ユーラシア大陸をヒッチハイクで横断することを目指して出発。
日本→韓国→中国→カザフスタン→キルギス→再びカザフスタン→ウズベキスタンと進んできた。
ウズベキスタンとトルクメニスタンでは、毎晩の滞在登録が必要なのがちょっと面倒。
3月23日
太陽の国ホラズムの最終日は、雨。
最後にまたヒヴァの砦の中を散歩しようと思っていたけれど、そんな気も失せてしまう。
まずは朝食。
一人前にしてはたっぷりすぎるこの朝食も、今日で最後だ。
宿のおばさんたちに聞いたところ、トルクメニスタンには城壁を抜けた所のバザールから、バスが出ているそうだ。
なんとも便利。
荷物を全部ビニールシートでしっかり覆い、自分もレインコートを着る。
傘は日本を出発する時は持っていたのだけれど、どこかに忘れてしまってきた。
おばさんが傘を貸してくれようとするけれど、大丈夫。
出発するころには雨は小降りになっていた。
城壁の中を歩いて行こうとしたけれど、門の所は水浸しになって通行止めみたいになっている。
砂漠で雨なんて珍しい。
私の出発を悲しんでくれているのだったりして。
仕方ない。
壁沿いに外側を歩いて、裏のバザールまで行く。
「すごい雨だったね。」
「今日はどこへ行くんだ?」
すっかり顔見知ったお店の人たちが、いつものように話しかけてくれる。
「今日はトルクメニスタンに行くんだよ。」
「そうかい、そりゃいい。」
今日もニコニコと見送ってくれる。
しばらくするとバスが入って来た。
「ほら、あのバスだよ。」
バザールの人たちが教えてくれる。
早速乗り込み、バスは走り始めた。
数日間いたヒヴァが、どんどん離れていく。
今日は待ちに待った、トルクメニスタンに入れる
日だ!
30分ほど走れば、バスは停まった。
とても田舎だ。
さて、国境はどこだろう?
バスの中でトルクメニスタンに行くんだと吹聴して回っていたからか、一緒にバスを降りた人々が教えてくれる。
どうやらもう一台、ミニバスに乗り換えるらしい。
指差して教えてもらった、少し先で待っているミニバスに乗り込む。
「トルクメニスタンに行くの?」
そうだよと、運転手さんと先に乗っていた数人のお客さんがうなずく。
ここから国境まで行く人はとても少ないようだ。
同じバスから降りてきた人たちがもう乗ってこないのを確認して、ミニバスは出発した。
ミニバスの乗客たちもトルクメニスタンに行くわけではなく、国境近くに住んでいるだけのようだ。
一人の、もの静かな出で立ちのおじさんが言った。
「お昼ご飯、食べにおいで。」
なんと、同じバスに乗り合わせただけで昼食に招待してくれることに。
国境近くの人はすごく旅人に親切であるという自説がまた実証された。
おじさんは本当に、自分が降りる所で一緒に私を連れて行ってくれる。
野の中の、本当に小さな小さな田舎。
おじさんは、トルクメニスタンはすぐそこだよと指を差す。
のどかな小道を少し歩いて、おじさんの家に着く。
お昼ご飯ってご自宅でのか。
レストランをイメージしていた。
奥さんとおじいさんおばあさんが迎えてくれる。
それにしても昼食の時間まではまだ結構時間がある。
突然訪れた客人を、ご家族はナチュラルに受け入れてくれる。
一晩泊まっていきなさい、とも言ってくれる。
椅子に座って、話をしたり、物を見せてもらったり、ただぼーっとする。
時間がゆっくり流れる、シンプルな暮らし。いいな。
やがて正午が近づき、「行くぞ」とおじさんが言う。
どうやら親戚の家まで歩いて行くようだ。
親戚の家ではおじさんおばさんが迎えてくれる。
昼食はすっかり準備が整い、スープ、ひらべったいパン(フレップ)、ハ厶、ブドウ、リンゴ、ブルーベリージャムが食卓に並んでいる。
おいしい。
そしてワイワイと、下手なりにロシア語を用いて会話をする。
またおじさんの家に戻ってゆっくりする。
おじさんは各所に電話をかけ、ついには
「車を呼んだから、乗って国境まで行きな。」
ということになった。
泊まることになっていた気がするが、レジストレーションの関係かな?
