「りょうた」
『舞さん』
そう呼び合うようになって前よりも会話が増えた。
家の物まだまだ揃えられてないものあるけど、
足がないから両手に持てる範囲でしか買い物出来てなくて
中々進まないでいると聞き、
うざ絡みのお詫びも兼ねて今に至る。
郊外にある大型店舗まで私の車で買い出しに
あまり迷わずにチョイスしていく涼太、
思ってたより早く買い物が終わった。
「ちょっと寄り道してもいい?」
帰りは来た道とは違うルートを通った。
やっぱり!ビンゴ!!
「ほら、見て〜」
窓の外にはピンクと白が広がって山桜が満開を迎えている。
風が吹くと花びらがヒラヒラと舞って......
『綺麗ですね』
涼太が桜を眺めながらそう言った。
「うん。寄り道してみて良かった」
『はい』
随分昔にここを通った時に見た景色に感動したことを思い出して思いつきで来てみたけど寄り道して良かった。
満開の桜を楽しみながら峠を越えて涼太の家へと向かう。
『僕の地元の江戸川にも桜の名所があって、そこで見た桜を思い出しました』
景色に見惚れながら涼太の話しに耳を傾ける。
『川があって、その両サイドにずらっと並んでいてそれはそれは見事です』
「川辺の桜も綺麗だろうねぇ」
『はい』
懐かしむような顔してる。
「もしかして、ホームシックになってたりする?」
『えっ!?』
どうやら的外れな発言だったようで
『今の俺にはホームシックなんてなってる暇ありませんよ』
って笑ってる。
「それは失礼致しました。
でも、まあ力入れ過ぎずぼちぼちね....
でないと疲れちゃうよ」