鴉さんと私の元々の生活スタイルが余りに違いすぎるという事。
生活スタイルといっても仕事の時間帯といったものではなく、彼のギャンブル好きと私のギャンブル嫌い。及び極度の寂しがり屋という性格故に起こったすれ違いだ。
元々自由人...悪く言えばその日暮らしの遊び人だった彼と夜遊びもろくにした事のない私とでは日々の過ごし方楽しみ方が180度違ったと言っても過言ではない。
人付き合いは狭く深く。多人数でのドンチャン騒ぎも好まない私に対して、彼は個人の飲食店で店員さんと仲良くなったり趣味の麻雀で雀荘繋がりの麻雀仲間や飲み屋で意気投合した飲み友達などを動員してのバーベキューパーティーやカラオケ、麻雀オフを好んでやっていたような人だ。
人見知りでどちらかと言えば内向的な私からしたら何が楽しいのか分からない、むしろ疲れてしまうだけのような遊び方を好む人だった。
何度か誘われた事もあったが、私は喫茶店の常連メンバーの飲み会にすら出席した事がない。
明け方近くまで遊び倒し、車の中で仮眠をとってそのまま出勤...だなんて遊び方は私にしてみたらとても真似出来るものじゃなかった。元々体が弱く体力がない方だったせいもあると思う。
更に言えば仲間内の麻雀ならともかく、彼の好む雀荘での賭け麻雀は私にとって裏社会の遊びというか...まぁ到底良いものだと思えなかった。
唯一の趣味が麻雀だと公言する彼だが、私にとってそんな彼の[趣味]は到底受け入れられるものではなかったのだ。
ましてや彼の場合二時間三時間では終わらない。やるとなれば徹夜。もちろん朝帰りしてくれば次の日は昼過ぎまで寝ている。
勝手に人の家に転がりこんできて、人の時間をほぼ全て奪って置いて「満足してます。この生活に慣れてきたから徹夜で遊んで次の日は寝て過ごします。家の事は任せます」なんて冗談じゃないと思った。
鴉さんの世話に明け暮れて、寂しがり屋が一人じゃなくなって、二人でいるのが当たり前になって一人の過ごし方を忘れて。こんな状態で一人にされたら耐えられないと泣いた。
今更な話だが、同棲までにもっと時間を置けばまた違ったのかもしれない。
お互いの時間の使い方や行動パターンを親しく知る前に一緒に住み始めてしまった。
押し掛けてきた鴉さんに対して私が怒った事もあったし、自分の時間がとれない事にストレスも感じていた。けれど、私と一緒にいる事に心底幸せそうに微笑む鴉さんの笑顔にほだされたというか...その生活が当たり前になっていたのだ。
結婚して欲しい。子供を産んで欲しいという鴉さんに「落ち着け」と言いながら、私は決してそう言われる事が嫌じゃなかった。
必要とされる事に依存していたかもしれない。
それが、一晩いないというだけで何ともかもが怖くなった。
昔、初めて付き合った人が寝る前の電話で「愛しているよ」と言った次の日
、夜が明けたら突然その人に嫌われていた事を唐突に思い出した。
その彼の中で何が起こったのか、それは未だに分からない。けれど、一度私の中に渦を巻いた恐怖は容易に収まってはくれなかった。
理性的な部分でギャンブルを唯一の趣味とする人と結婚は出来ないと思っていた事もあった。
それら全てがまざりあって「麻雀をやめて欲しい」と言った私と彼の意見の対立は、なかなかお互いの妥協点を探すのが難しい問題だった。
麻雀を通じて彼が得たものというのは私には量りがたく、けれど彼も理性の部分では私の言い分を理解してもいた。
話し合いを重ね、彼が冷静になりたいからと帰ってこない夜もあった。
私は既に諦めはじめ、彼との関係を終わらせる覚悟すら決めていた。
麻雀か私との家庭か。
ギャンブルと天秤にかけられて捨てられるかもしれないという恐怖に、私は既に戦う事も努力する事も放棄していた。
結果だけを書けば、鴉さんは来年の12月で麻雀を辞める。
いくら仲間内とはいえ万単位のレートで賭博されていたのでは心配で家庭なんぞ持てない。更に言えば子供が出来た時、妊娠中から育児中にかけて夜中に家を空けられたりしては不安で仕方ない。ついでに私はギャンブルが嫌いだ。
諸々を天秤にかけ、話し合い、考えた結果、鴉さんは私との安定した家庭が欲しいと。
一時期「正直辞められる自信がない」と言っていた鴉さんであるから、私がこの言葉を信じ切れずにまた一悶着あったりもしたのだけれど。
とりあえずのところ、現状としては落ち着いてきている。
鴉さんが飲み会で一晩空けても平静でいられるくらいには。
私も徐々に鴉さんがいない一人の時間の過ごし方を思い出したり、鴉さんがいないと何も出来ないような状態は脱却せねばと思っている。
しかしそれはそれで「大丈夫?そのうち俺なんかいらない。一人の方が楽とか言い出さない?」と心配しているのだから、鴉さんは一体どうすれば安心するというのか。
ワガママも大概にしていただきたいものである。
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