ぺり子さんが書き溜める所

ぺり子さんが書き溜める所

読んで字のごとく。
主に遙3とAPHとAPH+遙3。
ブログネタで書くことも多し。
眠い時に書いたりしてるのでけっこう駄文です

二次創作を中心にやって行きたいと思います。 Twitterもやってますので、興味ある方はID聞いてください!
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僕たちはアクゼリュスへ足を踏み入れる
そこは鉱山の街と呼ばれているだけあって沢山の男の人が働いて汗を流していた
でも、見るからに空気が悪くて視界もあまり良くない
空を見上げると瘴気なのか砂埃なのかはたまたその両方かは分からないけど、空が霞んでいた。
ロトゼタシアだって空気の綺麗な場所しか無いなんて事はないけどそれでもこれほど酷い街は見たことが無い

「こ……これは…」
「想像以上ですね……」
「座り込んでいる人もいる…やっぱり空気が悪いからかな…」
「えぇ、恐らくはそうでしょう」

酷い空気だと思っていたのは僕だけでは無いみたいでルークもジェイドさんも思わず絶句していた。
ジェイドさんに軽く説明を求めればジェイドさんもそれに答えてくれた
でもさっきのフォミクリー云々を聞いたらきっとはぐらかされるんだろうなぁ…なんて僕は関係のない事を思っていると、ナタリアが倒れ込んでいた人のところへ駆け寄る

「お、おいナタリア。汚ねぇからやめろよ。感染るかもしれないぞ」
「……何が汚いの?何が感染るの?馬鹿な事をおっしゃらないで!!」

駆け寄ったナタリアを制止しようとするルークにナタリアが叫ぶように非難する。
そんなナタリアに僕は内心でため息をつく

「ルークの言い方は確かに問題あると思うけど、まるっきり間違っている訳じゃないよ」
「それはどういうことですの!?イレブン!!」
「ナタリアはその倒れている人がどうして倒れているか完全に分かる?本当に何らかの病気じゃないって100%言い切れるのかな?」

とナタリアに訊ねればナタリアは言葉を詰まらせる
まぁルークがそこまで考えているわけではないと思うけど
そんなナタリアに僕はさらに言葉を続ける

「救助する事は勿論大切だし、ナタリアの『困っている人をすぐに助けたい』って思う気持ちはとても良いモノだと思うけど、まずは僕たち救助する側の安全を確保してから救助をするのが基本。僕たちが倒れたり体調悪くしたり動けなくなったら元も子もないんだからさ。だから僕たちが最初にするべき事は状況の正確な把握とそれをする為の情報収集。それをしてから救助を開始しても遅くはないと思うけどなぁ」
「でも、少しでも早い方が…!」
「それも間違いではないけどね。ナタリアは救助したいって気持ちが先行し過ぎているんじゃない?勿論その気持ち自体はとても良い事なんだけど、気持ちだけで出来るほど救助活動って甘いものでも簡単なものでもないと思うよ」

そう僕が言えばそれを聞いていたのかジェイドさんが感心したように手を叩く。
久しぶりに聞いたなこれ

「いやぁよく分かっていますねぇ、イレブン。その通りです。救助人員が限られている以上効率よく動かねばなりません。その為には我々の安全確保と情報収集及び把握をしっかりしなければ助けられる人間も助けられなくなる……本当…こんな状況でなければ是非マルクト帝国軍に勧誘したいくらいですよ」

うん、救助の場でリクルート活動はやめてもらえないかな?というかマルクト軍に入ったら一体僕はロトゼタシアにいつ帰れるのさ
そう話していると現場監督と名乗る人が話しかけてきた。
なんでもヴァンさんはもう到着していて僕達のことはヴァンさんが既に連絡をしてくれていたみたい
そしてそのヴァンさん本人は坑道の奥で救助活動をしているとのこと
そして今僕たちがいる場所はこれでもマシな方で坑道の奥はもっと酷いことになっているんだとか
その為少し辺りを見回った後僕たちも坑道の奥へ向かう事にした

治癒術を使うのはティアとナタリアに任せて僕はゴミを運んだり荷物を運んだりしながら辺りの様子を見回って怪我人が居ないかを見回る
ホイミ程度で治せるレベルの怪我だったらそのまま僕が治療してそのレベルを越えていたらティアやナタリアに知らせて治癒術をかけてもらう

「ただ…治癒呪文だって限界があるし…このままじゃジリ貧だよ…」
「おいおい、イレブンまで元気なくなってるのか?」
「こんなに人数が多い上にここまで被害が甚大だとジリ貧まっしぐらな状況だなって思っただけ。というか僕まで…ってどう言う意味?」

