いつもと同じバイトの帰り道。


自転車のライトの音がやけに大きく感じて

街の静けさに気づく…

時刻は4時。
夜明け前の静まりかえった暗闇に溶け込む様に

僕は自転車のライトを消した

遠く離れた街灯が
ポツ… ポツ… と、
まるで家までの目印の様に見える

真冬の澄んだ夜風が顔にあたる

(帰って寝たら、また同じ様な明日が始まるのか……)

うんざりと呟く自分に、

(って言うか、日付的には今日で、寝ると言うより昼寝だよな)

と自分で突っ込んで

(はああぁぁァァー…)
長い溜め息をついた



…ふと、上を向くと
そこには満天の星が瞬いていた。

( スゲぇ…! こんなに星出てたんだなぁ )

毎日同じ様に通っている道のはずなのに今まで気づかなかった…

思い浮かぶのは暗いアスファルト…

( …そうか、
いっつも下ばっか向いてたんだ。 )



…上を向いて自転車をこぐと視界はすべて星空になった。
ライトを消した為、音もなく静まりかえった闇の中で自転車をこいでいると
まるで空中に浮かんだかの様な錯覚を覚えた





それが新鮮で、
しばらく無心で その新しい感覚に浸っていたかった

なにも考えずに…



また来る明日に取り込まれる前に…


( 少しの間… )



前になにかで聞いた“吸い込まれる様な星空”
…って正にこの事だと感じていた。


( 出来るなら、
ずっとこのまま。

明日が来なければいいのに…… )



僕はすっかり
満天の星空に心を奪われていた



( もう少しだけ このまま … )














ッッッッッッ!!??!

不意に身体が ガクンっ!とバランスを崩した

(ヤバっ ぶつかる…!!)

思わず全身に力がはいる

次の瞬間、冷たいアスファルトが目の前に…っ!



ない???!!?


転んだ衝撃がない

と言うか地面が…



ない!?


今まで確かに乗っていた自転車もなくなっていた


足元に広がっているはずのアスファルトが…道路が…





あるのは暗闇に瞬く星空。


「ど…っ、
どうなってんだ!?」


まるで宇宙に漂うかのように、瞬く星と何処までも続く闇に囲まれた僕は

現状を理解出来ずに、慌てふためいて何度も辺りを見回した。

そして気がつくと





もう、


上も下も
わからなくなってしまっていたのだった。














僕は

この日、





迂闊にも







“そら“に…






 …おちた。