昔の話です。
私が26歳くらいの頃、父が亡くなった。脳梗塞で倒れて3回目の時だった。ひと月くらいは皆で代わる替わる病院に寝泊まりして付きっきりで介助していた。
「小康状態が続いているので、大丈夫です。一度家に帰ってゆっくりされたらどうですか?」と言われて、母と姉と3人で家に帰ったところで、急変して呼び戻された。
「危篤です。」
すぐに父の妹たちにも連絡した。一番下のおばは姉をとても可愛がっていて、電話でも葬儀のお金のことは何も心配しなくていいからね、おばもすぐに行くからと言ってくれたので、葬儀屋さんとすぐに話を進めた。
私たちには全くお金がなかった。父は病気で倒れる前から働いていなかったのだ。酒を浴びるように飲み、タバコは1日二箱渡さないと機嫌が悪く暴れた。母のパート代だけでは足りず、私も家にお金を入れていた。手取り12万の安月給から、7万渡した。月半ばでまたお金貸してと言われ貸していたので、何も余裕はなかった。だからおばたちの申し出には本当に感謝だった。
祖父の会社を継いで社長だった父。倒産しなければ、沢山の方々がきてくれるような葬儀になったでしょう。
葬儀屋さんが言った。
「お葬式には4段階あります。一番下は誰もお骨の引き取り手がない浮浪者とか身元不明の人。下から2番目は普通の人。3番目は会社の役員さんとか、ちょっといいお葬式にしてあげたいかなという方。4番目は一番良いお葬式、特別な人用ね。格式あると言うか。豪華な。どれになさいますか?」
そう聞かれたら普通の人用のと答えてしまう。浮浪者や身元不明者用のは選びづらい。
「私たち本当にお金がないんです。」
「そうですよね、一家の大黒柱が亡くなられたのだから、大変ですよね。よくわかります。」
葬儀屋さんは親身になって話を聞いてくれた。
「1番安いのにしてください。」
「いやーそれはおすすめできません。ご家族いらっしゃるわけだし、無縁仏じゃないですからねー。普通のお葬式にして、できるだけいらないものを省いて価格を安くするのはいかがですか?」
「ではそれでお願いいたします。」
おばたちが心配しなくていいと言ってくれているのだから、無縁仏用のお葬式にしたら怒られるかもしれない。
私たちは下から2番目の普通の人のお葬式でやってもらうことにした。
ところがっ!
色々説明され、最終的にはなんと
200万というじゃないですか⁉️
えっ🤯私たちお金一銭もないんです!
普通のお葬式から少し省いて安くして200万って?葬式って何?皆さんそのお金パッと用意できるの?それが普通なの?
でももうすでに、そのお願いした下から2番目のお葬式で手配始めてるから、やっぱ無理ーってわけにはいかない💦
ありがたいことにおばは考えがあるから、任せてと姉に言った。母方の兄弟を集めて欲しいということで、父方のおば3人と母方のおじ2人と母、私、姉、弟と集まった。
おばは言った。
「この人たちお金ないのにさ、200万の葬式選んだのよ。本当考えらんない。今からさ、親戚友人片っ端から私電話してお金借りてあげるわよ。葬式代ないからお願いしますって言えばちょっとは集まるでしょ。まったく恥ずかしいったら、ありゃしない。でも、足りないと思うのよね、そこで、そちらでいくらくらい出せますかってことよ。あー恥ずかしい。あんたは(母のこと)自分の葬式代くらい貯めてから死になさいよね!」
その言葉を聞いて姉は泣きじゃくった。「ごめんなさい、ごめんなさい。私も病気治してお金稼ぐから、ごめんなさい。」
私は悔しくて唇を噛み締めて泣いた。弟も泣いていた。
母方のおじが怒りを抑えて、「100万出しますよ」と言ってくれて、私たちはもっと泣きじゃくった。
してやったりと、おばがニヤッと笑った。
私は大学の学費のために家庭教師をやらせてくれたおばに感謝していたが、一気に感情が変わった。考えがあるって、おじにお金を出させるってことか。
葬式当日残りの100万を出してくれると言ったおばだが、結局はお金は渡されず、全額母方のおじたちが出してくれた。
もちろん私たちが悪い。世間知らず過ぎた。葬式のことを知らなすぎた。
おじたちに申し訳なかった。母はボーナスが入るたびにおじたちにお金を返したが、一周忌に使ってくれ、三回忌に使ってとほとんどそのまま返されたらしい。そういうおじたちなのだ。本当に感謝している。
おばたちは葬儀のあとうちに来て、
「この人たちどうせ香典とか管理できないわよ、全部預かって持って帰りましょうよ。」
と話していたが、断固として断った。香典返しもまだしてないのに、全額持っていかれたら、どうにもならない。おばたちが香典返しを準備してくれる保証はない。
とんでもなく人生勉強になった父の葬儀だった。
今なら、小さなお葬式とか、身内だけの葬儀とか25万円くらいのものもあるようなので、皆さまも色々検討して、故人にあった、無理ないお葬式を探してみてくださいね。