ガイの言葉に僕は首を傾げて意味を問えばなんでもルークの事らしい
救助に手一杯でルークまで気が回らなかったけどルーク大丈夫なのかなぁ…
ロトゼタシアで世界崩壊を経験してイシの村…最後の砦での救助活動を経験した僕ですら参ってきている状況にルークが耐えられるとはとても思えない

「親善大使殿はどうやらアテにならないようですね」
「人手が足りないのに〜もぉ〜」
「仕方ないっちゃ仕方ないけどね…ジェイドさんやアニスやティアは軍人さんだから救助活動の経験はあるだろうし僕も全くない訳じゃない、だからある程度対応は出来るけど…僕もこの凄惨な状況に尻込みをしているくらいなんだから全く経験がないどころか最近までお屋敷の外に出たことすらなかったルークにテキパキ判断して動けとか割と無茶な要求なようにも思えるけど…」
「確かになぁ…」
「ルークもきっと数日すれば王族として、親善大使としてその役を果たしてくれるでしょう。それまでは私たちだけでも頑張りましょう。苦しんでいる民のために」

親善大使として…ってなんだろう…
親善大使って謂わばイメージキャラクターだから何かの特別な権限があるって訳じゃないんだよね
イメージキャラクターが思いっきりイメージ損なう事してたけど…とんでもない国際問題沙汰になりそうになったけど…僕も匙をぶん投げそうになったけど…

「しかし、このままこの街に長期滞在すると私たちも瘴気に侵されてしまいます。使えない人間は頭数に入れない方が賢明だと思いますよ。迅速な行動の弊害になりますから」

とジェイドさんが僕を見てくる。
えっと、どう言う意味かな?と僕はジェイドさんに対して笑顔で首を傾げればジェイドさんは言葉を続けた

「この状況でルークに構っている暇はありません、という事です。分かっていますね?イレブン」
「うわっ、きっついなー大佐」
「事実なのだから仕方ありません。イレブン単体ならば救助活動において十分にアテに出来る程度の戦力があります。その貴重なイレブンのリソースをアテに出来ないルークに割かれる訳にはいきません」

つまりルークに構うなとジェイドさんは言っている訳だ
救助をほっぽってルークを構いに行くつもりは無いけどそれでもそうやってルークを除け者にするのもなんか違う気がする
そうやって除け者にするからルークだってやる気が出ないんじゃないのかな…
除け者にされて蚊帳の外になって「よーし!頑張るぞ!」ってなる人なんて居ないじゃん

「ルーク、大丈夫?」
「あ?何がだよ」
「ここ空気が良くないし長い間歩き詰めだったし疲れたり体調悪くなったりしていない?」
「大丈夫だよ!お前こそ大丈夫なのかよ。お前だって歩き詰めなのは変わんねぇだろ。しかもあちこちバタバタ走り回ってるし…」
「僕は身体を動かす事は慣れているから大丈夫だよ。呪文を使ったり特技を使ったりするようなTPを消費する行動じゃない事関しては僕結構こう見えて体力あるんだ」

そう説明するとルークは「ふーん…」と相槌を打つ
そんな会話をしているとティアが神託の盾騎士団の人に話しかけられた
なんでも第七譜石というものらしき石?が見つかったらしい。
イオンの提言もありティアがその場から離れる事になる

坑道の奥に進むとさらに空気が悪くなって僕も思わず手で口を覆ってしまう。
そしてその場にいた全員が倒れている人々に駆け寄る
僕もそれに続こうとしたけど立ち尽くすルークを見て大丈夫なのかとルークの方に歩み寄ればルークが疼くまる
またあの頭痛と幻聴なのかな

「ルークまた頭痛!?大丈夫…!?」
「……っ、収まった…か?」
「ここのところ頻発しているね…何かあるのかな…」
「わっかんねぇ…俺だけなんもする事がねぇし師匠…どこに居んのかな…」

そう言うルークに僕は答えることが出来ない
ルークが出来る事の答えを僕が持ち合わせている訳じゃないしヴァンさんが何処にいるかも分からない

「なぁイレブン、お前はわからねぇのか?」
「ヴァンさんが何処にいるか…ってこと?」
「あぁ…」
「そうだね…僕だってヴァンさんとアクゼリュスの何処そこで待ち合わせって聞いた訳じゃないから確実な答えは持っていないんだけど…さっきの現場監督さんって人は確か『坑道の奥に先遣隊と一緒に入って行った』って言っていたよね…」

つまり先遣隊と出会うことが出来ればヴァンさんに近付いたって事になる。
と言う事を説明すればルークは納得したみたい

「つまり先遣隊ってやつを探せば良いんだな!」
「多分その先遣隊は神託の盾騎士団の人だろうからすぐに分かると思う」
「早く師匠を見つけよう。師匠さえ見付かれば瘴気を消すことが出来るんだ」

と言うルークに僕は眉を寄せる
どういうこと?僕だって瘴気に対して知識がある訳じゃないけど瘴気って毒ガスみたいなものだよね
それを消すって吹き飛ばすって事?それとも中和するって事なの?

