宝塚星組「ANOTHER WORLD」観劇感想 -縁という名の愛 | 百花繚乱

百花繚乱

駆け出し東宝組。宙から花のように降る雪多めに鑑賞。

 

 

何も考えずに笑えて、とにかく楽しめて、見た後に気持ちが暖かくなる作品だった。

落語という庶民的な題材を華やかなエンターテイメントに変えた、単なる西洋の真似ではない日本ならではの「歌劇」を目指した宝塚歌劇団の原点を思い出させてくれる、独自の世界。

 

 

 ■宝塚「歌劇」の原型

この作品、レビューなみにせり・盆の使われ方が少ない。

装置も立体感というより、上下左右の平面の勝負

ちょうど、絵巻物に描かれた御伽噺のようだと思った。

 

テーマの落語に加えて、日本の民話、おとぎ話がベースにある。

お姫様との恋物語、ととさまかかさま、仲間を引き連れての道中、えんま様に会い、図らずも鬼退治になる。

 

「舞台化ではない、宝塚化だ」 といわれるように、宝塚はどんな高尚な題材でも日本の大衆向けに翻訳し、愛と夢を抽出し、スパンコールと錦をふりかける。

それとは逆に、落語というとことん日本的な庶民的な題材を素材として、華やかさで酔わせ、情けと縁という名の愛でほろりとさせるのもまた、宝塚の魔術。

 

作中でもとってもキュートな桃太郎(極美慎)が一瞬だけ登場していたけれど、ご存知の通り宝塚の第一回公演は桃太郎をテーマにした 「ドンブラコ」

宝塚検定必修の「歌劇」の由来、西洋の真似ではなく、日本の「歌劇」を作りたいという小林翁の理想が、海外ミュージカル流行の今でも脈々と受け継がれているように感じた。

 

しかも、結末が幸せ。

暴力による戦いの勝利じゃない。

 

そしてやはり大阪のオカンは最強だと判明。

地味な服を着たら服が負ける大阪のオカン。

何も違わないのに「ちゃうねん」から話はじめる大阪のオカン。

「今、どこ?」とメールしたら「イマジンや」 と返信してくるオカン。(正解 :今、神社)

かなわんわ。 

 

 

■縁と情の人間関係

この作品、お雛様からアホの子から、正統美男子から、ひょうきん族、天女(白妙なつ)(リアル天女)、美女様みのり様と、キャラてんこ盛り。

その多彩な登場人物が利害・対立関係ではなく、ほとんど情と縁で結ばれているのがとても日本的だと思う。

 

西洋のお芝居は、その人たちがそこにいる理由が明確。

恋や政治や家族という因果関係に直結してる。

落語のお話は、同じ長屋とかたまたま通りかかったとか、地縁と偶然性が強い

 

劇団のホームページのAnothwe worldの人物相関図を見ればわかるが、なんとまあ矢印の少ないこと。

雪組・凱旋門の相関図では、矢印の間に「協力」とか 「深い因縁」とか 「かつて命を助けた」 とか書かれてるのに、アナワで書かれている文字はただひとつ、康次郎と徳三郎の間の「意気投合」だけという、この脱力感。

(意気投合って関係か?!)

 

このフラットな並列な関係、袖すりあうも多生の縁というか、旅は道連れ世は情けというか、面白そうだからいってみっぺか、という偶然の上に築かれた関係性が、自由で、あたたかく、とても平和だ。

気心しれた個性豊かな星組生たちが、紅さんを中心として、皆でまとまって作品をつくりあげている組の雰囲気のよさも、舞台の上によく生かされている。

 

 

■紅あー 

今回康次郎という男は、歌舞伎の女形のように柔らかに演じられてた。

紅さんと可憐なあーちゃんがひしと身を寄せ合う姿、男雛と女雛のように愛らしくてみやびやか。

長身でスレンダーな紅さんが華奢なあーちゃんを抱きしめる姿、とてもしっくりなじんでいて、コンビとしての年季を感じる。

康次郎といとはんが地獄で再会するところ、二人とも固まってコミカルにかなり長時間わなわな震え続けるところ、稀代のバカシーンだと思う。最高。あの二人じゃないとあのおかしみは出せん。

