一宮の踏み切りのバーが上がる瞬間。
その瞬間が私は好きだった。
バイパスに向かうまでの一本道。
初夏のどこまでも澄み渡る青空の下、
少し早めに稲穂が実り出している。
金色に輝く稲穂の田園風景を脇目に、
彼の白いスカイラインは私を乗せて走り出す。
その風景…
私の心にロックオンされていて、
いつでも引き出せる
いつでも思い出せる
そのときの私は、若すぎたような、
浮かれていたような、甘過ぎたような、
けれど、全てを疑っていたような…。
ただ、その瞬間の風景
そのときの彼の横顔
そのときの初夏の匂い
それらを私は生涯忘れることはないだろう。

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