「先遣隊ってやつも師匠も見つからねぇ…師匠は何処にいるんだよ。なぁイレブン」
「現場監督さんの情報しかないからなぁ…そこから推察するしかないんけど…坑道って結構広いけど見た感じ一本道じゃん?だからもしどこかで一度引き返していればすれ違っていると思うんだよね…それが無いってことはもっと奥…なのかもしれない」
「ルーク、とにかく今は町の人を助けることを考えましょう」
「師匠だってこの街で救助活動してるはずだろ?師匠なら俺がどうすれば良いか教えてくれる。俺は師匠を探したいんだ!」

救助活動をそっちのけでヴァンさんを探そうとするルークにイオンが苦言を優しく呈する
僕の方もルークにヴァンさんの居場所聞かれても推測で答えるしかなくなるしね…

「でもルーク、町の人たちは一刻も早い救助を求めているはずです。ルークの親善大使としての…」
「あ、じゃあさ、ここの何処かに居るのは確定なんだし、救助をしながらヴァンさんを捜すってのはどうかな?流石に救助そっちのけで捜すってなると元々の目的なんだったんだってなるし」
「あー…それなら…まぁ……」

なんとか折衷案を出して無理矢理にでもルークを納得させる。

「すみません…イレブン…」
「ううん、大丈夫!さっさと合流して情報共有する事も大切だし」

そう話しているとジェイドさんが上の様子がおかしいから見てくると言って坑道の来た道を戻って行った。
そして3人で奥へ進めばまたルークがしゃがみ込むがすぐに立ち上がってヴァンさんのいる所へ向かう

「ようやく来たか」
「師匠!こんなところにいたのか!他の先遣隊は?」
「別の場所に待機させている。導師イオン、この扉を開けていただけますか」

そうヴァンさんに言われればイオンはザオ遺跡にもあったような派手派手原色扉の前に近付く。
僕なんというか…ヴァンさんが少し苦手なんだよね
なんかこっちを射抜くと言うか見透かすというか心の奥がざわざわする感じ

「君はイレブンと言ったかな、少し疲れが顔に出ているみたいだが…」
「いえ、大丈夫です」

ヴァンさんが僕を気遣うようにそう言ってくれるが嫌な予感がしたため僕はきっぱりと大丈夫と言って少し距離を取る

「イレブン、師匠が心配してくれてんだぞ」
「あ…ごめんなさい……でも、本当に平気だから」
「ヴァン、これはダアト式封咒…ではここもセフィロトですね。ここを開けても意味がないのでは?」

扉の前にいたイオンが扉の形状なのか何かの術式かは分からないけどそれを見て判断した結果を述べる

「いいえ、このアクゼリュスを再生するために必要なのですよ」
「イオン!頼むよ。師匠の言う通りにしていれば大丈夫だからさ」

そう言うルークに僕は怪訝な顔をする。
ヴァンさんの言うことが信じられないというわけじゃない。
そもそも僕はセフィロトだの瘴気だのについては全く分からない知らないのだから判断が出来かねる
僕が引っ掛かるのはルークの言う『師匠の言う通りにしていれば』という言葉
誰某の言う通りにしていれば万事OKなんて事はない
人間だもの、間違いや思い違いなんて誰だってある
だから誰某が言っていたから大丈夫なんて事はそれこそ絶対にないわけで
色々な情報を鑑みて自分の頭で考えて考えた結果この人の言う事は正しいって判断するのは良いと思うけど何も考えないでヴァンさんが言ってる事に従っていれば大丈夫だなんて、そんなのはただの思考停止他ならない

「ルーク、それはルークが考えた結果?」
「どういうことだよ!?イレブンは師匠の事を信じられないっていうのか!?」
「違うよ!色々自分で考えたり今までの情報を整理したりした結果ヴァンさんを信じるっていうのは良いと思う…ルーク自身がきちんと考えてヴァンさんを信じるって結果を出したって事だよね?」
「そうだよ!ヴァン師匠が言うことは正しいんだ!今までだってそうだったんだからな!」

ルークにとってのヴァンさんは謂わば泣所であり逆鱗
ヴァンさんを出せば素直に聞き入れてくれるけどそこにメスを入れるような発言をすれば思いっきり反発してくる
語気を荒げて何かを言われることなんて今までほとんどなかった僕はルークの剣幕に萎縮してしまう
カミュもベロニカもマルティナも他の仲間だってみんな僕にそんな風に言ってくる人なんて居なかった
具体的にどのくらい時間が経っているかは分からないけどカミュ達に早く会いたい
カミュだったら絶対僕に怒鳴ったりしないもん…
と僕が落ち込んでホームシックになっていればニズに思いっきり横っ面を引っ叩かれる

