Ⅰ
私は、職場の親しい同僚や上司に対し、自分がDV加害当事者であり、DV加害更生プログラムに通っているという事実を伝えています。伝えるに当たっては、ためらいもありました。「実はDV加害当事者で、DV加害更生プログラムに通っています」と打ち明けるのが、心理的にハードルが高かったからです(もちろん、DV加害をした私が全面的に悪いのですが)。
私が打ち明けた当時(数年前)は今よりも、DV加害更生プログラムの存在も知られていませんでした。そのため、私がDVについて打ち明けたところ、
「お寺に行ってお祓いしてくる?良いお寺を紹介するよ」
と(善意で)返されたこともありました。きっとその方も、何か悪気があったわけではなく、その人なりに一生懸命考えて「アドバイス」してくれたのだと(今は)思います。
Ⅱ
立場を変えてみて、今度は自分自身が同僚や部下から「パートナーにDVをしてしまっています」と言われたらどう対応すればいいだろうか、を考えてみます。
Ⅲ
きっとまずは、「ただ話を聴く」ことが大事なんだろうと思います。
「DVをしている」という打ち明け話をしてくれている時点で、自らの行為が「悪かった」ということを認めているからです。だから、それに畳みかけるように「あなたの行為は間違っている」などとジャッジしたところで、状況は変わりません。それよりはまずは、打ち明けてくれる同僚・部下が、何をどう考えているのか、評価を下さずに話を聴くことが大事なのだと感じます。
Ⅳ
その上で、アドバイスを求められたならどうするか。今の私なら、(仮に同僚や部下がDV加害更生プログラムに繋がっていないのだとしたら)やはり、DV加害更生プログラムに通うことを勧めます。
「DVをしてしまった」と認めるということと、「DVをしなくなる」との間には、大きな壁があるからです。
「反省は一人でもできるけれど、更生は一人ではできない。」という言葉があります。打ち明けてくれた同僚・部下はきっと、打ち明けてくれた時点で、「反省」はしているのでしょう。ただし、それが「更生」に繋がっているかは分かりません。
そして、(同僚・部下の)パートナーやこどもにとっては、その人が反省しているかどうかよりも、本当の意味で更生しているか(二度とDVをしないような人間に変わっていけるか)の方が、重要だからです。