おれは何が出来るんだ

何も触れることさえ

できないなら

おれに出来ることは

祈ることだけしかない

両手を合わせる

生まれてこれなかった

命。

誤っても取り返し

なんかつかねぇ

赤ちゃん

魂はちゃんと

廻ってこれるように

ちゃんと手を合わせてる

祈ることを諦めないから

次は

ちゃんと廻って

生命の息吹をあげて

これるように

その時は

おれが父親として

迎えるから
今から

10数年前、1990年半ば

僕が、小学校一年生のころ
2000年の未来は

失ってしまった

夜中深夜、3時頃、

従兄弟からの電話が

自宅に掛かってきた

お母さんが

僕を起こす

「聡……。」

いつも元気な母の声が

変だった

「どうしたの?」と聞いた
「未来が病院に運ばれた」
風邪なのかな?と考えた

どんなに大変なことなのか
小学校に上がったばかりの
僕には、わからなかった

急遽

埼玉の病院に向かうことに
じぃちゃんとばあちゃんも
支度をしていた

僕は

「未来の風邪が治れば大丈夫だよね?」

と3人の家族に話した

家族のみんなは深刻な

表情をしていた

家から駅まで歩く

僕の口癖

「もうつかれたよ」
「もうやだよ」

の二言がすぐ出た

「さとー」
「頑張って歩け」

ばあちゃんが

声を掛けてくれた

「うん。頑張る。」

ばあちゃんと

手をつなごうとしたら

お母さんが僕の手を握った

いつもより強い力だ

「しっかり歩きなさい」

その力強い手に引っ張られ
いつもより早く足が動く

じいちゃんは腕時計を

気にしている様子だ

地元の駅に着いた

これから

「〇〇駅に向かいたんですが?」じいちゃん

が駅員に尋ねた

「〇〇駅ですと、☆駅で◎◎線に乗り換えしてくだい」

「そうですか。ありがとうございます。」

と一礼をした

切符をばあちゃんが買うと
みんなに配ってた

僕も小学校に通う

一年生だから

切符を買うのだ

改札口が頭よりちょっと

高かったから

手を伸ばして改札口に

切符を入れた

ちょっと面白かった

すぐ僕は椅子に座った

「お母さん、電車来ないね」

「早く来てほしい」

とお母さんが口にしたが

みんな同じ気持ちだった