役立つ事業承継の法則

役立つ事業承継の法則

役立つ事業承継の法則

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Q.古い貸家を所有していましたが、この土地を売ってほしいという人が出現しました。そこで、貸家を取り壊し、売却することとしました。この取壊しに約100万円を要しましたが、この費用については譲渡費用として控除することが可能でしょうか?また、ほかにどのようなものが譲渡費用に該当するのでしょうか?


A.土地等の譲渡に当たってその土地等の上にある建物等を取り壊した場合、取壊しがその譲渡のために行われたことが明白であるときには、譲渡所得の金額の計算において、譲渡費用として控除することが可能です。なぜなら、取壊しによってその土地等の価値の増加が見込まれるからです。
 ただし、更地の方が売却に有利であるからと事前に建物を取り壊していたときには、任意の取壊しということになって、譲渡費用には該当しません。譲渡のために直接要した費用であるか否かがポイントになりますので、譲渡契約書に取壊しを条件として記載する等、譲渡のために取壊しが行われたことがはっきりと分かるようにしておくことが重要です。

 譲渡所得については、土地や建物を売却した金額から取得費と譲渡費用を控除して計算を行います。譲渡費用とは、土地や建物を売却するために直接要した費用のことであり、建物の取壊し費用はもちろんのこと、建物の未償却残高相当額も含まれます。そのため、譲渡費用の計算は、次のように行います。
建物の取得費(未償却残)+取壊し・除却による支出費用-取壊し・除却によって発生した廃材の処分価格

 そして、譲渡費用については、不動産を売却するために直接要した費用のほか、不動産の譲渡価額を増加させるために支出した費用も譲渡費用とされます。不動産を売却するために直接要した費用の主なものは、売買契約書の土地や建物を売却するために払った仲介手数料、印紙税で売主が負担したもの、売却のための広告料、測量費、売却交渉のための交通費や宿泊費、各種調査費用(アスベスト調査や耐震診断等)です。一方、不動産の譲渡価額を増加させるために支出した費用の主なものは、不動産の譲渡価額を増加させるために支出した費用、貸家を売却するために借家人に家屋を明け渡してもらうときに払う立退料、土地等を売却するためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額、有利な条件で譲渡するために契約を解除したときの違約金です。

 なお、固定資産税や都市計画税、家財等の引越し費用、抵当権抹消登記にかかった費用、相続の名義変更登記費用等、売却代金の取り立てにかかる費用(弁護士費用等)、譲渡所得の申告のために払った税理士報酬は、譲渡費用に該当しません。
Q,私は、ハイテクメーカーの創業者(株式保有割合40%、他は従業員持株会が30%保有、残りは複数の取引先)です。経営については現在は、直接参画せず、同族関係者以外の者に会社運営を任せてはおりますが、会社を株主の立場で、見守っております。
 最近、私の年をとってきたこともあり、保有している株式を家族に承継させたいと考え、株式の評価額を顧問税理士に計算してもらったところ、あまりにも多額の評価額となり、承継する家族の納税資金確保に不安を持つようになってしまいました。
 そこで、中小企業投資育成株式会社(以下、「投資育成会社」という。)を利用し、投資育成会社を引受先とする第三者割当を行い、自社株式の評価額を下げることに成功しました。

<失敗のポイント>
 持株関係が変わることを見落としてしまい、私の株式の保有割合が下がってしまいました。

<正しい対応>
 自社株評価を、投資育成会社を利用して下げる方法は、相続税・贈与税対策としては有効なケースとなりますが、あくまでも「増資」になりますので、支配権を維持したまま事業承継対策を考える場合には、株式を無議決権株式にする、引受株式数を制限するなど、保有割合の変化による支配関係のバランスを確認する必要があると考えられます。

<税法等の解説>
(1) 中小企業投資育成株式会社
 昭和38年に「中小企業育成会社法」という法律に基づき、投資育成会社は、中小企業の自己資本の充実促進と、健全な成長発展を図るために中小企業に対する投資事業を行う目的で設立され、現在は東京、名古屋、大阪に3社あります。
 投資育成会社の業務には、株式等の引受をする「投資業務」と株式公開支援、経営相談等の「育成業務」があり、現在の投資実績は、3社累計で4449社、2124億円(2011年3月末現在)となっています。

