私の住んでいる町から西へ向かう処に、面白いリサイクルショップが在る。

種類の多さは当たり前だが、古美術、骨董品、バラエティーの豊かさでは

特筆すべきものがある。

年に数回、此処を訪れては、面白い物がないかと物色するのが楽しみなのだ。

その日も、この店を訪れ、何かないかとキョロキョロするのだった。

暫く店内をうろついたが、さして気を引く物も無く、早々に店を出た。

丁度昼時、コンビニで弁当とお茶を買い、何処かロケーションの良い処で、

食べよう。

すると、国道の左手の奥に、こんもりと茂った森を見つけた。

何回も通っている筈なのに、今まで何故、気づかなかったのだろう。

国道を外れ、迷わず車の鼻先をそこに向けた。

かなり狭い農道を走る。

周りは晩秋宜しく、ススキの穂が金色に輝き、風に揺れていた。

慎重に走っていると、前方にお社が見える。どうやら、神社のようだ。

境内の横に少しのスペースを見つけると、車の向きを変え止めた。

せっかく来たのだから、手ぐらいは合わせていこう。

古びた賽銭箱にお賽銭を入れた。

お辞儀をし、くるりと体をひねった時だった。

本殿の左横、奥まった処にもう一つ、社がある。

かなり小さな物だったが、赤く塗られた鳥居も何本か見える。

近づくと、かなり古ぼけたお稲荷さんだった。

手入れの無さに驚きながら、ボロボロになった鳥居を潜る。

小さな社の中には、左右、二体づつのお狐さんが祭られていた。

しかし、酷い。屋根には いつの枯葉だろうか、かなりの量で積もっている。

見かねた私は、本殿の横にあったバケツを借りると、清めどころの水を汲み、

屋根に積もった枯葉をどけると、車から持ち出したタオルで社を拭き上げた。

小一時間掛ったが、何とか稲荷神社には、見えるかな。

車に戻ると、もうすっかり弁当は冷え切っている。

仕方ない、家に帰ってからチンして食べよう。

相変わらず黄金色に揺れるススキの穂を見ながら、車を出した。

途中、ススキの間から、先程のお稲荷さんの鳥居が見えた。

すると、その鳥居の前のススキの中、白い襦袢に黒い袈裟を着た、

大きな体の坊さんが、こちらを見ながら、手を振っているのが見えた。

直ぐに車を止め、その坊さんの方を凝視する。

大きな顔の中、目も鼻も口も、定まらないまま、それでも、笑おうとしているのか、

への字になったり、大きく開けたり・・・。

きっと、お礼のつもりなのだろう、此処の主様の。

何故か、涙が私の頬を伝わった。

   この話には、後日談がある。それは、

年も明けた正月過ぎ、また、リサイクルショップへと出向いた時の事。

帰り道、気になったので、例のお稲荷さんへと寄り道した。

ススキの穂の中、車で抜けていくと、私は声に出るくらい驚いた。

何と、ボロボロだった数本の鳥居が見事な朱に塗り替えられ、

赤銅色に張り替えられたお社の屋根、見事な稲荷大明神となっていた。