気持を打ち明ける
帰路に着く前に、私は展望台の駐車場に車を停めました。
雄大な山の景色を見ながら、私は彼女を抱きしめました。
彼女はとてもビックリしたようでしたが、回した私の腕を解くことはありませんでした。
しばらく黙ったままの時間・・・とても幸せな空間。
外気はとても寒いのに、私は とても暖かい時間を過ごしていました。
帰路、彼女も私も少し言葉数が少なくなっていました。
でも居辛い空間ではなく、黙って手を繋げば良いだけの気持の安らぐ空間でした。
初めての遠出
最初の食事会の後、何度かメールをやりとりし、
数週間後、彼女の誕生日が過ぎた頃に私は彼女をドライブに誘いました。
1回食事をしただけ、それまでの接点も無し。私は断られる事を想像していました。
ところが彼女は快く私の誘いに乗ってくれました。
当日彼女を自宅近くまで車で迎えに行きました。
お互いに秘密を共有するドキドキ感に、私はすっかりはまっていました。
少し遠出をしながら、いろいろな話をしましたが、どうやら今まで彼女は自分に対する強烈なコンプレックスを持っているようでした。
彼女の心の中は3層に分かれているようです。
第1層は会社等での対外的、表面的な部分
第2層は自宅での対外的、表面的な部分
第3層は実際の自分の内面
第3層が表に出すことができる機会がとても少なく、いつも自分を偽って生きているのだという風に感じているのです。
それが、私には3層の自 分を出す事ができる。話すことで、楽になれたと言ってくれました。
第3層の彼女は、とても甘えん坊で泣き虫でした。
でもそれが私にはかわいくて仕方ありません。
私は、彼女に自分の気持を打ち明けられずにはいられませんでした。
突然の誘いに
「今日時間ありませんか?」
彼女の突然の誘いに私は少し混乱しました。
『なぜ?でも時間は作れなくはない』というのが、頭の中でグルグル回っています。
「いいですよ。食事でもしましょう」
結局ごく普通に返事を返し、私たちは会うことにしました。
場所は都内某駅。夕方から降り出した雨が少し強くなってきた頃、
会社での印象と同じチャーミングな笑顔で彼女が現れました。
「すいません。突然呼び出してしまって」
「いや、大丈夫。今日は丁度時間があったし」
私たちは雨の中駅から少し離れたビストロに入りました。
コース料理を食べている間も彼女の笑顔は途切れません。
実は同い年であることもわかり、話も弾みます。
何を話したか、何を食べたかは思い出せません
ただ、なぜか何を話しても話が合うんです
一緒にいることがとても心地よい時間になっていました。
そして、私の中にはっきりと彼女に対する思いが生まれていました。
会いませんか?
退職から数週間が過ぎた頃、突然彼女からメールが来ました。
会社ではプライベートな話はほとんどしなかったのですが、
来たメールは業務の事ではなく、他愛の無い内容・・
その他愛の無いメールが、私の中の何かのスイッチを押したようです。
直ぐに返信・・もちろん、こちらも他愛の無い近況など書きつつ。
数日間で、何通かのメールをやり取りし、どうやら彼女が心理的に
落ち込んでいるようであること。それを相談する相手がいないことが分かりました。
私は、いつでも相談に乗りますよというスタンスで、話を聞いていました。
数日後、彼女から突然「今日時間ありませんか?」とメールが来ました。
会議室での出会い
会議室に入ると、白いタートルネックのセーターを着た彼女が上司の隣にちょこんと座っていました。
「ふーん、こんな人だったんだ。」それまで社内で全く印象が無かった為か、彼女を自分に関係する相手として認識するのは初めてでした。
もちろん、業務の引継ぎをするのですから、打合せは極めてビジネスライクに進んでいきました。
ただ、今までの業務状況を聞くとあまりに非効率な進め方をしていた事が分かり、私は彼女が気の毒になりました。
「本当に大変でしたね。」
業務以外の自分の言葉で初めて彼女に声を掛けました。
「あはっ、まあ・・・」
彼女の顔がほんの少し緩みました。
『あれ?こんなチャーミングな笑顔を持っているんだ。』
私はちょっとドキッとしました。
しかし、その日は引継ぎの打合せも程なく終了し、彼女は数日後に退職しました。
普通はこれで終わり・・・ますよね。
それは数年前のことでした
それは数年前、ある女(ひと)との偶然の出会いから始まりました。
同じ会社の中で、彼女とは全く違う部署。
毎日同じ建物には通っていても、なんの接点もありませんでした。
そんな日々の中、彼女は退職することになりました。
彼女の所属する部署が私の部署との統合により閉鎖される事になったのです。
彼女の仕事の一部は私に引き継がれることが決まりました。
それまで、彼女の存在は認識していても、意識する事は無かったのですが、
引継ぎのために打合せを行なう事になりました。
「会議室での打合せ」、これが出会いの瞬間でした。
