・・・・・・・・・徳興君の最後です
長いです。。。
《かたっ・・・》
「ひっ!!!」
部屋のなかで、微かな物音がするたびに老人となった徳興君が、怯え、悲鳴をあげる
風が窓を揺らしても、部屋の外の廊下を誰かが通り過ぎても、物音がするたびに声をあげ、怯えている
寝台の上でビクビクと震え続け、掛布を被り目だけを出してキョロキョロと辺りを見渡す
白髪の老人となった徳興君は、自分が騙し死に追いやった女達が会いにきた日から、怯えている
皇宮の地下牢に入っていたときも、怯えなどせずにいた彼も、女達の幽霊の姿に初めて【 死 】を意識したのだ
口では『死ぬ覚悟で皇宮に来た」などと言ってはいたが、徳興君のように自己中心的な者が本気で《死ぬ覚悟》などできていようはずもなかった
自分は王族・・・・・だから、たとえ他人を無碍に虐げても、自分は処罰されるはずもない
沢山の書物を読んだ、頭の良い自分が、そもそも その様なヘマをするはずもない
だから、何も覚悟などなかった。。。
だから・・・・何も・・・・責任や義務など、口先で言うだけで・・・・考えることすらしていなかった
徳興君が考えていたことは、不当に皇宮を追われた自分が、王になるにはどうするべきか
・・・・・ただそれだけだった。。。
妓生(キーセン)の女達を騙し、金を巻き上げ、その上で邪魔になれば毒で殺してきたのも、ただ金が欲しかっただけ
自分の見た目と、言葉を使い、少ない労力と時間で 大金を稼ぐことができる
割りの良い“ 仕事 ”・・・そんな感覚しかなかった
その女達が、自分に化けて出た・・・・
死相を浮かべ、真っ黒な目をして、自分に近寄る姿に・・・ 徳興君は、初めて心の底から恐怖した
失神して目覚めてから、徳興君は怯え続けていた
女達が迫るその恐怖の姿に、起きていても脳裏にその姿が鮮明に蘇るのだ
寝ているときは悪夢として見ていて、すぐに飛び起きてしまう
ぐっすりと眠る事も、食事を取ることもできず、常に恐怖で怯え続けていた
老人になって細くなった腕も足も、怯え続け精神が崩壊しつつある今、急速に弱り 骨と皮だけの有様となった
《 かたんっ!》
「ひぇっっ!」
身体ごと寝台の上で飛び跳ねて怯える老人
一見、哀れな姿に見えるのだが、ブツブツとつぶやいているその言葉は。。。
「わ、わ、わたしは、わるくないのだ
わるいのは、わたしを王位につけぬ奴らなのだ・・・・
わたしはわるくない・・・・わたしはわるくない・・・わたしはわるくない・・だまされるほうがわるいのだ・・・・・」
・・・・・ここに至っても、自分は悪くないと言い訳する男だった
急に老人となった徳興君に対して、処罰を延期していた王だが、重臣達と話し合いが持たれた
そして、王の御前議会で決まった徳興君の処罰は・・・・・
毒杯を賜るという、王族の処刑の仕方だった
御前会議から二日後、粛々と毒杯を持ったチェヨン近衛隊長と、チャン侍医、リオンが向かった
・・・・・・・だが、部屋に着いた者が見たのは
寝台の上で膝を抱え座ったまま、恐怖で怯え、目を見開き、涙や鼻水を垂らしたまま息絶えた老人の姿だった
扉の前の見張りの兵達は、誰の侵入もないと言っている
「まるで、恐怖に飲み込まれたようだな」
リオンの言葉に、徳興君の体を診ていたチャン侍医が頷く
「・・・そのようですね、心の臓が止まっています。おそらく、あまりの恐怖に心の臓が耐えられなかったのでしょう」
「・・・何かを見たのか、何かを聞いたのか・・・・・」
好青年な見た目も、今は昔・・・
皺と斑らの染みに溢れた 白髪の老人は、誰に看取られることもなく、たった一人で、恐怖に慄きながら死んだのだった
〜〜〜 半時ほど前のこと 〜〜〜
『はぁ〜い! また来ちゃった♡』
「ひぃぃ〜〜〜」
ざんばら髪に、青い顔、血を流した唇・・・・・死んだときの顔のまま、笑顔で現れた幽霊に、徳興君は悲鳴しか上げれない
『言い忘れたことがあったのよ!
まあ、もう理解できるか分からないけどね
〜〜〜取り合えず言うけど!
あんたみたいな人殺しに、来世はないからね!
偉い方の言うことはね、あんたは前世でも人を騙して殺したんだって!
今世で もし善人だったら、来世もあるかも?だったけど、もうしでかしちゃったじゃない?
だから、あんたはもう・・・魂が消滅されちゃうんだって!
今世が最後の《 やり直しの機会 》だったのに、残念だったねぇ〜〜〜〜』
「たましい・・・しょうめつ?」
『そ! あんたはもうすぐ死んで、その魂も消えちゃうの!
それを聞いてたから、私達・・・この前あんたに何もしなかったのよ!』
「・・・・・・・・」
『くすっ! 死よりも重い罰を、どうぞ』
『じゃ、私は来世に行くわ!
あ〜〜 楽しみぃ〜〜〜』
ニタリと嘲笑いながら消えた幽霊
その置いていった言葉を、一人残った老人はゆっくりと噛み締め、理解していけば・・・・・
「魂の消滅? 私に来世はない?
・・・・死よりも重い罰・・・・」
ゆっくりと、体の芯から冷えていく感覚
「い・・・・嫌だ・・・・・
う、う、嘘だ! 私が何をした?
そのような罰を受けるほどの事を、私はしてはいない!!!」
私は、ただ王族として当然の権利を取り戻そうとしただけだ!
私は王族だぞ! 平民の、それも妓生などという穢れた女どもを少々殺したくらい、なんの罪になるというのだ!!!
あの様な穢れた虫けら、私が少し駆除しただけであろう?
それなのに、私の魂が消滅だと?
あの穢らわしい妓生が、生まれ変われるだと?
・・・・・・・・・魂の消滅?
・・・・・・・・・もうじき、死ぬのか?
・・・・・・・・死ねば、私は消滅
「ひぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜」
ガタガタと震えながら膝を抱え、恐怖に悲鳴をあげたとき、老人の心臓が【どくり】と、大きく動いたあと、止まったのだった
「あ・・あ・・・あ・・・・いやだ」
何に縋りたいのかも分からないまま、ゆっくりと呼吸が止まり、動かなくなった老人から真っ黒い光が出てきた
その真っ黒な光は、空中に出てきたのだが
サラサラと粒子が溢れて、空気に消えていく
あとには、何も、残らなかったのだった
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やっと、ここまで来ました!
このお話を書こうとした動機の大きなものは、徳興君に『ざまぁ』を!!!だったのです。
いやぁ〜〜〜、ここまで書けた〜〜〜!