そう言えば、トルクメニスタンビザの入国日は今日になっているのだから、明日では問題があるかもしれない。
おじさんの知り合いらしき人の車が来て、国境まで乗せてくれた。
たったの6km ほどだそうだ。
カザフスタンの出国は、レジストレーションの紙には触れられることもなく、難なく終わった。
そこからトルクメニスタンの入国管理まで、またタクシーに乗らなければいけないらしい。
少し走って、建物に着いた。
いざ、入国!
ビザを見せる。
「一人なの?どこへ行くの?」
「トランジットでイランまで。」
「ロシア語話せる?英語は?」
「ロシア語はちょっとだけ。」
「はい、じゃあ14ドルね。」
ん???
入国時にお金っていったっけ?
ドル、、、持ってない。
「ウズベキスタンのお金じゃだめ?」
「ダメダメ、トルクメニスタンのお金は?」
「ない。」
「じゃあダメ。」
「戻ったら両替所あるかな?」
「知らん。とにかく、入れないから。」
私は考える。
一体どれくらい戻ったら両替所があるのだろう。
何にもない田舎の道々ばかりが思い返される。
「両替して、明日また来たらいいかな?」
係のおじさんはビザの入国日の欄を指で叩き、
「入国日は今日でしょ。ダメだよ。」
戻って建物の外に出る。
乗せて来てくれたタクシーのお兄さんがまだいたので聞いてみる。
「この辺りに両替所はある?」
「両替所?ウルゲンチまで戻らないと。」
うわ、つんだ。
建物の外、ひとり佇む。
このビザのため、キルギスで待ち、ウズベキスタンで待ち、やっと辿り着いたんだよ。
全部陸路で行くという計画が狂ってしまうのだろうか、、、。
何事かと警備の人が話しかけて来る。
「いや、ドルがなくて入国できなくてさ、、。」
「ドルもトルクメニスタンのお金もなくてどうやって過ごすつもり!?」
警備員さんはなんかおもしろがっている。
なんだ!?トルクメニスタンの中には両替所はないのか?
「まあがんばってー。」
がんばってじゃないよ、全く。
うん、ここでやすやす引き下がってたまるものか。
「何?ドル持って来たの?」
「両替所まで戻ってたら間に合わない。入ってからatm 探して払うとか、ウズベキスタンのお金で払うとか、何とかしてよ。」
「ダメだ。」
「じゃああなたが両替してよ。」
「ダメだといったらダメ。」
は!そうだ!
「ここならウズベキスタンへこれから入国しに行く人も通るでしょ。その人に両替してもらう!!」
「ダメだ。」
「何でよ。外に出て自分で交渉したらあんたには関係ないでしょ。」
「ダメだダメだダメだ。」
警備や係の人たちが何事かと集まり始めた。
一人、英語が少しできる警備員のお兄さんがいて、その人だけちょっと協力的でいてくれる。
「ドルもトルクメニスタンのお金も持っていないから、出国しようとしている人に両替を頼もうと思うのだけど、それもダメだと言われて。」
「なるほど。」
お兄さんは皆に事情を話し、なんだそんなことかと人々は散って行った。
外に出て、出国して出てくる人たちに交渉してみよう。
そう心に決めていると、
「おい、両替してくれるって人がいるぞ。」
他の係の人たちが、出国側の通路へと導いてくれる。
「この人だ。」
そこには一つのグループの若い女性が、何事かといった顔をして立っていた。
「このレートで替えてくれるそうだ。いいか。」
う。レートが分からないが、?
やっぱり外で、自分でしっかり適正レートを聞いた後で替えたいかも。
首を振ると女性は怒り出した。
英語のできる警備員さんがフォローしてくれる。
「彼女は親切で両替してくれるんだ。レートも適切だよ。」
携帯でレートを調べたのを見せてくれる。
なんて親切かつ仕事の出来る警備員さんだ!
本当に適正レートだった。
ごめん、お姉さん。
「ほら、じゃあこの人はどうだ?」
また紹介してくれる優しい係員さんたち。
「はい、是非お願いします!」
15ドル分だけを両替し、後は入国時にまた両替先を探すことにする。
15ドルを手渡して、ほら、あっちに持っていけと係の人たちがまた入国側に通してくれる。
なんてフレキシブルで優しい人たちだ!!!