(2) 投資対象企業
 原則として、資本金3億円以下の企業が対象となります(一部例外もあります)。業種は限定していません。


(3) 投資育成会社利用による事業承継上のメリット
 株式の引受を投資育成会社がする場合には、引受価額が問題になりますが、その価額は、下記の算式により計算され、税務上、国税庁において適正額であると認められています。
 下記の算式による評価額は、一般的には、相続税の原則的評価方式による評価額よりも低く評価されることになります。
 したがって、投資育成会社に増資を行った場合には、株主の持株比率が下がることで、株主の所有する株式評価額を下げることが可能となります。

〔算式〕
評価額=(1株当たりの予想純利益×配当性向)÷期待利回り

 また、経済産業省所管の政策実施機関として、投資育成会社は投資先の経営の自主性を尊重する姿勢をとっていますので、経営権の安定を維持したまま、次世代への事業承継を可能としています。ただし、投資後は、定時株主総会の実施や決算内容の説明、また安定的な配当を期待する点等は留意する必要があると考えられます。
Q,会社の株式の大半を私が所有しておりますが、当社は順調に業績が伸びてきており、今後は株価が上昇していくと考えられます。このままだと自分に相続が発生した際に相続税の負担が重くなってしまうと考え、早めに株式を子供に移転した方が良いと思っていますが、株式の買い取り資金が子供にないため、なかなか実行に移すことができていません。

<失敗のポイント>
 将来に向けて、株価の上昇が見込まれる場合において、早く株式を移転しておくにこしたことはありません。株式の移転のタイミングを逃してしまうと、評価額が膨れ上がり、取り返しがつかないこととなりかねません。

<正しい対応>
 オーナーの株式を、子供が設立した資産管理会社に売却します。購入資金がない場合には、金融機関からの借り入れも考えるべきでしょう。売却によりオーナーの相続財産を減らすことができるとともに、法人が株式を所有することにより、将来の株価上昇による影響を抑制することが可能となります。

<税法等の解説>
 オーナーの子供が資産管理会社を設立し、その資産管理会社がオーナーの会社の株式を買い取ります。今後は、これにより、子供が会社の株式を資産管理会社を通じて保有することになります。資産管理会社設立の効果は以下の2つになります。

(1) 資産管理会社設立の効果
(一) オーナーの持ち株数の減少
 株式を資産管理会社に売却することで、オーナーの持ち株数が減少させることができます。また、資産管理会社の株主を子供とすることで、オーナーの相続財産から自社株を切り離すことが可能となります。

(二) 将来の株価上昇の抑制
 資産管理会社への株式の移転は譲渡時の時価で行うことになりますが、その後会社が成長した場合において、株式移転時の時価から値上がりした部分に関しては、資産管理会社の株式評価の際に45パーセントが減額されることになります。
 したがって、株式を資産管理会社を通じて保有することで、今後の株価上昇分のうち約半分について、減額することが可能となります。

(2) 資産管理会社の設立方法
 資産管理会社の設立方法としては(Ⅰ)株式交換による場合と、(Ⅱ)借り入れによる場合があります。(Ⅰ)株式交換による場合には、後継者が設立した資産管理会社の株式と、オーナー会社の株式の株式交換を行います。(Ⅱ)借り入れによる場合には、後継者が設立の資産管理会社が金融機関等から借り入れた資金で、オーナー所有の株式を買い取ることになります。

(Ⅰ)株式交換による場合〔対策の流れ(一例)〕
STEP1:オーナーの後継者が全株式を諸湯する会社を新たに設立します。
STEP2:オーナー、新会社と後継者は、オーナーと後継者が所有するA社株式と新会社が新規発行する株式を交換させます。
STEP3:その後、オーナーから後継者へ新会社の下部好きを贈与します。