『シッカリシロ。貴様ガソノヨウニナッテドウスル?ココデドレダケ嘆コウトモ、ロトゼタシアニ帰ル事ハ出来ナイ』

ニズのその言葉に僕はハッとした
そうだ、僕がここでロトゼタシアに帰りたいカミュに会いたいなんて言っても帰れる訳がないし目の前の問題も解決しない
それに僕はどんな事があってもルークを支えるって決めたんだ
勇者が邪神に諭されるなんてロトゼタシアじゃ天地がひっくり返ってもあり得ない話だなと内心で苦笑すればニズは『全クダ…手ノカカル…』とボヤいていた

そうしている間に扉が開かれヴァンさんとイオンが入っていき僕たちもそれに続いた、

「へー…あの中ってこうなっていたんだ…」
「えぇ、そうです。ここは…ザオ遺跡やシュレーの丘と同じ…」

とイオンが何かを見つめて言っている。
この場所はよく分かんないけどなんか似たようなパターンとかあるのかな。
ヴァンに呼ばれルークはそのままヴァンについていく

「俺はこれから英雄になるんだ。アッシュなんかに命令されてたまるか」
「ルークみんなと離れて行動して良いのですか?」
「師匠が居るじゃねぇか!それにこれからアクゼリュスを救うんだ。みんなも文句ねぇだろうよ」

また師匠って…
ヴァンさんが居たらなんでも良いって何も考えてないじゃん!いやまぁそうなんだろうなとは思ったけど!

「どういう事ですか?」
「うん、僕も気になる。瘴気を消そうとしているのは分かるけど、どういう仕組みを使って瘴気を消そうとしているの?吹き飛ばす?それとも中和する?瘴気って地中から湧き出しているんだよね?それをどうにかする方法あるの?」
「師匠について行けば分かるさ」

もう説明にヴァンさんの名前使うの禁止したい
ここまで思考停止も来ると清々しいんだけど
よしんばさっきの僕の推測の瘴気を吹き飛ばすか中和するかにしても地中から無限ループで湧き出してくるものなんだからまたしばらくすると元の木阿弥になりそうなものなんだけど。

しばらく進んでいくと何かの超巨大なものが見えて来た

「あ、これ知ってる。これアレだよね?楽器とか調律する…」
「音叉の事ですね。あれはセフィロトツリーというものですよ」

と、イオンが説明してくれた
へー、セフィロトってあんな感じなんだ
なんか下手に名前が某巨大企業の思い出にならない系伝説のソルジャーと似ているからなんかそっちにイメージが引っ張られるんだよね

「さぁルーク。あの音機関ーーパッセージリングまで降りて、瘴気を中和するのだ」
「あ、中和なんだ」
「中和なんだ、とは?」
「ルークが瘴気を消すって言うからそれは中和なの?吹き飛ばすの?どういう原理で消すつもりなの?って聞いていたんです」

とヴァンさんに説明すればヴァンさんは成る程、と頷く
この人は何を考えているのか全く分からない
普通の人ならただ納得しただけなんだろうって読み取る事ができるけどこの人は底知れぬ何かを感じる

「どういうことです?中和なんて出来るんですか?」
「それが出来るんだ。俺は選ばれた英雄だからな」

それが出来るってどうやってって話なんだけど。
中和って酸性のものとアルカリ性のものを混ぜて中性にして無害にするものだよね?
瘴気に何を混ぜて中和する気なの?

「よし、そのまま集中しろ」
「………」
「さぁ……『愚かなレプリカルーク』力を解放するのだ!」

ヴァンさんがそう言った瞬間僕とイオンとミュウは突然吹き飛ばされる。
僕はなんとか受身を取ったけどイオンはそのまま壁に叩きつけられる

「イオン!!大丈夫!!?」

ミュウは普段からルークに蹴り飛ばされたり吹っ飛ばされたりしているから大丈夫だろうけどイオンはそんな事ない。

「な……なんだ…!?俺の中から何かが…!?」

明らかに不味い状況だと僕は勇者のつるぎ真を抜いてそのままルークの方へ走る。
勇者のつるぎ真は確率にはなるけど相手の効果を打ち消す能力がある。
なんとかこれでルークに掛かっているバフ的なものが解除されれば…と思ったがヴァンさんに吹き飛ばされた。
立ちあがろうとした瞬間ルークは座り込み大きな地震のような揺れが襲う。

「……ようやく役に立ってくれたな。レプリカ」
「せんせ……い?」
「ヴァンさん!!あなた、ルークに何をしたんですか!!?ルーク!立って!!!ここ崩れてる!!このままじゃ僕たち生き埋めになっちゃう!!!」