ホクホクとして、元の係のおじさんの所にお金を持っていく。
おじさんは渋々、入国スタンプを押してくれた。
「まったく、どこの奴が入国許可を出しやがったのか。」
とボヤきつつ。
親切に、スムーズに、手続きをしてくれた大使館の人たちの顔が浮かんだ。
執念は勝つ。
「うわ、本当に通れたよ、、。お前、すげえな。」
ずっとことを見守っていた、英語のちょっとできる警備員さんが呟く。
味方してくれてありがとう!
「おう、いけ、いけ。」
持ち物検査のゲートをくぐる。
鞄を開けて、しっかり一つ一つ確かめられる。
これは何だ?「マットだよ。」
これは?「太陽光充電器。」
「うわ、すげー。」
見たことがないのか、係の人たち同士で観察して楽しんでいる。
日記をめくり、ヒヴァでのスケッチを見ておじさんは聞く。
「絵描きか?」
旅の相棒である恐竜のぬいぐるみの腹を指差し、彼は聞く。
「切って開けていい?」
いいわけないでしょ!!!
私の剣幕を察して、ぬいぐるみはx線検査機をもう一度通るだけで疑惑をまぬがれた。
「さっき入国の方で揉めてたでしょ。一人なの!?」
おじさんたちは半ば楽しんでいる。
「ほら、済んだよ。」
建物を出れば、トルクメニスタン!!!!!
苦労した分だけ、違いが浮き立つ。
建物の中にはどこも、独裁者?のように大統領の写真が飾ってあった。
トルクメニスタンでもウズベキスタンと同様に、レジストレーションの制度がある。
ではまず、両替所を探さないとな。
客引きしてきたタクシーの運転手さんに聞いてみる。
「1ドルしかないんだけど、、、両替できるところへ行けないかな。」
「うーん、構わないよ。」
近くの大きな街、タシャウスに着く。
運転手さんは銀行や両替所を探して走り回ってくれたけれど、米ドル以外を両替できる所や、visaカードでキャッシングできる所は見つからない。
そんなに見当たらないものか。
ドルもトルクメニスタンのお金もなしでどうするのだと笑った警備員さんの意味が分かった。
申しわけなくてもういいよと言ったけれど、いやいや見つけてあげるからと、運転手さん。
大きなホテルに行ってはどうかということで、シャバットホテルに向かう。
大きくてきれいなホテルの受け付けに辿り着くと、そこには英語ペラペラの旅行会社のおじさんがいた。
ここではインターネットはすごく高いんだと言いながら、何とか日本と連絡を取ろうとしている。
なぜかというと、昔バーで働いていた時に日本の大使と友だちになったのだという。
なかなか連絡は取れず、でも
「安心して、今夜はここに泊まっていいから。」
マジですか。
そういう話になってようやく、1ドルであちこちかけずり回ってくれた運転手さんは帰って行った。
「座って、座って。」
旅行会社のおじさんが、ラウンジのフカフカの椅子を勧めてくれ、おじさんの同僚である21歳の女性がコーヒーを出してくれる。
おじさんの日本の知り合いに、連絡が着いたようだ。
「あ、こんにちは。」
「今、トルクメニスタンにいるの?」
日本語だ。
日本人男性は、両替は首都アシガバードのホテルや旅行会社ならできると教えてくれた。
それからここタシャウスでも、もう一軒新しい大きいホテルがあるのでそこを当たってみるのがよいとのこと。
ただ早くしないと、ホテルの旅行会社の人たちは仕事を終えて帰ってしまうということだった。
「分かりました。走っていきます!」
「いや、走らなくてもタクシーが、、ってお金ないのか。
じゃあ走って行ってください。」
最後に男性は明日、一応大使館に連絡してトルクメニスタンにいることを報告しておいてと、元職員らしいお願いをして、電話を切った。
ほっ。親切な人でよかった。
電話を返すと、旅行会社のおじさんは少し話した後電話を切った。
それから、新しいホテルへの行き方を地図に書いてくれた。
「荷物はここに置いといていいよね。
行ってくる!!」
外に飛び出て、警備員さんに聞いて新しいホテルの方角を確かめる。
そして結構早めのペースで走って行く。
おお、あんまり疲れない。
毎日旅をしていて、体力がついたかな?
