暑中見舞いの葉書が届きました。
近況と、
来年からは年賀状をやめることにしたというお知らせ。
そして、
「メルマガを読んでいますよ」
といううれしい言葉も添えられていました。
その方から、ずいぶん前に聞いた話を思い出しました。
結婚して間もないころのお正月。
お姑さんが、
錦玉子の作り方を教えてくださったそうです。
錦玉子は、
黄身と白身を分けて裏ごしし、
重ねて蒸して作る、
とても手のかかるお正月料理です。
お姑さんは、
「来年からは、あなたが作ってね」
とおっしゃったそうです。
すると彼女は、
「これは、とても手がかかるので、
来年からは作るのをやめましょう」
と伝えたのだそうです。
私はその話を聞いて、
なんて勇気のある人だろうと思いました。
自分にできることと、
相手が望んでいることが違うとき。
その違いをはっきりさせて、
自分の考えを言葉にする。
私には、それができなかったからです。
義母との間に小さな行き違いがあっても、
「それはできません」
「私は、こうしたいです」
と伝えることができませんでした。
小さな違いを抱えたままにしていると、
やがて態度に出てしまいます。
我慢している自分も苦しくなり、
相手にも、受け入れていない気持ちが
伝わってしまう。
今振り返ると、
まだ小さな行き違いだったときに
言葉にできていたら、
関係をこじらせずに
済んだのではないかと思います。
もちろん、伝えたからといって、
すぐに分かり合えたとは限りません。
それでも、
自分の思いを伝えることは、
相手を拒むことではなく、
お互いの違いを知るための
最初の一歩だったのかもしれません。
何年も前に聞いた、
何でもないような会話。
けれど今になって、
その出来事が、
自分の歩いてきた道をよく見えるようにしてくれています。
本を作るときも、
こうした小さな出来事が
大切な一節になることがあります。
そのときは意味が分からなかったことが、
時間を経て、
「あの出来事は、
今の私のここにつながっていたんだ」
と見えてくることがあるのです。
本づくりは、
大きな出来事を並べることがいいとは限りません。
忘れていた会話や、
心に残っていた小さな違和感の中から、
自分の人生に流れていた一本の糸を
見つけていくことでもあります。
私は、その糸を一緒に探しながら、
本の形にしていくお手伝いをしています。
あの方が、その後、
どんな道を歩いてこられたのか。
今度お会いできたら、
ゆっくり聞かせていただきたいと思っています。
※ご自身の歩いてきた道を本にまとめてみたい方へ。
本づくりの伴走については、こちらでご案内しています。

