上司以上不倫未満

上司以上不倫未満

取引先の上司に恋をした。

会えるのは、1ヶ月にたったの1回。

1年で12回。

不倫未満でいい。

ただ。

あなたに会いたい。


「嬉しかったんだ。」_


唐突に。

ゆっくりと。

ゆっくりと喋り出すから。

何事?と思って焦るじゃない。



どうして今それを言うのかわからない。

出会った頃の、まだ何にも始まってない時の話。

私があなたに伝えた「好き」が。

本当はとても嬉しかったと。


車のシート倒して。

窓の外、遠くを眺めながら。

優しい声で独り言のように。

そして、ゆっくりと。

目を瞑って大人しくなるから。

どう応えていいか困るじゃない。


ねぇ、Hさん。

一緒にいてもどこか心ここにあらずな瞬間があった事、見抜いてるよね。

ねぇ、Hさん。

あなたにちょっとだけ隠し事がある。




少し胸が苦しくなるような出来事があった。

握り潰しても握り潰しても。

浮かんでくる言葉があってね。

だいぶ前の事だよ。_



だいぶ前の事。

なのに、未だ消化不良なまま。

毎日毎日。

何とも言えない気まずさに。

集中力を全部持っていかれるんだ。


ねぇ、リュージ。

君のせいだよ。_


視界に入るし、声も聴こえる。

同じ世界に存在してるのに。

君の前では身を潜め、息を殺してしまう自分が。

今はいるの。


リュージだってそうでしょ。

こうなるのがわかってて君が発した言葉。

答えがわかってて私に伝えた言葉。

わかっててなんでさ…。

気まずくなるだけなのに。


この苦しさは一体何?


「ごめん。」

と答えるしか出来なかった。

それは本当で。

(私も好きだと思った瞬間は何度もあったよ。だいぶだいぶ前だけどさ…。)

そう隠した気持ちも本当で。



隣りで車のシートを倒して。

無防備にリラックスしているHさんの。

体温を感じながら想う事ではないのに。

握り潰しても握り潰しても。

ぼーっと。

ぼーっと考えてしまうんだ。


そして君もまた。

まだそれを引きずって。

ぼーっと考えてるのがわかるから。

ツラいんだ。



ここに書いて終わり。

誰にも言わないし、言えないし。

2人だけの秘密にして終わるの。

気まずいまんま終わるの。

苦しいまんま終わるの。

全部。

全部君のせいにして。