私の職場は、光る、抜ける、薄い、といったワードをなるべく言わないようにするという、謎の暗黙の掟がある。
何故なら、上司(男)がハゲでズラをしてるから。
上司の奥さんは、彼より随分と年下だそうで、その奥さんへの配慮もあってカツラをしてるようだ。
しかしながら、とても気を使う。
湿気の多い日なんかは、カツラと頭皮のコンディションが合わないのか、妙にズレているときがあり、目のやり場にこまる。
指摘していいものか?
だけど、私は上司がカツラをしているという事をしらない設定になっている。
その設定が崩れた時、私の立場は今よりもっと酷いものになるだろう。
ある日、上司の元同僚が職場を訪ねてきた。
元同僚さんに、お茶をだしていると、
「てゆーか、○○さん、若返った?なんか、髪も増えたような…?」
と、無邪気に上司に質問していたが、私は、はげしく狼狽えてしまった。
この人、カツラなんですよー!なんて軽率に言った日にゃ、私の命はない。
上司の目線が泳いでいる。彼はとても困っている。
なんとか、この凍った空気を和ませなければ、と思って私の口から出た言葉は、
「ははは、ヨカッタデスネ、ワカガエリ…」
謎のカタコト言葉。
あの時、なんて言えばナイスフォローになったんだろう?