(Ⅱ)借り入れによる場合〔対策の流れ(一例)〕
STEP1:全株式を後継者が所有する会社を新たに設立します。
STEP2:その所有するA社株式を、オーナーは、新たに設立した会社に譲渡します。
STEP3:金融機関等からの借入金で、新会社は、オーナーからA社株式を購入します。
STEP4:A社からの配当金を活用して、新会社は、借入金を返済していきます。
Q,私は卸売業を営む会社を経営しております。私もいい歳になってきたことを考えて、そろそろ会社の第一線を退くことを考えるようになりました。当初はこの先10年を目処に息子に会社の代表権を渡そうと思っていましたが、株だけは早めに渡してしまった方がよいと思い立たったため、株の贈与を行うことにしました。

<失敗のポイント>
 決算での業績が株価に影響しますので、類似業種批准価額による評価では、贈与をする際には自社の株価を把握しておくことが重要であると考えられます。仮に業績が良い場合には、贈与税の負担が重くなってしまうこともありえます。

<正しい対応>
 贈与をする前に会社の株価を把握しておくべきでしょう。会社に利益が出ていないときに贈与された方が、利益が出ているときに比べ、贈与税の負担を軽くすることが可能となります。

<税法等の解説>
 類似業種批准価額では、評価会社の(1)「配当」、(2)「利益」、(3)「純資産」の3要素を基準に類似する業種の上場会社の株価に批准して、株価を計算することになります。

(一) 類似業種批准価額の計算方法
 類似業種批准価額方式とは、類似する業種の上場会社の株価に批准して自社株の評価額を計算する方法をいいます。株価の価格形成要素としては、配当や利益、純資産価額の他、事業内容や将来性、経営者の手腕なども含まれており、これら全ての項目を批准することが望ましいと考えられますが、数値として把握することが難しいため、最も基本的な要素である評価会社の配当・利益・純資産をもとに計算することになります。

【類似業種批准価額の計算式】
類似業種の株価×{(評価会社の1株当たり年配当金額(注1))÷(類似業種の1株当たり年配当金額+(評価会社の1株当たり利益金額(注1))÷(類似業種の1株当たり利益金額)×3+(評価会社の1株当たり簿価純資産額(注1))÷(類似業種の1株当たり簿価純資産額÷5}×斟酌率(注2)×(1株当たりの資本金等の額)÷50円

(注1) 1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額。
(注2) 斟酌率は、大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5となります。

(二) 類似業種批准価額のポイント
(ⅰ)批准する3要素は「配当」「利益」「純資産」です。
 批准する類似業種に比べて、自社の3要素が高い場合には、結果として自社株の評価額も高くなるようです。また、業種目は、評価会社の主たる業種目により判定することになります。複数の業種目を兼業している場合には、単独の業種目の取引金額が50%を超える業種目により判定することになります。

(ⅱ)3要素は、原則として直前期・直前々期の決算数値を使用します。
 決算期をまたぐと批准要素が変わり、株価も変わります。つまり、決算での業績が株価に影響することに留意しなければならないでしょう。

(ⅲ)3要素のうち「利益」は3倍に加重して批准されます。
 3要素のうち「利益」は3倍に加重して批准されますので、「利益」の株価に与える影響が最も大きいと考えられます。

(三) 計算例
 類似業種批准価額を計算してみましょう。

【会社の概要】
業種:卸売業
会社規模:中会社の中
発行済株数:2000株
1株あたりの資本金等の額:50000円

【類似業種批准価額を計算するための値】
[本郷商事(株)]
1株あたりの年配当額:4円
1株あたりの年利益金額:60円
1株あたりの純資産額:600円

[類似業種(卸売業)]
1株あたりの年配当額:2円
1株あたりの年利益金額:20円
1株あたりの純資産額:150円
株価:150円

[計算式]
150円×{(4円÷2円)+(60円÷20円)×3+(600円÷150円}×0.6×(50000円÷50円)=270000円

∴類似業種批准価額は、270000円となります!