追憶の花園
毎年必ず観るDVDがある。
『未来少年コナン』だ。
毎日の仕事で凝り固まった
社会人の呪縛からしばし解き放たれ
忘れていた冒険心のみたいなものが
沸いてくる気がするからだ。
たとえ何歳になろうとも
少年の心は失いたくないものだ。
ふと、こんな思い出が蘇る。
少年時代の僕は
近所の山でよく遊んでいた。
それほど高くない山だったけれど
少年の冒険心を満たすには十分な
お気に入りの山だった。
せまい獣道をかきわけて
何か新しい発見がないものかと
でたらめに歩く事が
僕にとっての冒険だった。
よく晴れた日曜日
いつもの冒険にでかけた。
その日は特別なものとなった。
新たな獣道を発見した僕は
嬉々として草をかきわけ進んでいった。
どのくらい歩いただろうか。
木や草が行く手をはばむ獣道が突然途切れ、
出し抜けに広い空間が現れた。
そこには、まばゆいばかりの花畑が広がっていた。
赤や黄色、色とりどりの花の上を
楽しげに蝶が舞っている。
『秘密の花園』
そんな言葉が、これ以上ないくらいしっくりくる
奇跡の場所に思えた。
『僕だけの秘密の花園』
時を経つのも忘れ
陽だまりに包まれた花園にたたずんでいた。
帰る時には、この場所にまた戻ってこられるように
道順を、必死に覚えた。
そう、確かに記憶したはずだった。
次の日曜日
もう一度あの光景に会いたくなり、山を目指した。
記憶を頼りにあの場所へと向かう。
しかし、不思議なことに
『秘密の花園』へは、どうしてもたどり着けないのだ。
ほんの一週間前の記憶だから
忘れようがないはずだ。
必死に記憶をたどり、
何度も行ったり来たりを繰り返したが、
結局あの場所へはたどり着けなかった。
秘密の花園は幻のように消えてしまったのだ。
少しがっかりしたけれど
なんとなく、『これで良かったんだ』
という気にもなった。
あの時は偶然たどり着けたけど、
二度と同じ場所には、現れないのかもしれない。
『秘密の花園』が『幻の花園』になってしまった。
あれから何度か探しに行ったけれど
見つける事は出来なかった。
今でも目を閉じると、あのときの光景が
鮮やかに浮かんでくる。
きっと今の僕には見つけられないだろう。
そこは冒険心をもったものだけがたどり着く事ができる
『幻の花園』なのだから。