ホントはどうなの!? -397ページ目

回想

まだ、青臭かった頃の話


学校の勉強よりも異性のことを

強烈に意識し始めていた僕は

勝手に『好きな子ランキング』をつけるのが

宿題をする事よりも最優先の日課になっていた。


そのランキングは、日替わりで順位が変わる

なんとも不確かなものだった。


どれだけあやふやかと言えば

それまでは圏外だった女子に、「おはよう!」

と笑顔で声をかけられただけで

上位にランクインしてしまう程だ。


そんな、発情したオス猿のような

もんもんとした毎日を過ごしていたある日の放課後

好きな子ランキング9位の女子が声を掛けてきた。


『さては、告白か??

好きな子ランキング9位だけど、まぁ嬉しいか。』


異性の事で頭の中の8割以上を占めている僕は

勝手にそう思っていた。

その子はこう言った。


『これ、読んで』


まぎれもなくラブレターだ。

ドキドキしている自分を隠し、平静を装って受け取った。


『ちなみにそれ、私からじゃないから。

必ず読んで返事してよ。』


その子からのラブレターじゃなかった事に

少し拍子抜けしながらも

中学に入って、初めてもらったラブレターに

完全に舞い上がっていた。


『じゃあ、一体誰からだ?

ブサイクな女子だったら嫌だな。』


自分の事は棚に上げて、ずいぶん失礼な事を思っていた。


ラブレターを渡してくれたランキング9位の女子は

ニタニタと笑いながら、連れの女子達と一緒に、教室を去っていった。


少し冷静になると、急に恥ずかしくなってきて

辺りをキョロキョロ見渡してしまう。


放課後という事もあってか教室に人影はまばらだった。

時折、野球部の練習の掛け声が聞こえてくる程度だ。


次の瞬間、僕は男子トイレに駆け込んでいた。

ドキドキと高鳴る心臓の音が、周りに聞こえそうだったからだ。

そして素早く、男子トイレの個室に鍵を閉めた。


これで心の準備が整った。


淡いピンク色の封筒

赤いリボンのシールで封をしている。


封筒には何も書かれていなかった。

はやる気持ちを抑えながら開封した。

中には便箋が一枚


『ユウニィ君へ』


僕の名前から始まる文章を一気に読んだ。

今となっては、正確な内容は思い出せないけど


『いつもユウニィ君を見ていた』

『ずっと好きだったんだよ』

『返事まってます』


等といった、割とストレートな内容だった事は覚えている。


そして、最後の一行で

少しずつ落ち着きを取り戻していた心臓が

またもや高鳴りだした。


『○○より』


そのラブレターの差出人は

好きな子ランキングの常連で

ランキング3位の女子からだった!


『マジで?!○○チャン?』


その時点で、その子の好きな子ランキングが

1位に確定したのは言うまでもない。


『すげー嬉しい!!』

『……。』

『どうしよう。』

『なんて返事しよう…。』


その頃の僕は

恋愛経験なんてものはなく

エッチな妄想ばかりしている

バカで未熟な男子に過ぎなかった。



ラブレターの送り主であるその女子は

一般的にみても、かなり可愛いかった。

だからなのか、男子連中のからかいの

対象になってしまう様な女子でもあった。


その時僕は、


『もしこの子と付き合うようになったら

自分まで一緒にからかわれてしまうんじゃないか?』


そんな風に思ってしまった。


自分の気持ちに正直になって


『好きだ。』


と、返事をすれば良かったんだろうけど

当時の僕は、思春期真っ只中で

周囲の言動に対して、過敏に反応して

自分がどう見られているのかを常に意識している

いわゆる、自意識過剰な奴だった。


結局、そんな僕には返事をする勇気がなかった。



そして恋とも呼べない恋は終わった…。



その後の中学生活は

何とも気まずいものとなった。

廊下でその子とすれ違っても視線を逸らし

何気に避けてしまっていた。


そして、そのまま卒業を迎えた。


ラブレターをもらって以来、

ずっと好きな子ランキング1位だったその子とは

一度も会っていない。


彼女の中での僕は

『告白したのに、返事もくれない嫌な奴』

と、今でも思われている事だろう。


あの頃、『好きだ』と言ってたら

今とは別の人生があったのだろうか?


よくある青春のほろ苦い思い出。



自分にも今、3歳になる娘がいる。


いずれ娘にも、好きな男性が現れ

ラブレターを渡す日が来るだろう。


その時は、優しく教えてやろう


バカで未熟な思春期の男心ってやつを。