久しぶりにおもしろい小説読みました。


去年、芥川賞を受賞した西村賢太さんの

「苦役列車」


私なんかが文学の評論を偉そうには言えませんが、

まあ興味があったら聞いてください。


苦役列車/西村 賢太

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この作者、たまにメディアとかに出てるから知ってる人も多いかもね。


詳細は省きますが(差別的なことになるので)

かなりスキャンダラスな人生を送っている人です。



この作者、太宰とよく比べられるけど、それは分かる気がします。


でも、太宰の「斜陽」や「ヴィヨンの妻」は

哀しさや苦しみを一種の美徳に昇華させてるので、

またこの物語とは異質。


どちらかと言えば「人間失格」のほうに似てます。


「斜陽」とかは、哀しいんだけど何かそれを美しく描いてるし。


これは完全に、苦しくて、辛くて、やるせなくて…

それをとことん描いてます。とにかくそれだけ。題名もそれをあらわしてるし。


でも、この物語の面白いところは

主人公がすごい人間ぽい。


一見、無気力で退廃的ななポーズをとりつつも、

何かちょっとバカっぽいバイタリティがある。


意外に生きることに食らいつく感じw

見てるほうは失笑するような、滑稽さで。


前回のリアーナの記事で、

大富豪は最初のカードの内容である程度差がついてるのが

人生と似てるーって書いたけど


例えばこの人が人生の大富豪をしてるとしたら

生まれた時に回ってきたカードは最悪。

3とか4しかなくて絵札なんて一枚もない。(と自分で思ってる)


だから適当に「俺このゲームなんて参加してないし」みたいなポーズで

ゲームをしつつ、実は他人のカードめっちゃ気にしてるみたいな(笑)


それで、自分がちょっとでも「あれ、もしかしていけそう?」と思った瞬間に

ゲームにめっちゃ食らいつきだすみたいなw


いやいや、この人間の描かれ方、この物語は完全に喜劇だという感じがしました。

こーいう自虐的な男は面白いから好きです(笑)


次は、この作者も物語のなかで少し書いてたけど

太宰の弟子で、後に太宰の墓の前で自殺した

田中英光さんの本を読んでみようと思います。


ちなみに、苦役列車は

江国香織さんとかの、

幻想的で甘美な恋物語が好きっていうような女の子には

絶対おススメしません(笑)