そのまま急いでルークに駆け寄って必死で叫びながら僕はルークを立ち上がらせようとする。
倒れているイオンを背負ってルークまで引きずっていくなんて僕の体格じゃ不可能だ
ルークには自分で立って歩いてもらわなきゃ行けない

「くそっ!間に合わなかった!」

とアッシュが現れる
ヴァンさんはアッシュが現れる事は想定外だったのか焦りを隠せないようだ。
そして大きな鳥のモンスターを呼んでアッシュを捕まえる。
そしてティアやガイ、ジェイドさんたちがその場に駆けつけてくれた。
ガイやジェイドさんが居れば気を失っているイオンを背負うことは容易だ

「ジェイドさん!!良かった…イオンはこれで助けられる…ルーク!!早く!立ち上がって!!」

イオンがジェイドさんによって背負われた事を確認した僕はなんとかルークを背負おうとしてルークの腕を自分の肩に回して起きあがろうとするけど僕よりも体格が良いルークを背負うなんてただでさえ簡単には出来ない上にこの激しい揺れでバランスを崩して転倒したところにガイが駆け付けてくれた

「イレブン!!大丈夫だ…よく頑張ってくれた。君は早くティアのそばへ!」

ガイの言葉に甘えて僕はルークをガイに任せてティアのそばへ駆け寄った
それから程なくしてティアが譜歌を歌った。
その瞬間辺りが崩れていき気が付いた頃には辺り真っ暗空気最悪なところに僕たちはいた

「……くそっ!一体何が起きたってんだよ…!アクゼリュスの瘴気を消そうとして超振動を使ったら坑道が崩れて…それで…?くっそ!訳わかんネェ」
「ルーク、落ち着いて…多分ここに居る人、誰も訳分かっていないから…」
「イレブン!お前なら分かるんじゃねぇのか!?」

そう言ってルークは僕の肩を掴むけど、僕はそもそもロトゼタシア人なんだし分かるわけがない。
静かに首を横に振ってごめんなさい、と呟く
今までは断片的にでも情報があったからそこから推測は出来たけど今この現状に対する情報は全くないに等しい
情報が全くない状況では推測も出来たものじゃない

「う……う……」
「誰か居るわ!!」

ティアの言葉に振り向けばそこには10歳かそれより幼い子供がいた。
その子を助けようとナタリアが駆け寄ろうとしたところをティアが腕を掴んで制止する

「駄目よ!この泥の海は瘴気を含んだ底なしの海。迂闊に入れば助からないわ」
「ではあの子をどうしますの!?」
「ここから治癒術をかけましょう。届くかも知れないわ」

ティアとナタリアが治癒術をかけようとした時その子が泥の海に沈んで行ってしまった。
そんなショッキングな場面に僕たちは言葉を失う
世界崩壊した直後のロトゼタシアのような見た目ではあるけど、それとは桁違いに凄惨な状況だ

「ここも壊れちゃうの!?」
「今すぐにどうこうはないかもしれないけど…でも…時間の問題だと思う…」
「タルタロスに行きましょう。緊急用の浮標が作動してこの泥の上でも持ちこたえています」

うわー…タルタロス凄……
めちゃくちゃ高性能じゃんあの陸艦
水陸両用なんだよね、あれ。
水陸泥じゃん。
タルタロスへ移動してジェイドさんがタルタロスの状況を分析したところなんとか動きそうとのことだった

「魔界にはユリアシティという街があるんです。多分ここから西になります。とにかくそこを目指しましょう」
「あ、賛成!ずっとここに居るわけにもいかないし街があるんならさっさと街に入った方がいいもん」
「えぇその通りですね。それにしても詳しいんですね。この場を離れたらご説明をお願いしますよ」

行き先とその方向が決まったことで僕たちは西にあるというユリアシティという街へ向かうことになった。

「先ほどのあの子……助けられませんでしたわ…」
「……残念ですがあの時点ではもうどうしようもありませんでした…僕たちがもう少し早くあの子を発見出来ていれば何か方法があったのかもしれませんが」
「兄さんを止めることさえ出来ていれば…あの子もアクゼリュスの人たちも犠牲にならずに済んだのに…」

暗ッッ!!
世界崩壊直後のイシの村でももうちょっとマシだったよ…なんて思うけどあんな場面を見て明るく行くとか無理だよね…

「助けられなかったのは残念だったけど…過去を悔いたって状況は何も変わらないよ…」
「えぇ…そうね……」
「なんだよ!訳わかんねーよ!俺と師匠は瘴気を消そうとしただけなんだ!消そうとしただけなんだ…」
「ルーク、今はその話をしていないから、ね?やっちゃったこと過去の行動はどれだけ悔いたって変わらないし状況が好転することはないんだよ」
「えぇ、イレブンの言う通りです。それよりもヴァンの意図が気になります。何故彼はこのような事を」

