ブームの影で相次ぐ飼育放棄 コロナ禍に翻弄されるペット
新型コロナウイルス禍で自宅で過ごす時間が増える中、ペットに関心を持つ人、飼いたいと思う人が増えている。癒やされる、動画を見て-。理由はさまざまだが、購入したばかりの子犬や子猫の身勝手な飼育放棄も相次いでいる。新たな飼い主を探す譲渡会も多くが中止となり、人の接触を避けるオンラインの活用を模索する動きも出ている。「動物が二度と不幸にならないように」。関係者が力を込めた。(田中佐和)
身勝手な理由
「ペットショップでは天使に見えたのに、今は悪魔にしか見えない」
昨年5月、NPO法人「みなしご救援隊犬猫譲渡センター」の東京支部に、生後数カ月のトイプードル1匹が持ち込まれた。飼い主の男性によると、飼い始めてわずか2、3日。衝動的に購入したとみられる。男性は「ペットショップで抱っこしたときはおとなしかったのに、家に連れて帰ったら鳴くわ家具はボロボロにするわで、もう無理だ」とこぼしたという。
同センターの担当者は憤る。「昨春の緊急事態宣言以降、ペットショップは『コロナ景気』に沸くと聞く。でも、安易に飼い始めた結果、飼育放棄される犬猫が増えている」
飼い主側の言い分はさまざまだ。出張が増えて面倒をみられない▽動物飼育が禁止されているマンションなのに飼ってしまった▽犬の臭いがだめだった-。そうした身勝手な理由が目立つという。
飼い方知らぬまま
コロナ禍でペットへの需要が高まっている。
民間調査会社「クロス・マーケティング」(東京)が昨年11月に全国の1100人に行った調査では、4月以降にペットを飼い始めた人は3・2%。飼育を検討した人も6・5%だった。
飼い始めたり、飼育を検討したりした理由を尋ねると、最多は「癒やされる」(42%)。「ペット動画を見てほしくなった」(20・5%)、「コロナ禍で家にいる割合が増えた」(11・4%)なども続いた。
一方、飼い方や育て方を「調べたことはない」としたのは21・6%に上った。関西のある動物愛護団体の男性代表はこう指摘する。「動物の命を物のように扱う人が多すぎる。うちでは子犬や子猫の譲渡希望が増えているが、『初めて動物を飼う』という人は特に慎重に譲渡の審査をしている」
オンライン活用も
行政や愛護団体が開く譲渡会の中止が相次ぎ、新たな飼い主との縁を結べずにいる保護犬・保護猫も多い。
そんな中、神奈川県動物愛護センターは昨年11月下旬、代案として、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使ったオンライン譲渡会を初開催した。「1匹猫を飼っていますが、一緒に飼えそうですか?」「鳴き声が聞いてみたい」。当日は200人以上が参加。画面越しに犬や猫との触れ合いを楽しんだ。
譲り受けの条件となる事前講習についても、県は譲渡会と同じ日にオンラインで配信。参加者の不安払拭にも努めた。
上條光喜愛護・指導課長は「オンライン譲渡会で出会いの場が広がった」と喜ぶ。ただ、譲渡までには従来通りの厳しい審査が必要で、「動物が二度と不幸にならないように、時間をかけて最善の譲渡先を決めていきたい」と話した。