野原や堤防がある人気の少ない道。
そこを抜けて、曲がるのはこの道であっているのかな?
ちょっと進むと老夫婦が散歩していたので、聞いてみる。
「あのホテルなら、ここを進んで、T字路になったら左に曲がって」
老夫婦はとても親切に教えてくれた。
ちょっと街中に出て、また分からなくなったのでお店の人に聞くと、また親切に教えてくれた。
そうしてついに、大きいホテルが見える。
ずっと駆け足で辿り着けた私、すごい。
中に入って行くとフロントに若いスタッフたちがいた。
「日本円を両替できませんか。」
スタッフたちは首を横に振る。
でも親切に色々聞いてくれる。
しかしこのホテルには英語が流暢な人はいないようだ。
傍に居合わせたお客さんらしきおじさんが、Google 翻訳を使って助けてくれる。
「ちょっと待ってね、両替できるところを探してみるから。」
フロントのお兄さんはいろいろと電話をかけてくれている。
Google翻訳のおじさんが、逐次状況を説明してくれる。
「見つかったよ!旅行会社の人が両替してくれるって。」
「本当に!!どうやってそこに行くか、地図書いて。」
「まあ、まてまて。」
Google 翻訳のおじさんとフロントのお兄さんが話し、
「一緒に行きましょう。」
Google 翻訳のおじさんが、こういう文字を見せてくる。
どうやらこのおじさんが連れて行ってくれるようだ。
なんと親切なお客さんが丁度居合わせたものだ。
フロントのお兄さんがタクシーを呼んでくれる。
親身に両替先を探してくれた、フロントのお兄さん。
おじさんと二人、乗り込んだタクシーは、街中の一軒の旅行会社の前で止まった。
おじさんについて降り、中に入る。
中にいた旅行会社のお兄さんが、両替してくれるのだという。
3人でソファに座って、しばらく話した後、
「で、どれくらい両替したいの?」
「1万円。」
おじさんが調べたレートで計算した額を、お兄さんが渡してくれる。
わー、トルクメニスタンのお金。本当に苦労して手に入れた!
「この人はとても親切。自分のお金を両替してくれる。」
おじさんはGoogle 翻訳でそう言う。
「記念になるし。もしかしたら日本に行くかもしれないしね。」
お兄さんのお陰で本当に助かった、、、。
これまたとても親切なgoogle翻訳のおじさんは、帰りも送ってくれるらしい。
ミッションも終え、リラックスしたタクシーの中。
「自分も別のホテルの旅行会社で働いている。」
「こんな旅行会社があったのを知らなかった。」
「同じ旅行会社の人間として、彼の態度はとても勉強になった。」
そうおじさんは話してくれた。
「ここが私の職場だ。
ちょっと寄って行きなさい。」
そこはこれまでの2軒に比べると少し小振りだが、やはり立派なホテルだった。
おじさんの上司であるここのボスは事情を聞いて、
「最初からこのホテルにくればよかったのに。」
と言ってくれた。
ボス曰く、今この町にいる異国のツーリストは、ウズベキスタン人を除くと、私と、それからチェコ人が一人いるだけらしい。
ボスは仕事に戻るが、ホテルのレストランの
またおじさんがシャバットホテルまで送ってくれる頃、辺りはすっかり夜になっていた。
「どう、いいホテルでしょ。いいボスでしょ。」
おじさんは自分の職場が自慢のようだ。
トルクメニスタンの夜景は、虹色のライトがずっときらきらしていて、とてもきれいだ。
土の道の部分も少しあって、そこは雨が降っていてぬかるんでいる。
今日はすごい日だったなー。
トルクメニスタン、既に色々違いすぎていて面白すぎる。
シャバットホテルに戻ると、旅行会社のおじさんはもういなかったけど、若い女性従業員が鍵を渡してくれた。
「両替出来たからお金払えるよ。」
嬉々として伝える。
ホテルの部屋は豪華だけどどこか簡素、そう、ちょっと社会主義っぽい香りがする。
今日はぐっすり眠れるだろう。
明日からのトルクメニスタン、一体どんな所なのか楽しみすぎる。