そうジェイドさんが言えばイオンもわからないと言う。
イオン曰くアクゼリュスを崩落させることだけがあの人の全部の意図じゃないみたい
あくまで推測みたいだけど

「これ以上の被害は絶対に食い止めなければなりませんわ」
「うん…!そうだね…!起きている事を嘆くよりもこれ以上悪くならないように動く方が何倍も建設的だし」
「そうね。今度こそ兄を…兄さんを止めなければ」

とにかく何をするにも僕たちが倒れてしまっては元も子もないからまずはユリアシティってところに辿り着く所からだよね

「ゔーーーん…」
「イレブン、どうした?体調でも悪いのか?」
「そういうわけじゃないんだけど…景色悪いなぁって思って…」

こんな状況だからこそ元気よく行きたいんだけど、周りは薄暗いし何時か分かんないし空気悪いし下は泥でなんか汚いし…

「確かに行けども行けども何もない……ここは地下なのか?」
「……ある意味ではね。あなたたちの住む場所はここでは外郭大地と呼ばれているの。この魔界から伸びるセフィロトツリーという柱に支えられている空中大地なのよ」

空中大地…!?
某思い出にならない系伝説のソルジャーが在籍をしていた巨大企業が本社を構えている街みたいだなぁ
セフィロトって名前もアレだし…と僕の脳裏にはとんでもない絵面が思い浮かぶけどなんとか脳内からその絵面を追い出す

「意味が…分かりませんわ」
「昔、外郭大地はこの魔界にあったの」
「信じられない…」
「うん…普通に考えたらこんな絶望しかない場所に陸地なんてあったらさっきみたいに沈んじゃいそうだけど…」
「2000年前オールドラントを原因不明の瘴気が包んで大地が汚染され始めた。この時ユリアが七つの預言を詠んで滅亡から逃れ、繁栄するための道筋を発見したの」

2000年前っていったら途方もない時間
ロトゼタシアで言えばローシュ様の時代のさらに1000年前
そんな昔の事がシッカリとした話として残っているなんて凄いなぁ…ロトゼタシアで2000年前に何があったかなんて分かんないもん
ニズなら知ってるかも知れないけど

『知ラン。ソモソモ我ハロトゼタシアヲ征服セシメント、ロトゼタシア外カラ来タ存在ダ。来ル前ノ事ナド知ル由モ無イ』

あ…そうなんだ…
とニズと心の中で会話している間も話は進んでいてイオンも説明してくれる

「ユリアは預言を元に地殻をセフィロトで浮上させる計画を発案しました」
「それが外郭大地の始まり…か。途方もない話だな」
「そして預言に依存する始まり…だったのかもね…それが」

と僕がガイの言葉に続けて呟く
世界の滅亡の危機っていう大問題をそのユリアって人が詠んだ預言で回避出来たっていう大きな成功体験があればそりゃあそれを有り難がって縋りたくもなるかもしれない

「えぇ、この話を知っているのはローレライ教団の詠師職以上と魔界出身者だけです」
「じゃあティアは魔界の……?」
「そういう事になりそうだよね…ティアの階級を僕は知らないけど……ザオ遺跡を出た時にセフィロトの事を聞いた時機密って言ったのは…これ…?」

そりゃあ自分の住んでいる地面の下にこんなこの世の地獄みたいな世界が広がっているなんて知ったら大なり小なり皆ショックを受けるだろうし世界の混乱を避けるには伏せておいた方が良いのかも…
そしてその機密を今回教えてくれたのはこれが未曾有の緊急事態だから、なんだろう

「えぇ…とにかく僕たちは崩落した。助かったのはティアの譜歌のおかげですね」
「何故こんな事になったんです?話を聞く限りアクゼリュスは柱に支えられていたんでしょう?」
「確かに…今までの話を聞いているとそう…だよね。柱が足りない欠陥住宅みたいな感じだったら崩壊する事もあるかも知れないけど、それみたいになったとしても何かしら前兆があるはずだし…そのセフィロトツリーっていうのもシロアリの食害みたいな事が起こるのかな?」

もしそんな感じで柱の中身がスッカスカになって支えきれなくなって崩落はアリ筋ではあるよね
アリだけに……って内心で言ったらニズに思いっきりはたかれた。めちゃくちゃ痛い

「それは…柱が消滅したからです」
「消滅していたの!?あれ!!」

ルークからなんだか光が出ていたのは見ていたけどあのセフィロトツリーが無くなっていたんだ…それどころじゃなくて全然見ていなかったよあの巨大音叉まで
あ、イオンが僕を可哀想な人を見るような目で見ている…

