田舎の町にも、何年かに一度、サーカス団がやってきた。土手の近くの公園に縞模様のテントを張る頃から、町の人はもう心待ちにしている。動物の檻もある。学校帰りに寄り道をする。小屋からピエロが出て来ておどけてみせるときもある。身近でみると、おもしろいより怖いが先きの化粧である。
 大人の一番人気は、オートバイサーカス。大きな球形の鉄柵?の中を天井まで走り抜ける。父は大型のオートバイに乗っていたから、ことさら楽しみで、それを見たさに私たちを連れて行ったようでもある。父が小さな弟を肩車している姿が目に浮かぶ。母は獣の匂いがイヤだと、全く関心を示さなかったが。

 興行はひとつきほどもあっただろうか。
 この間、サーカス団の子どもたちは、「転校生」として私たちの学校にやってきた。一度、同じクラスになった。彼は、勉強のほうは追いつかなかったが、見事なバック転で、すぐに人気者になった。けれども名前を覚える前に、もうよそへと移っていった。子ども心にも、漠とした物悲しさが残った。

 なぜだか、春に近づくと、サーカス小屋を思い出す。手から離れた風船のように。

 
 幾時代かがありまして
 今夜此処でのひと盛り
 今夜此処でのひと盛り

 サーカス小屋は高い梁
 そこに一つのブランコだ
 見えるともないブランコだ

 頭倒(さか)さに手を垂れて
 汚れた木綿の屋根のもと
 ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん