初めての投稿は何にしようか。
日付も変わった真夜中に、思いだしたのがこちらの作品でした。
講談社さんにて出版されている『吸涙鬼』
著者は『いま、会いにゆきます』でも有名な、市川拓司さん
わたしの大好きな作家さんのひとりです。
本作品をいつ頃買ったのか、というのは正直覚えていませんが、
様々な本を読み、手放すという行為を繰り返してきた中で
この本だけは今も手放すことができず、枕元の本棚の上段に入っています。
初めて読み終わったときは、主人公とヒーローの結末に涙が止まらず、読了感と切ない幸福感が一気に押し寄せました。
「嗚呼、これが本当の愛の形なのかもしれない」と、
愛について考えてしまう、そんな作品です。
本作品に限らず、市川拓司さんの作品の魅力は、その独特の世界観だと思います。
静かに、シンプルな言葉で綴られていく物語は、文字だけの世界なのに、とても美しく、
情景も浮かびやすく、言葉が胸にスッと入ってきます。
お話のテンション、とでも言えばいいのでしょうか。
昨今のアニメやハリウッド映画のような浮き沈みは、ほとんどないように思えるのが市川拓司さんの作品ですが、
それが逆に、心をかき乱されないと言うのか、静かにして読めると思っています。
主に若い人を中心に、ドキドキハラハラが苦手だったり、ネタバレしてから作品を楽しむ人が
いるようですが、そんな人でも楽しめる作品だと、わたしは思います。
ずっと手元に置いても価値が色褪せない。
繰り返し読んだ回数も忘れているのに、何度でも感動がよみがえり、
愛の美しさに、無性に、大切な人に会いたいと思ってしまう。
わたしにとって『吸涙鬼』は、そんな作品です。