「どうしてですか…?」

とアニスが聞けば皆一斉にルークの方を見る
そのみんなからの視線にルークは心地が悪くなったのか(そりゃあなるよね)

「お、俺は知らないぞ!俺はただ瘴気を中和しようとしただけだ!あの場所で超振動を起こせば瘴気が消えるって言われて……!」
「ルーク…中和ってどういうものか…知っている?」
「はぁ!?どういう事だよ!?」
「中和ってね、酸性のものとアルカリ性のものを混ぜて中性っていう無害な性質に変えることをいうんだ。ちょっと違うけど、分かりやすく例えると熱湯と冷たいお水を混ぜてちょうどいい湯加減にするって感じかな…」
「何が言いたいんだよ!?イレブン!!」
「中和したところで物質そのものが消えるわけじゃないって事だよ。熱湯と冷たいお水を混ぜたってその場から水は無くならないでしょ?」

つまり瘴気を中和して瘴気が消えるって説明自体がおかしいという事を僕の肩を乱暴に掴んで声を荒げながら説明を求めるルークに説明する
瘴気を中和して無害な物質に変えるという説明だったらおかしくはないけど

「そう。つまりあなたは兄に騙されたのよ。そしてアクゼリュスを支える柱を消してしまった」
「そんな!そんなはずは…!」

ティアのトドメのような言葉にルークは狼狽える
今まで心から信頼していた相手から騙されて裏切られるという経験は耐え難い苦痛があるものだもん
信じたくない気持ちも分かる

「ヴァンはあなたにパッセージリングの傍へ行くように命じましたよね。柱はパッセージリングが作り出している…だからティアの言う通りでしょう」
「あぁ…なるほど…柱そのものを消したんじゃなくって柱を作り出すものを消したって事なんだ…」
「そういうことです。僕が迂闊でした…ヴァンがルークにそんなことをさせようとしていたなんて……」
「……せめてルークには事前に相談して欲しかったですね…仮に瘴気を中和する事が可能だったとしても住民を避難させてからでも良かったはずですし……今となっては言っても仕方のない事かもしれませんが」
「そうですわね…アクゼリュスは…消滅しましたわ。何千という人間が、一瞬で……」

いやまぁ…結果論的にはそうなんだけどさ
確かにロトゼタシア人の僕よりもジェイドさんやティアやアニスの方が世界の仕組みについて圧倒的に詳しいから一言相談でもしていたら誰かは『あれ?その理論おかしくない?』ってなりそうなものだとは思うけど!思うけどさ!!
出会い頭初っ端からルークに喧嘩売ってた人が言うセリフ!?それ!!?
ほぼほぼ僕1人でルークのフォローしてたじゃん!!僕にルークのフォロー押し付けておいて挙句僕らを置いてけぼりにしてどのツラ下げて『事前に相談を〜』なわけ!!?
ルークの態度も良くなかったことは否定しないけど、それを差し引いてもなんなの!?と僕は苦虫を噛み潰したような表情をしているんだろうなって自分でも分かるくらい顔を顰める

「お……俺が悪いってのか…?」

その言葉にルーク以外の人達がルークを無言で見る
そんな様子にルークはまた焦りを見せた。

「ルーク。この状況下では誰それが悪いなんて言う問題じゃないから、落ち着いて…?」

だから僕はルークを落ち着かせるためにそう優しく諭すように言ったけど全く効果は無かったみたいでルークは焦りを隠さないまま続ける

「……俺は……俺は悪くねぇぞ」
「だから、誰が悪いとかそういう話じゃないって…」
「だって、師匠が言ったんだ……そうだ、師匠がやらって!」

僕の話を聞いてー!!?
僕の話聞いてるのかな!?聞いていないよね!?
1ミリも聞いていないよね!?僕の話!!
僕、もう答え言ってるじゃん!!提示してるじゃん!誰が悪いとかそんな話してないって言ってるじゃん!
落ち着いてよもう!
あとヴァンさんのことはもう良いから!!

「こんな事になるなんて誰も教えてくれなかった!誰も教えてくんなかっただろっ!」
「だからルーク落ち着いてってば」
「俺は悪くねぇっ!俺は悪くねぇっ!!」
「だから!!落ち着けって言ってるでしょ!!」

声を荒げた事自体はあったけど今までよりもずっと大きな声でそれこそルークの悲痛な叫びをかき消すくらいの大声で叫ぶように言えばその場にいた全員が驚いて目を見開いていた

「こんな状況になって混乱するのは分かる!取り乱すのも分かるよ!!分かるけど!ここで責任のなすりつけあいをしてたって誰が悪いだなんだ言ったってなんの解決もしないし、事態も良くならないの!!僕たちは前に進むしかないんだ!!」
「そう言ったってどうすりゃ良いんだよ!」
「分からないよ!僕だって分からない!!分かるわけないじゃん!!僕は全知全能の神様でも全てを知ってる大賢者でもないんだから!!だから解決法を探す為に前に進むんでしょ!!?そうやって誰かに責任転嫁して解決法見付かる!?見付からないよね!?」

