父はビアホールにも行かなかったし・・・だって、そんなものあるわけないし、ビアガーデンと言い換えてさえ、田舎の街にはなかったし。
 パチンコも知っている限りしたことはない。流行歌とも無縁だった。
 父に、どんな夕暮れを、重ねていいかわからない。
 ・・・なのに・・・このうたの中に父が見えるような気がしてしまう。



「夕暮れ」(黒田三郎)

夕暮れの町で
僕は見る
自分の場所からはみ出してしまった
多くのひとびとを

夕暮れのビヤホールで
彼はひとり
一杯のジョッキをまえに
斜めに坐る

彼の目が
この世の誰とも交わらないところに
彼は自分の場所をえらぶ
そうやってたかだか三十分か一時間

夕暮れのパチンコ屋で
彼はひとり
流行歌と騒音のなかで
半身になって立つ

彼の目が
鉄のタマだけ見ておればよい
ひとつの場所を彼はえらぶ
そうやってたかだか三十分か一時間

人生の夕暮れが
その日の夕暮れと
かさなる
ほんのひととき

自分の場所からはみ出してしまった
ひとびとが
そこでようやく
彼の場所を見つけだす