妄想。
バレンタインデー当日。
高校生の男子、マサトは今年も、チョコは母親と姉だけ。
夕暮れの帰り道をひとり歩くまさと。
すると、後ろから声をかけられた。
「まーさと!」
幼なじみのアカネだ。
アカネはマサトとは違う高校に通っている。
勢い良く声をかけてきたアカネは、マサトの顔をのぞき込み、ため息をついた。
「あんた…その様子だと、今年もか」
マサトはアカネを無視し、早足になる。
「そんなへそ曲げないでよー。……はい」
アカネはマサトの前に回り込むと、後ろからオレンジの小さな箱をマサトに差し出した。
「そんなことだろうと思ったから、はい」
なんだよ、と動揺を隠しきれないマサト。
「いや…あのさ、去年も渡そうと思ったのよ。でも、バレーの遠征入っちゃって。こんな時期にさ。だから、渡せなくて…。」
アカネはごにょごにょと話し始めた。
「べ、べつにチョコなんて、もらえなかったら死ぬわけじゃないし、いいんだけどさ。だけど、マサトかわいそうだなーと思ったからさ、お母さんとお姉さんにしかもらえなくてー。」
う、うるせぇ!とマサトはまた早足で歩き始めた。
「あたし!…マサトのこと」
おわり。