岐阜県の南西部、揖斐郡揖斐川町春日、坂内、久瀬三地区の境界にそびえる標高一二三四㍍の貝月山(かいづきやま)。数字並びのよい標高と風雅な響きの山名が印象的だ。山麓の久瀬日坂にはは木地師が定着していたが、今はその姿は見られない。周囲はリゾート化され、その変貌たるや著しい。
登山道は四方からあるが、ここでは渓谷美が美しい春日村美束の「長者の里」から登るコースを紹介しよう。
市瀬バス停で下車し、村道を北へ50分ほど辿れば登山口「長者の里」に着く。「長者の里」のキャンプ場の炊事場を通り抜け、右(西)へ疎林の間を登る。水道濾過槽の脇を通り、側溝沿いに進むと、じきに牧野尾谷に出る。小橋を渡り、右岸道を遡る。ヒンヤリトシタ杉林をくぐり抜け、まもなくすると昔、長者が住んでいたという「長者岩」の前に出る。
次第に斜度が増す。谷を右に見下ろして急登すると、右下前方に落差十㍍ほどの一条の滝が見え出す。この滝が落ち込む淵を「少将淵」といい、春日村の昔話に出てくる有名な淵だ。滝の上を通り過ぎ、谷に下り、左岸に渡り移る。流れにある石は、ミズゴケが付いていて滑りやすいので注意したい。
谷を幾度も渡り返し、上下を繰り返しながら次第に高度を稼ぐ。やがて、最後の渡渉地点だ。右岸から左岸に渡る。じきに「三段滝」が左に見えてくる。一休みして汗した体を拭うには格好の場所だ。ほどなく、このコースの最難所にさしかかる。フィクス・ロープをつかみ、滑りやすい急峻な山腹を三点確保で登り、支尾根に上がる。
起伏の少ない支尾根を西にたどると、まもなく主稜線直下の急登にかかる。着実に歩を進めて主稜線に登り出る。主稜線上の登山道をわずかに登り、右に大きく曲がる手前で右脇のやや急勾配の小道を登れば、小貝月山頂だ。
小貝月を後にして、しばらくすると北西に向きを変える。わずかに下り、登り返す。淡いピンクの花を付けたシャクナゲが登山者の目を楽しませてくれる。貝月山山頂は、あと一投足だ。
山頂は眺望に恵まれ、北に加賀の白山、東に霊峰御岳、南に伊吹山をはじめ奥美濃の山々が一望の的。大休止し、山頂展望を堪能したら往路を下ろう。
DATA
歩行時間=5時間50分(マイカー利用の場合、4時間10分)
グレード ★★
● 交通 養老鉄道揖斐線揖斐駅下車、揖斐川町コミュニティバス春日美束行きに乗り換え、終点市瀬で下車、長者の里まで徒歩焼く50分。マイカー利用のほうが便利。「長者の里」に駐車場有。
● 参考コースタイム 長者平キャンプ場(2時間)小貝月(30分)貝月山(1時間30分)長者平キャンプ場
● 地図 1/25,000地形図=美束
● アドバイス 谷を渡渉する時及びフィクス・ロープのある地点での行動は慎重に。「長者の里」には「森の文化博物館」がある。時間が許せば、立ち寄りたい。
● 問い合わせ先 春日振興事務所℡0585・57・2111
● ふるさと情報 春日特産物朝市は、村おこし事業として昭和60年からはじめられた生産者直売の朝市。地区内の農家約50軒が、伊吹百薬、あざみ、無農薬野菜、山菜、民芸品などを持ち寄り、並べられる。安価に買い求められるので、毎回多くの人でにぎわい好評だ。開催:毎月第三日曜、朝7時、場所:春日モリモリ村駐車場