惰性で鈍行で汗にまみれながら死にたくながら何とか今日も労働を終えて休憩室でグッタリしている僕。時刻は午後5時28分。目の前にある窓の外は既に夕暮れ。そんな夕暮れを見つめながら僕は頭の中で原付の分割払い代金の9000円払わなきゃなとか明日のピーズのワンマンライブ楽しみだなとかシルトクレーテさんの女の子様の甘~いザコマゾいじめオナサポはよ発売しろだとか無性に麺屋元のマシマシラーメン食べたいだとか色々考えながら薄ら笑いながら耳にイヤホンを詰め込み何となくゆらゆら帝国のすべるバーを爆音で流しながらぼんやり休憩室を見渡した。コスメやら韓流アイドルについて語り合う中年のババア2人のじゃれ合い、何故か目玉をウルウル大号泣させながら嘆き苦しむ白髪で歯抜けのジジイ、スマホでウマ娘をニヤニヤプレイしてるバッグにぼざろのアクキーを付けてるオタク風の中国人の男、テレビ電話でバカデカイ声で彼氏と電話してるベトナム人の女……そんな雑多な人々の行動を暫く眺めた後飽きてスマホを操りウザいフォロワーを1人ブロックした後BGMをゆらゆら帝国からニーネに変えた。怠い辛い虚しい消えたい……ずっとずっとずっとずっとそんなネガティブなことばかりしか頭の中には浮かばない。気晴らし憂さ晴らしにカフェオレを買いに行く。自販機がいつの間にかPayPay払い出来るようになってた。PayPay払いで買ったカフェオレをチビチビ呑みながら休憩室に戻りカフェオレを一気に飲み干した後小腹が空いてることに気付いたけど本日は生憎売店がお休み。リュックサックに何か無いかと漁ったらいつ買ったかさえ忘れたプリキュアのウエハースが出てきた。公衆の面前で堂々とキュアマジカルのHR来いキュアマジカルのHR来いと願いながらもプリキュアのウエハースの袋を僕は空けた。出たのはキュアワンダフルのRだった。ダブった。ため息をつきながら僕はリュックサックにキュアワンダフルのカードを放り込み意味も無くまた虚ろな瞳でチカチカ消えそうに点滅するボロな電灯を見つめた。最早僕にはもうそれぐらいしか出来ない。BGMをニーネからエレファントカシマシに変えた。心底うんざりした顔で宮本浩次のドデカイ歌声に縋り付いていたらいきなり隣の空席に同じく労働を終えたらしい同僚の高橋が座ってきて僕に話しかけてきた。イヤホンを外して高橋の話を聴いてみるといつも通り高橋は無愛想な顔のまま延々と止めどなく僕が興味が無い戦隊モノの話や仮面ライダーの話やウルトラマンの話ばかりしてくる。多分家族や違う同僚は話を聴いてくれないから気弱で同類の障害者っぽい僕をターゲットにしているのだろう。たまにプリキュアやらプリパラやらアイカツ!の話をすれば良いのにそんな話をすることは無さそうだ。(もう辞めて下さい)とか(特撮に全く興味ないんであっちに行って下さい)と言えば良いのにそれが言えない自分自身の弱さに吐き気がする。死んだ魚の如く無表情で相槌を打つ僕に構わず小1時間好き勝手散々話した後すっきりした顔で高橋が立ち去って行く後ろ姿を僕はますますうんざりした顔で見送りしながら一発くしゃみを鳴らす。死にたい。死ねないけど。……休憩室の壁掛け時刻は午後6時38分になっていた。いつまでもここにいても仕方無いしそろそろ帰るかと僕はポケットの中の財布をリュックサックに入れてテーブルに置いたままの原付の鍵をリュックサックに入れて作業服の上着をリュックサックに入れて工場で被る帽子をリュックサックに入れ……無い。あれ?無いぞ。テーブルの下を探しリュックサックの中を探し備え付けのゴミ箱の中を探し休憩室中をグルグル回って探したがやはり帽子が無いことを知り僕はすっかりグッタリしてしまった。涙目になりながら失意に暮れながらも諦め付かずに猫背のままで未練がましく先程使ったトイレの便器の下を探したり自分のロッカーを探したり工場に探しに戻ったり上司や同僚に帽子が落ちて無かったかを聴いて回って不審者扱いされたり……色々あーだこーだ言いながら探しまくってみたものの結局帽子は無くてまた僕は課長に帽子を失くしたことを報告して(今年3回目)課長に呆れ顔をさせてしまうのかと鬱々しながら死にたくなりながらだけど死ねないのでとりあえず今日は帰ることにした。時刻は午後7時48分。退勤ボタンを押して下駄箱から靴を取り出して外に出たら既に空は星一つ無い暗闇。冷めた秋風が身体を吹き抜けて妙に人生が辛くなった僕は勢いで前から気になっていた新橋のメンズエステに電話してキュアサンシャイン好きのメンエス嬢の施術を土曜日に予約してしまった。またしてしまった無駄な散財。辛い。だけど何か温もりに触れないと何か優しさに触れないと何か善意に触れないと何か真心に触れないともう、僕は、どうにかなってしまいそうだった。……今日は木曜日。とりあえず土曜日まではメンエスを灯台の灯りとして生きて行ける。その先の日々をどう生きるかは分からないけどとりあえず今はメンエスだ。一回も行ったこと無いけどきっとメンエスは素晴らしい暖かい楽園のような場所のはずだと思い込みながらも僕は駐輪場までの道をトボトボ歩く。とりあえずメンエス嬢の差し入れのプリキュアのウエハースを買いに行くカアと思いながら何とか今日も生きてます。頑張れ俺。