無事に海までたどり着いた帰り道
ゲリラ豪雨に遭い山道のぬかるみにタイヤがハマってしまった。
「嘘?マジ?どーしよ?どーしたらいいの? こんな時はJAFだよね!」
テンパってしまってる私に
和『ちょっと待ってて』
車を降りて雨の中茂みに入ってく、
「和どこ行くの?危ないよ」
私の言葉も聞かず何かを探してた和が板を抱えて戻ってきた。
和『丁度いいヤツ見つけたよ』
私も車を降りて和が車体を持ち上げる僅かな隙間に板をどうにか差しこんだ。
インドアなくせにこんな場面で手際良く動けちゃうんだから、
しかも軽とはいえどこに車を持ち上げるような力があるんだか・・・
こんな時に弟も男なんだってことを実感させられる。
可愛い弟だとばかり思ってたのに、最近は大人っぽく感じる瞬間があってドキッとしたりする。
和が卒業を間近に控えた小学校6年生の時に両親の再婚により姉弟(きょうだい)になった。
共働きの親に変わって夕飯の支度の大半を私がしてた。
和が珍しくお代わりした時は嬉しくって小さくガッツポーズしてたな・・・・
たまに料理を手伝ってくれることがあったけど、和は何やらせても手際が良くてホント器用な子だった。
和『エンジンかけてみて』
「わかった」
和に言われた通りアクセルをふかし脱出することが出来た。
「ありがとう!和と一緒で良かった」
抱きつこうとしたらサッと手を払いのけられた。
「1人だったら今頃途方に暮れて泣いてたもん」
イジケ気味に言ったら
和『JAFに助けてもらうんだろ・・』
ボソリと返ってくる。
「そうね!JAF呼べばいいんだったわ」
ケロッと笑ってみせたら、
和『これ羽織ってれば』
って和が持ってきてた上着を投げられた。
雨に濡れて白いブラウスが肌に張り付き下着がくっきりと透けて見えてる
「ありがとう」
気遣いが嬉しくて笑みがこぼれる。
和『だいたい姉貴はいつも(下着が)派手なんだよ』
「あら?知らないの?恋愛の運気上げるのに下着の色も重要なのよ」
和『そんなの真に受けてんの?アホくせ~』
俺が中2の時姉貴が彼氏とキスしてるとこを目撃した。
中学生の俺には高校生の姉貴はスゲー大人に見えて女を意識するには充分だった。
ほのかな好意を持ってた俺に彼氏とのその場面はショックが大きくて
血が繋がらない姉との恋愛は成り立ちようがない
そう思い知らされた気がした。
そのあとの短大時代の彼氏、
入社してからの上司との不倫
知りたくも見たくもないけどわかってしまう、家族だから。
最後の不倫は親は知らないけどね。
俺だけ気づいた。
知りたくないくせにずっと見てるからわかってしまったんだよね。
妻も子もいるヤツが姉貴と付き合えるのに、
血の繋がりはないのに姉弟ってだけで対象外になってしまう理不尽さが忌々しく思えた。
運転の練習につき合わされてるってことは今は彼氏がいないのか、それともデートの下見なのか・・・。
派手な下着に目のやり場に困ってドキドキしてる俺はまだまだガキなんだろうな。