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その後も、なんやらかんやら、あれあやこれやとすったもんだがあって、総緑(すべて・みどり)の周辺はいつも慌ただしかった。「マナ使い」あるいは「活人剣の使い手」としての修業や鍛錬を繰り返す日々の中で、面倒臭い事件や煩雑なイベント等々をこなしつつ、彼らは青春時代を満喫していたと言えるだろう。
「史佳(ふみか)が部室の前で待ってるよ、健一(けんいち)」
スマホからミレディスの声が。
実は、総家(すべてけ)で契約しているセレブ仕様の「ミレディス・ネットワーク」システムを、緑は仲間たちと共有していた。朱里(じゅり)や武雄(たけお)の宗宮兄妹(そうみやきょうだい)や泉沢(いずみさわ)健一と山川(やまかわ)史佳、その他の友人たちと。
そして、セキュリティ設定として、IT面のセキュリティ並びに物理的実際的な安全確保の観点から、何か危険が生じそうな時には、こちらの問い掛けがなくとも、ミレディスの方から率先して警告するように設定しているのだ。その延長線上で、「セレブ仕様」の高性能ミレディスはお節介にも、しばしば日常会話にまで割り込んでくるのであった。
「おっとそうか」
学生服に袖を通していた健一はそのまま(学校指定の)通学リュックを掴んで、歩きながら上着のボタンを留めていく。その後に続いて緑も部室を出ると、ちょうど朱里も女子の部室から出てきたところだった。
ぺちゃくちゃお喋りしながらそぞろ歩きする少年少女たち。史佳の自宅と朱里の宗宮家は方角が逆なので、校門で別れることになる。
「じゃあねー」と、笑顔の朱里。
「また明日」手を振る史佳。
「バイバーイ」緑は大きく腕を振り回す。
「後で道場でな」健一は一人クールだ。
朱里がその場に立ち止まって二人を見送っていると、健一と史佳はどちらからともなく手を繋ぎ出した。
「あの二人……いい感じだよね……」
しみじみと呟く朱里。
「ああ、確かに」
緑は頷いた。
「とにかく史(ふみ)ちゃんが素晴らしいな。『マナ使い』でもないのに、あそこまで健一のチカラを増幅させられるなんて、ハンパねえよな」
「わたしはどうかな……? ミドリにとって、わたしは……」
朱里は目を伏せた。
「じゅりりんは俺の太陽だ。俺の宝物だ。どんだけじゅりりんが俺を勇気づけてくれることか、言葉では言い表せないくらだよ」
緑は明瞭な声で淀みなく感謝の思いを告げた。

「ほんとう……?」
「ホントホント! じゅりりん最高! 本当に愛してるよ!」
緑は叫んだ。下校途中の生徒たちが皆振り返っていく。

「ば、ばかっ。そんな大声でっ……」
全身真っ赤になりながら後ずさる朱里。そして、ほんの一呼吸おいて、


「……わたしも……愛してる……」
一目散に走り出して逃げた。
「あ、待って、じゅりりん!」
慌てて追いかける緑。そこへミレディスがまた口を挟んだ。

「調子はどうだい、緑?」
「もちろん! 万事順調だ!」

笑って答える緑。水溜まりも段差もなんのその、軽々と跳び越えていった。
(終)
◇
お遊びで動画を作ってみました。
動画&BGM:ClipChamp
音声:VOICEVOX
足音:効果音ラボ( https://soundeffect-lab.info/sound/various/)
キャラクターデザイン:野木清荘オリジナル
シナリオ:野木清荘オリジナル
あれですね、電子書籍サイトのCMで、マンガのシーンを切り取って紹介している、あのパターンですね。
はっきり言ってダサい動画だ。でも、
もっとAIを駆使してクオリティの高い動画を、とは、今のところ思っていません。金も時間も労力もそこまで掛けるつもりは今のところありません。