こんにちは。

渡邉希久子です。

なかなか梅雨が終わりませんね。

今回は久々に絵本についてのお話です。

言葉で微細なニュアンスを伝えることの難しさ

というのは常にあるかと思います。

言葉のひとつひとつに定義があり、その人独自の定義もあり

さらに言えば、伝える時に

伝える側と受け取った側に

同じまでいかなくても、近い世界観や風景を見ているか

という前提も生まれます。

そういう場合、ニュアンスを伝えるのには

叙情的な文になったりするのは自然なのかも知れません。

（こういう場合は、絵とかは便利なのかもしれませんが）

以前、ブログで

I love you

を夏目漱石の生徒が

「我君を愛す」と訳した時

それは違う

「月が綺麗ですね」

とでも訳しておきなさい。

と、生徒に言ったとか言わないとかの逸話を紹介しましたが

訳という点に置いて、文化や背景が国で違うこともあり

国によって、言葉で何かを表現し伝える際の世界観の違い

もっと言えば、訳する人のセンスや感性の違いに

面白さを感じています。

さて、本日は「マザー・グース」と訳について。

マザーグースの詩はどなたでもご存知かと思いますが

不可思議で少し皮肉があって、ナンセンスで残酷で魅力的です。

マザーグースの詩が若い時から好きでした。

その中でも、アーサーラッカムが絵の詩集がとても素敵で

若い頃に買ったものを持っています。

マザー・グース

Amazon（アマゾン）

1,780〜4,900円

この詩集は、劇作家の寺山修司が翻訳したものでなのですが

冒頭の訳の解説で、訳す人によってここまで違うのかと驚いたのです！

（ここまで変えちゃっていいの？という感覚でしょうか）

『マザー・グース』より　「ジャック・スプラット　あぶらがきらい」

まずは、こちらが、谷川俊太郎の訳です。

　ジャック・スプラット　あぶらがきらい
　そのおくさんは　あかみがきらい
　だからごらんよ　なかよくなめて
　ふたりのおさらは　ぴかぴかきれい

　

次に、北原白秋の訳

　
　ジャック・スプラットとその嚊さ（かかさ）
　じいさはたべてもやせこけだ
　ばばさはふとっても意地汚だ
　ふたりの間中をちょとごらん
　お皿はすべすべなめてある

　

相当違うニュアンスになりますね。

そして、これを寺山修司が訳するとこうなります。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　ジャック・スプラット　あぶらがきらい
　彼の奥さん　赤味がきらい
　二人なかよく　お皿をなめる
　だからきれいな　お月さま！」
　　　　　　　　　　　　　　　　

　Jack Sprat could eat no fat,
　His wife could eat no lean,
　And so betwixt them both, you see,
　They lick'd the platter clean.

こちらは原文ですが、お月さまという言葉は全く出てきません。

それを寺山修司は

二人で皿をなめまわしたら、空の月がきれいになった

というくらいの飛躍があってもいいような気がするし

それくらいの楽しみがないと

詩の訳なんてできない、という気もする。

詩はただ、意思伝達をするだけのものではないから

これくらいやらないとつまらない

と語るのが、なんとも面白いです。

単なる情報を伝達するのと違って

詩の翻訳は、原作との新たな合作ということを

寺山修司は言っています。

情報伝達に加え、作者の作品の質を変えずに

翻訳者独自の新しい見解を表す

って、大変難しいですけど

ハマった時は作品が生き生きと動き出す感じです。

こういう、新たな合作という考えから

古き良き作品がいつもフレッシュに

生まれ変わることも出来るのだなと

この本のお陰で詩の翻訳というものの

面白さを少しばかり味わったように思います。

アートグッズ新作

絵から描いてデザインしたアートグッズの売れ行きが好調です。
新作の絵からポーチとトートバッグをデザインしました。

アートグッズショップはこちら

こちらの写真は現物ではなくイメージ図です。

よかったら、覗いてみてくださいね。

2021年手帳

特急ヴィーナスの高野藤衣さんと月のワークの田中京子さんが企画した
2021年手帳企画です！

こちらは詳しくは長くなりますので、こちらを参照してください。

高野藤衣さんの手帳の記事

それで、私は何をやるのかというと、手帳のオプションとして、2021年用に絵を描き下ろし、手帳カバーをご提供する予定です。クリアファイル付です。
また、定番メニューの「魂の望む最高のあなたを描く」の原画とその方専用の手帳カバーなども、ご提供しています。

手帳ショップはこちら