 

 

■あーちゃん人形

白拍子もかわいけりゃ、頭に三色団子のつきささった藤の花の鬘+薄紫の着物に桃色すみれ色のオーガンジーの蝶が50匹ぐらい飛んでる盛りまくりのお衣装、かわいさの極み。

桃の節句の雛あられとか金平糖のような夢夢しいお着物、the 宝塚で大好き。

しかもそれをさらーっと肌着のように着こなすあーちゃん(綺咲 愛里)”かわいい”の攻撃力な。

あーちゃんは身体の人なんですね。近松の浄瑠璃人形を模したところのかくかくした動きもお見事だった。

 

 

■真打・礼真琴

かっこいいわ・・・。もうなんか組子にまで「礼真琴様」って呼ばれてたけど、まこっちゃんが出ると、下書きの絵にペン入れしたみたいに、舞台の輪郭がくっきりして、ビシィっと魂が入る。

舞台空間の掌握感、貫禄。

 

 

■閻魔さん&チーム鬼

閻魔さま(汝鳥伶)、人間味が強くてキュート。

 お澄を見るとき、表情は全然変えてないないんだけど、明らかにスケベ心が動いてるのがわかる。康次郎お澄の間に、扇子使ってちょいちょい割って入ろうとするとこも、なんともいえぬおかしみがある。さすがのゆうちゃんさん。

 悪口を言ってるはずなのに全然悪くない右大臣 (漣レイラ)左大臣 (紫藤りゅう) の、星組で絶対性格いいだろう番付1,2位を争うお二人ときたら。(ちなみに同率上位はぽこちゃん(十碧れいや)です)

 

・瀬央 & チーム鬼 

赤鬼せお、赤髪が広島カープ味満載だった。

鬼に金棒の金棒持ってるんだけど、どうにもバットに見えてな・・。(がんばれ広島)

せおっちがえと文の約1段落を、鬼たちの名前と生徒名を羅列して ( 例: 「瀬央:赤鬼赤太郎、麻央さん:青鬼青次郎、桃堂君:赤鬼赤三郎、夕凪君:青鬼青四郎」 ・・以下延々と青鬼青十八朗まで続く) 埋めつくしたのはまさしく鬼の所業だったわ。

鬼―ズ、人間味満載で、康次朗の言上とか人間の言うことにいちいちリアクションしてザワザワするのがかわいすぎる。

 

 

■れんた頼むよ

本当にあれはずるい。あれは勘弁してほしい。れんたが全部視野埋めるし腹筋痛いし。

あそこだけ落語じゃなくて、俺たちひょうきん族。

どこ見てても絶対目が合うし、あきらかに顔、れんたに似せて作ってるし。

 

 

■武者たち、かっこいい担当

レオ様 (輝咲 玲央 :源頼光)筆頭に、たくてぃー(拓斗れい:渡辺鋼: )&朝水りょう (坂田公時)、彩葉 玲央 (卜部季武)

特に朝水センパイ、見たとき、ひっ、って声出たわ。

なんであんな登場場面短いんだ! なんだそのかっこよさの無駄遣いは?!

今すぐやろう、バウ源平物語。 (平安ものって、青天ちょんまげじゃなくて、烏帽子頭で武者なのがよき。)

英雄’s、見目は麗しいが、全く無力なのも笑える。

 しかも、え、誰、その美形? と目をむいたら、なんと天希・・・ 

美形なのは知ってたけどあんなに美しいとは・・

なんだこの敗北感。。

 

 

■貧ちゃん(華形みつる)

愛らしくいじらしい・・

いいよもう、うちおいで・・・・どうせキャトル様のせいで万年マルビだしね・・