「また今年〈こんねん〉も夏が来て」、

 と、詩人はうたうのです。

 「――色々のことがあつたんです。
 色々のことをして来たものです。
 嬉しいことも、あつたのですが、
 回想されては、すべてがかなしい」


 そんなふうにうたうのです。

 涙を流すのは、忘れられたものたちでしょうか
 涙を流すのは、忘れられないものたちでしょうか

 また今年も夏がきて
 風も吹けば、雲も湧く
 梢の向こうに空はみなぎり

 
 「なにがなし悲しい思いであるのは、
消えたばかしの鉄橋の響音(きょうおん)」

 
 だれをうらむというでもなく
 なにを悔やむというでもなく

 また今年も夏がきて
 涙を流すのは、忘れられたものたちでしょうか
 涙を流すのは、忘れられないものたちでしょうか