リッチでなのに
 リッチな世界などわかりません
 ハッピーでないのに
 ハッピーな世界などえがけません
 「夢」がないのに
 「夢」をうることなど・・・とても
 嘘をついてもばれるのです


 CMディレクターとして一時代を築きながら、自ら命を絶った杉山登志の遺文。

 この一文を、市場主義への、あるいは虚飾としての広告への失望、あるいはそれに与した自らの断罪と見て取る向きもある。
 しかし、私はここから、ある種の陶酔感を嗅ぎ取ってしまう。
 これは見事なコピーだ。
 それこそ、CMに使える。

 彼の死を冒涜するつもりは全くない。
 けれども、この文章は練られたものであろうと思う。

 最期まで、彼は自分を「貫いた」のだ。性というならそうであるかも知れない。

 気楽に行こうよ俺たちは
 焦ってみたって同じこと
 のんびり行こうよ俺達は
 なんとかなるぜ世の中は
 気楽に行こう のんびり行こう
 気楽に行こう のんびり行こう

 手がけた作品に反して、生き急いだのか。
 高度経済成長の暗い落とし穴を見抜いていたのか。

 37歳。あまりに若いサヨナラ。