あなたの傍に、これからも居させて下さい。」
しかし二宮さんからの返答がない。
「ダメ…ですか?」
「二宮さん…?もしもし?」
すると…
♫ピンポーーーン♫
え?こんな時間に…誰。