「日本語」の多彩な表現
日本語の表現は、他国のそれと比べると多彩に思えます。
例えば「あなた」と言うとき、英語ならば相手が例え子どもであっても父親であっても、ましてや大統領であっても「you」です。
ところが日本には、「あなた」「君」「お前」「そなた」「貴殿」「貴様」「そこもと」と数多くの言い方があります。
初対面の人に対して「君」と言えばどのようなことになるでしょうか。
また、尊敬語、謙譲語、丁寧語などの敬語も多く、相手に応じて使い分けています。
これは他者との関係、つまり相手への敬いや、自身の慎みの心を大切にしている証拠なのでしょう。
「これができる人は信用が出来る」と言うことなのでしょう。
言葉で「人を見られる」のです。
さらに、日本語は「色」に関しても多彩な表現があります。
例えば「赤系の色」であれば、梅重、真紅、緋、桜色、桃色など約九十色もあります。
「人名由来の色」としては、二人静、紫式部、利休茶光という色があります。
「人の気持ち」に関しては溜息のことを青色吐息と呼んだり、誠意のことを赤心と呼んだり、白黒を争うなどは現在も日常的に使われます。
また「光」に関しては、一瞬に放たれる強烈な光を閃光(せんこう)といい、夕方、西に傾いた夕日の光を斜陽(しやよう)といいます。その他に蛍光や月桂、来光、雪明りなどの光の表現があります。
日本では、古くから暮らしの中に多彩な色合いを見出し、豊かな言葉で表現してきました。それは絵画や陶芸、詩歌などの文学や芸術の世界の広がりにも影響を与えました。
言語には、その国の文化や人々の感性、思考などが表れます。
その国の人々が、何に対して関心があるのか。
美しいと思うこと。
大切にしていること。
また、そうでないこと。
いろいろなことがその国の言語習慣でわかってきます。
人の心にも大きな影響を及ぼす言葉。
私たちが普段から何気なく使っている言葉は、表現だけでなく、心理面にも大きく影響を及ぼします。ほんの一言で関係が崩れたり、ほんの一言に救われたりと。
言葉によってどれだけ励まされ、どれだけ傷つくのか。
言葉一つで違うのは何故なのか。
言葉を見つめてみましょう。
