「嬉しかったんだ。」_
唐突に。
ゆっくりと。
ゆっくりと喋り出すから。
何事?と思って焦るじゃない。
どうして今それを言うのかわからない。
出会った頃の、まだ何にも始まってない時の話。
私があなたに伝えた「好き」が。
本当はとても嬉しかったと。
車のシート倒して。
窓の外、遠くを眺めながら。
優しい声で独り言のように。
そして、ゆっくりと。
目を瞑って大人しくなるから。
どう応えていいか困るじゃない。
ねぇ、Hさん。
一緒にいてもどこか心ここにあらずな瞬間があった事、見抜いてるよね。
ねぇ、Hさん。
あなたにちょっとだけ隠し事がある。
少し胸が苦しくなるような出来事があった。
握り潰しても握り潰しても。
浮かんでくる言葉があってね。
だいぶ前の事だよ。_
だいぶ前の事。
なのに、未だ消化不良なまま。
毎日毎日。
何とも言えない気まずさに。
集中力を全部持っていかれるんだ。
ねぇ、リュージ。
君のせいだよ。_
視界に入るし、声も聴こえる。
同じ世界に存在してるのに。
君の前では身を潜め、息を殺してしまう自分が。
今はいるの。
リュージだってそうでしょ。
こうなるのがわかってて君が発した言葉。
答えがわかってて私に伝えた言葉。
わかっててなんでさ…。
気まずくなるだけなのに。
この苦しさは一体何?
「ごめん。」
と答えるしか出来なかった。
それは本当で。
(私も好きだと思った瞬間は何度もあったよ。だいぶだいぶ前だけどさ…。)
そう隠した気持ちも本当で。
隣りで車のシートを倒して。
無防備にリラックスしているHさんの。
体温を感じながら想う事ではないのに。
握り潰しても握り潰しても。
ぼーっと。
ぼーっと考えてしまうんだ。
そして君もまた。
まだそれを引きずって。
ぼーっと考えてるのがわかるから。
ツラいんだ。
ここに書いて終わり。
誰にも言わないし、言えないし。
2人だけの秘密にして終わるの。
気まずいまんま終わるの。
苦しいまんま終わるの。
全部。
全部君のせいにして。