中に入ると突如、目の前がぐにゃりと曲がった。俗に言う目眩。だが、直ぐにそれは終わった。そしてそれが終わると目の前には見たことのある光景。
いや、きっとここは僕の居た所とは違う。違う‥けど。ここは。
「教室・・?」
見覚えなどない。だが、ここは確かに学校の教室である。それがどういう意味を持っているのかは知らない。けれど自然と足が動く。一年三組。僕の学校でのクラスである。
「あ?また、人か?」
「え?」
教室の扉をスライド。するとその中から男性の声が直ぐに聞こえた。
「これで十人目ですね。何が始まるんでしょうか?」
丸いメガネを掛けた少年。その少年がメガネを押し上げ、そう言う。
「どうでもいいけど~。わぁし、お腹減ったんだけど~。」
「あっ、それ俺も思った!!かれこれ一時間くらい放置されてるよな!!俺達!!」
長く綺麗な髪を手入れしながら口を尖らせる少女に大きな声を上げる体育系の少年。
そんな人達が座る教室。ざっと見るとどの人も僕と同い歳くらいかそれよりも少し上。つまりは皆が皆、幼い。
「えっと‥僕達はどうすれば?」
「しらねぇよ。んな事!俺はここ来たら罪が無くなるつーから来たんだ!ぶっ殺すぞ!」
「あっ、いや‥。」
軽い気持ちで質問しただけなのだが、一人の少年の勘に触ったらしい。机が蹴飛ばされ、派手な音が響く。
と、そんなピリピリとした空気を感じたのか壁際に設置されていたスピーカーから音が漏れる。
『時間となりました。只今よりゲームを始めさせて貰います。プレイヤーはどうぞ席にお座り下さい。ゲーム説明を行います。』
「は?ゲーム?」
「ちょっ、遊んでる暇なんてわぁし無いんだけど。」
「はて?どんなものでしょうか?」
それぞれの緊張。疑念。。興奮などがこの狭い教室中に波紋のように広がる。かくいう僕もその一人。ゲーム?それがただのゲームとは到底思えない。
『では、説明に移ります。プレイヤーの皆様はどうぞ机の中をご覧下さい。』
言われて皆は机の中身を覗く。
「は?え?何だこれ?」
誰かが言った言葉を始め。皆もそんな声を発す。だが、それもその筈。机の中に入っていた物。それは紛れもない凶器。各机の中に入っていた物はそれぞれ違うようだが人を殺す為の物。拳銃にサバイバルナイフ。鋭く光ったトゲがあるメリケンサック。鈍器に手裏剣。後、よく分からないが短い棒っきれ。
『ご覧頂いたでしょうか。只今から行われるゲームはシンプルなものです。要するに人を殺して生き残る。それだけです。尚、勝者は一人となります。途中退場は認められません。制限時間は今から一時間後。その時間内で勝者が決まらなかった場合は勝者はゼロ。その部屋から酸素を無くしますのでご僭越ながら理解の方、お願い致します。では、ゲームを始めて下さい。』
「は?おいっ!」
などという声は虚しく、スピーカーから声が消える。
「・・・・・・・・・・・。」
誰も声を発しない。誰も動かない。当たり前だ。この状況。ドッキリなどではない。酸素を無くす。それが可能かどうかは置いておくとして、皆の行動を止めているものはただ一つ。
僕の手にも持たれる凶器。それである。
見ず知らずの人等。信用も何もあったもんじゃない。誰かが自分を殺すにでは?そう思うと口を開くのにも躊躇するし、行動しようものなら自分が疑われる。
疑心暗鬼の時間が数分間流れた。
「なぁ?いつまでそうしてんだ?何もバカ正直になる必要はねぇ。ここから出れば解決する問題だろ?」
重い空気を切り裂いたのは始め、僕に声を掛けてきた少年。
「そうですね。人を殺すなんて出来る筈がありません。僕も賛成です。」
続いて眼鏡少年も声を繋ぐ。
「おぉ。そうだな。ここから出ればいいんだ。そうだ。そうだ。」
一人の少年の発言により、俯いていた皆の顔が上がった。
が、そんな簡単にいくわけがなかったのだ。
「え?あれ?おかしいですね?開きません。」
「ったく。どいてろよ。お前、力とかなさそうだもんな。‥て、あれ?」
自信満々に前に躍り出た少年ではあったが、見る光景は先ほどの眼鏡少年と同じ。強固に閉まった扉に苦戦している。
「んだ。お前ら、こんなもんぶっこわしゃぁいいだろ?その為のコレだろ?」
二人の光景に苛立ちを覚えたのかこの中で一に危険な人物。さっき机を蹴り飛ばした少年が拳銃片手に現れる。
そして言うが早いかいきなりの発砲。
「うぉっ。おいっ。撃つ時は声くらい掛けろよ。殺すつもりか!?」
「あ?んときはそん時だ。どうせ、それが目的のゲームだろ?」
「てめぇ‥。」
殺伐とした空気が両者の間に流れる。
と、そこに割り込んだわけではなさそうだが眼鏡少年の震えた声が空気の流れを変えた。
「‥は?え?何ですか?これは?魔法陣?」
見るとそこには何語かも分からない文字がズラーと縦に並び、扉を守っている。当然、さっき少年が発砲した弾丸の跡も残っていない。
ていうか、弾丸で扉を壊せれるわけがなかったのだ。今更ながらにそれに気付く。
とは言え、僕達は知る事となった。このゲームからは逃げられない。そしてこのゲームのゲームマスターが言った言葉は本物。
勝者は一人。それ以外はゲームオーバーなのだと。
