日本の経済成長戦略のひとつの柱とも言われている国家戦略特区に対する税優遇策が決定されました。今回では、国家戦略特区の具体的な姿の中で不透明なところが残っていることに対し、法人税が下がる効果が透明でないという慎重派からの意見が強くなったことから、焦点であった法人税実効税率の本質的な引き下げは延期されるようになりました。……続きを読む
相続税の納税は、被相続人の死亡した日の翌日から10ヶ月以内に金銭で一括して納めることが原則となっていますが、特別な納税方法として延納と物納の制度が存在します。延納は、金銭で一度に納付することが難しいときに、何年かに分けて分割し納める方法です。物納は、延納によっても納付できない場合に、相続で取得した財産そのもので納める方法です。物納の要件は次のようになっています。
・延納によっても相続税を金銭で納めることが困難な状況にあることが必要であり、この金銭で納めることが困難な状況にあるかどうかの判定は、貸付金の返済や退職金の支給といった納税者の近い将来に見込まれる金銭の収入も考慮して判断する必要があります。
・土地を物納する場合、測量や隣地との境界確認等の条件整備が必要です。
・相続税の納付期限までに、金銭で納付することが困難な理由や物納しようとする財産などの所定の事項を記した物納申請書等の一定書類を税務署長に提出することが必要です。
物納が許可されるためには、下記の要件を満たす財産である必要があります。
・相続により取得した財産で日本国内にあること
・管理処分不適恪財産ではないこと
・物納申請財産の種類及び順位に従っていること
・物納劣後財産に当てはまる際には、ほかに適当な価額の財産がないこと
・物納に充てる財産の価額は、原則的に物納申請税額を超えないこと
物納する財産は次の順位で、上位の財産を優先して選択します。
第1順位 ①国債、地方債、不動産、船舶
②①のうち劣後財産
第2順位 ③社債、株式、証券投資信託
または貸付信託の受益証券
④のうち劣後財産
第3順位 ⑤動産
管理処分不適格財産とは物納に充てることができない財産を意味しており、抵当権の目的となっている不動産、境界が明らかでない土地、共有不動産、譲渡制限侏式などがあります。また、物納劣後財産とは、他に物納に充てるべき適当な価額の財産がない場合に限り物納に充てることができる財産を意味しており、地上権が設定されている土地、接道条件を満たしていない土地などがあります。物納財産を国が収納するときの価額は、原則的に相続時の価額によります。
相続時精算課税制度を適用して贈与により得た財産は、相続税の物納をすることはできません(相法41②)。これは贈与後、相続が発生するまでにかなりの年数が経っている場合も考えられ、贈与財産の管理・保全状況が明確でないことが理由と考えられます。贈与税暦年課税制度による贈与財産は、相続で財産を得た人が被相続人から受けた相続開始前3年以内の贈与財産に限り相続税の課税価格に加算されます。この加算された財産は、相続税の物納の対象財産となります(相基通41-5)。
相続時精算課税制度とは、平成15年1月1日以後の相続や贈与から適用になるもので、従来の非課税枠110万円までの贈与税の暦年課税の制度に加えてできました。ただし、従来の贈与税の計算では相続開始前3年以内の贈与財産を除き、相続財産に取り込まれるということはありませんでしたが、この制度はすべて相続財産に取り込まれるという部分が異なります。贈与時には2500万円までは非課税であり、暦年で2500万円まで使いきる必要はなく、多年にわたり使うことが可能です。2500万円超えたら20%の贈与税がかかり、金額の多寡には関係ありません。相続時には相続財産+相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産に相続税が課され、相続税-既に支払った贈与税が納付する相続税となります。
適用対象者は、贈与者だと贈与する年の1月1日現在65歳以上の親であり、受贈者だと贈与される年の1月1日現在20歳以上の子である推定相続人(親および子は、養親、養子(孫養子)も含み、子が亡くなっている際には代襲相続人である孫も含みます)です。贈与する財産の種類、金額、回数、期間に制限はありません。手続方法としては、贈与を受けた年の翌年3月15日までにこの相続時精算課税制度の選択適用をうける受贈者である
子が、当該子の所轄税務署長にこの選択する旨の届出を贈与税の申告書に添付して提出することによりこの制度を選択適用することが可能です。適用の期間ですが、初めにこの制度を選択するために手続をした場合、受贈者である親が亡くなるまでこの制度は継続されます。つまり、一度選択するとこの制度を撤回することはもう二度とできません。
この制度を一旦選択したら、その選択をした親(贈与者)との贈与については、従来の贈与税課税(非課税枠110万円による暦年課税)による贈与税の計算による贈与の申告は不可能です。ただし、選択をしていない他の者からの贈与については暦年課税により計算することになります。
この贈与制度には注意点があり、親の相続財産から切り離されないため、相続税が課税される親から子供への贈与となります。また、親の相続財産に取り込まれる価格は贈与した時の価額のままであるため、将来の評価額について予想がつかない財産の贈与となります。このようなケースがあるので、この制度を利用する贈与の是非については慎重に検討しましょう。
相続時精算課税制度の要件は、贈与をうけた年の1月1日において65歳以上の親から20歳以上の子への贈与となっており、父と母の両方とも65歳以上であれば、20歳以上の子は父母各々ごとにこの制度を選ぶことが可能です。よって、父との間では相続時精算課税制度を選び、母との間ではなんら選択しなかった際には、母との関係は110万円非課税枠の暦年課税のままです。当然に逆のケースも考えられ、贈与をうける子がこの相続時精算課税制度の選択について父母各々について取り決めればよいです。
相続時精算課税制度の適用を受けたい際には、その贈与を受けた年の翌年3月15日までの間に、贈与を受けた子がその子の所轄の税務署へ選択の届出書を贈与税の申告とともに提出することで、この制度の適用を受けることが可能です。父と母の両方から同一年に贈与を受けてこの制度の適用を初めて受けようとする際には、選択の届出害は、当然父と母の2つの届出書の提出をしなければなりません。
両親から同一年に贈与を受け、相続時精算課税制度を父のみ選択して母からの贈与は選択しなかった場合、翌年の贈与税の申告については、父からの贈与は、相続時精算課税制度の申告書を提出し(初年度は選択届出書を添付)、母からの贈与は、従来の110万円非課税枠の申告書を提出するという2種類の贈与税の申告書を提出します。
相続時精算課税制度には、贈与した人の相続財産に取り込まれるというデメリットがある一方、従来からの110万円まで非課税の暦年課税は相続開始前3年以内の贈与を除けば、相続財産に取り込まれることがなく切り離しができます。相続財産を贈与によって減らすという観点からだと、暦年課税を利用したほうが確実に対策できます。父との間で相続時精算課税制度を選択すると暦年課税は二度と利用できませんが、母を利用して暦年課税と同様の効果を得ることはできます。例えば、父から課税価額3,000万円の高収益のアパートと、父と息子と2人共同して経営する同族会社の株式を3,000万円贈与したいといわれている場合には、父は相続時精算課税制度を選択してアパートの贈与を受け、母は相続時精算課税制度を選択せず暦年課税とします。そして、同族会社の株式は父から母へ通常の暦年課税を利用して贈与し、贈与を受けた母から当該株式を息子へ、同様に暦年課税を利用して贈与します。このように母を利用することにより、父からの暦年課税と同効果を得ることが可能です。自社株のように将来の評価が不確実な財産についても相続財産に取り込まれる相続時精算課税制度を利用して贈与するのは不安が残るので、この例を参考にしましょう。