九月のうた(谷川俊太郎)

あなたに伝えることができるのなら
それは悲しみではありはしない
鶏頭が風にゆれるのを
黙ってみている
 
あなたの横で泣けるのなら
それは悲しみではありはしない
あの波音はくり返す波音は
私の心の老いてゆく音
 
悲しみはいつも私にとって
見知らぬ感情なのだ
あなたのせいではない
私のせいでもない




 東京から仕事でやってきた友人と、二晩夕食をともにする。
 朝から夜も遅くまで実によく働き、大学で教えもし、毎日毎日何紙にも目を通し、かなりの本も読む。
 出張も多いが、休日には畑まで作る。

 「なにか、一生懸命になれることってないかな?」
 「スーパーウーマンじゃんか」
 「忙しいの・・・疲れた。・・・ね・・夜なにしてるの?」

 「特になにもしてない。昼もとくにこれってないよ」
 「なにかおもしろいことないかなあ・・ね」


 そうか。そんなに活動的でも、退屈の虫はいるんだ。だから、私なんかが退屈したって仕方ないわ。探すだけ無駄か・・・。
 で、ふたりで発見。なにもしないことを評価対象とすべきだね。だって「する」っていうのがいつも自動的なわけじゃないから。しなきゃなんない・・・は「する」とは別個かもよ。

 などなど。
 
 9月。長月は夜長月。寝覚月。

 おしなべてものを思はぬ人にさへ心をつくる秋のはつ風 (西行)