いなりずし、「おいなりさん」は、私にとっては特別な食べ物です。
亡くなった祖母が遊びに来てくれたときに、大皿いっぱい作ってくれたつくりたての味。
運動会の日、家族で食べた楽しい思い出。
油揚げを袋状にして、湯通しして甘辛く煮つけて、酢飯を詰める。
素朴だけれど、意外に手間がかかるおいなりさんは、幼い頃の私にとってはハレの日ごはんでした。
家族にとってはそれほど好きな食べ物ではないので、食べたくなると買ってきて食べるのですが、思い出のおいなりさんの味とはちょっと違う。
「どうしてもあの味が食べたい」となったときには、赤坂 豊川稲荷別院の境内のとなりにある茶店「家元屋」まで買いにでかけます。
看板おばあちゃんの元気そうな顔を見るのもひとつの楽しみです。
汁漏れしないよう、ビニール袋で包装されているので、テイクアウトも安心です。
いなりずしを取り出すと、パックの底には煮汁が…。
そう、家元屋さんのおいなりさんの油揚げは煮汁をたっぷり含んでいて、とってもジューシーなんです。
箸にとって口に入れると、甘辛い煮汁がじゅわっと油揚げから染み出して、もちもちした酢飯の味と合わさって何ともいえない美味しさが口いっぱいに広がります。
ごはんがぎっしり詰まってぷっくらとした家庭風な大きさも、ノスタルジックで素敵です。