僕の中の今までの押さえ付けていたものが溢れ出すようにして湧き出てきたものをルークに思いっきりぶつける
こんな無遠慮に思いっきりぶつけるなんて事今まで無かったからなのか思わずルークも言葉を失っているみたいだった

「大丈夫…!今は分からなくても…絶対解決出来る…!前に進んでさえいればいつかは何かが変わる…僕だって似たような状況を引き起こした事がある…たくさんの大切なものを失った事がある…!それでも…それでも最後には何とかなったんだ…!だから…」

諦めないで、と言おうとしたところで僕の記憶はそこで途切れてしまった。


そして僕が次に目を覚ました時には知らない所にいた
ここ、どこだろうと辺りをキョロキョロと見回しているとティアが駆け寄ってくる

「イレブン…目を覚ましたのね…!」
「う、うん…」

うわー…僕あの状況下でめちゃくちゃ迷惑かけちゃってるじゃん…
我慢出来なくなって怒って叫んで挙句気絶して運んでもらうって迷惑にも程があるでしょ

「疲労とストレスだそうよ…私たちイレブンに無理をさせてしまっていたのね…ごめんなさい…」
「え、あ、謝らないで…?僕こそ…あんな事になってしまって…みんなに迷惑を掛けて…」

謝るティアに僕は逆に迷惑をかけてしまったと謝罪すれば今度はティアが慌ててそれを否定する

「め、迷惑だなんて…!そんな…何もわからないイレブンにルークの事を押し付けて先走って無理をさせてその結果あんな事になったんだもの…むしろ迷惑をかけたのは私たちの方だわ…」
「んー…じゃあ…間をとって…お互い様って事で」

とこのまま押し問答に入りそうだったから苦笑しながらそう提案すればティアは控えめに笑顔を作って「そうね…そうしましょう」と納得してくれた

「あ、そうだ。ルークは?」

とティアに聞けばティアは僕が気を失ってからの顛末を端的に教えてくれた。
結論としてはルークは今ティアの部屋で寝ているらしい
ここはユリアシティみたいでこの街に入った時にアッシュが後ろから来て実はルークはアッシュのレプリカって言うコピーみたいなものでそれを明かされたルークがその事実を受け入れられずにアッシュに戦いを挑んで返り討ちにされてまだ眠っているみたい

「まぁ…そりゃあ…受け入れられないよね…そんな…突然お前は俺のコピーだなんて言われて…」
「えぇ…」

僕だって同じ状況になったらはいそうですかなんて素直に受け止められる気がしない
生き別れの双子の兄弟なんですって言われるのも大概受け入れ難いのに、コピー人間ですなんて言われて平静で居られる方がどうかしてる
ロトゼタシアには人間をコピーする技術なんてものがないから成り立たない仮定ではあるんだけど

そしてジェイドさん達…というか僕とティアとルークとミュウ以外の全員がアッシュと一緒に魔界からタルタロスで脱出したということも教えてくれた

「それで…イレブンはどうするの?」
「どうする…とは?ここで永住するかどうかって?」
「ち、違うわ…!イレブンがそう望むのならお祖父様に相談するけど…そうじゃなくって!イレブンは外郭大地に戻らないの?ルークや私に付き合う必要はないのよ?」

あ、望んだら相談してくれるんだ…
ティアって優しいよね。ちょっと…不器用というか軍人然とした振る舞いが目立っちゃうだけで
ティアの言葉に僕は静かに首を横に振る

「ルークを待ってる。ルークはあんなだけど…それでも何処の馬の骨かも分からない身寄りのない僕を友人として家族として受け入れてくれたんだもん。そんなルークを見捨てるなんて出来ないよ」
「そう…いつ目覚めるかは分からないわよ?」
「うん。それでも待ってる。大切な友達だもん。待つくらいなんて事ないよ。待っている間にでもこの世界の事お勉強したいし…僕はこの世界の事何も知らなさすぎるから…だから悲劇が起きてしまった…」
「そう。イレブンは強いのね。私の分かる範囲で良ければ付き合うわ」
「わぁ、ほんと?とても嬉しい!ありがとう」

そう言って僕はまずこの世界の文字を習得する事から始めなきゃいけないなとティアに相談する事にした
文字さえ分かっていれば自分から情報を取りに行こうと思えば時間さえあれば取りに行くことができる
文字が分からないというのはとんでもなくディスアドバンテージだとこの世界に来て痛感してしまった
ルークが目を覚ますまでに頑張って知識を蓄えるぞと僕は僕なりの一歩を進み始めた。