取り締まり新米警官がスピード違反の車を捕まえた。

「50キロオーバーですな。免許証を拝見します」

「そんなの持ってないよ。昔っからな」

「なんだと!無免許運転か・・・これはあんたの車なのかね?車検証を見せてもらおう」

「いいや、盗んだ。車検証ならダッシュボードん中にあったな。さっき、拳銃をしまった時に見た」

「拳銃だって!?あんた、拳銃を持ってるのか!?」

「ああ。車の持ち主の女を殺すのに使った」

「な・・・なんだとぉ!!」

「死体は、トランクに入れといたよ」

若い警官は真っ青になって、無線で応援を呼び寄せた。


30分後、駆けつけたベテランの警官に男は尋問されていた。

「まず、無免許運転だそうだが」

「免許証は、ここにちゃんとあります」

「・・・車を盗んで、拳銃がダッシュボードにあるそうだが」

「とんでもない!ダッシュボードの中は車検証しかないし、名義も私の免許証と同じでしょう?」

「うーむ。トランクに死体があると聞いたんだが」

「そんなバカな!今トランクを開けますから見てください・・・ほら、カラッポじゃありませんか」

「おかしいなぁ。新米のやつは、君が無免許運転で、車の窃盗、拳銃がダッシュボードにあって、死体がトランクにあると言っていたんだが・・・」

「とんでもない嘘つきですね。 もしかして、私がスピード違反だとも言っていませんでしたか?」

2台の自動車がフリーウェイで正面衝突した。


2台とも大破したが、どちらの運転手も無事だった。

先に車から這いだした老紳士が他方の車に駆け寄り、運転していた中年の男を助け出してから柔らかい物腰で言った。


「お怪我はありませんかな?」


男は、相手の意外なほどに紳士的な態度に驚き、丁寧に答えた。


「ええ。あなたは?」


「私も無事です。こんな事故なのにお互いに怪我一つしないなんて、奇蹟としか言えませんな」


そう言うと老紳士は、内ポケットから小瓶を取り出して男に差し出した。

「こんなときは気を落ち着けるのが一番ですぞ」

「おお、これはありがたい」


男は小瓶を受け取り、中身のウイスキーを半分ほど飲み干した。


「さあ、あなたも」


男が返した小瓶を受け取ると、老紳士は小瓶の蓋を閉めて内ポケットにしまい、皺だらけの顔に微笑みをたたえて言った。


「私は警察の事故処理が終わってからゆっくりと」