昔、愛猫あやめがまだ若い頃、私の母が脳梗塞で病院のICUに運ばれた。
母は若いうちから多発性脳梗塞を患い、その時も既に十数回めの脳梗塞だった。

病院にお見舞いに来る人はいつも皆家族連れで、病室を出てからも身を寄せあい、他愛ない雑談、深刻な相談、そして悲しみや不安を共有し合っていた。
でも、ICUで今にも消えそうな命を前にしても、その数年前の癌手術の時も(母は癌も患った)、私はいつも一人で見舞わねばならなかった。
膨大な医療費、入院費など経済的な問題も含めて、どうしていいかわからない不安も、母が死ぬかもしれない恐怖も悲しみも、話す身内もなく、私は本当に全てを一人で背負わねばならなかった。

生きて会えるのは今が最後かもしれない。そんな切なさを胸に病院を出ると、夜でも辺りが真っ白になるほどの吹雪が、竜巻となって身を包んだ。
そういう時は、流石に、凍てつくような孤独を感じた。心の底から、"寂しい"という想いが湧き上がったが、私はいつも一人きりで闘うしかなかった。

帰宅していつものように手を洗っていると、ふと「一人じゃないよ❤(*^^*)❤」と、声がした。
小学生低学年くらいの女の子の、元気なとても可愛らしい声。それはいつも私が、あやめが人間だったら、こんな姿でこんな声で…と感じていた、まさにその声だった。
思わず振り返ると、まだ小さかったあやめが、ちょこんと正座して、大きなかわいい目をキラキラさせて私を見上げていた。

「え❢あやめちゃんなの?」
勿論驚いた。……でも、それ以外、考えられない。
声は、耳にというより、直接心に聞こえた。
ニコニコ笑顔で微笑んでいるように、あやめは正座のまま、ちょっとだけ首をかしげていた。
それが、あやめの声を最初に聞いた時だった。
(続く)


キラキラお目で見つめていたあやめちゃん


2018.3.9   luna