「僕らはまた逢える
それを信じて…」

その歌にはそんな歌詞も入っていた。

観光客のひとり。
私はお兄さんに対してそれぐらいの気持ちしか持っていなかった。

もう再会する事もないと思っていた。

ただ、お兄さんがまた大好きなピアノが弾けるようになるといいな…と思った。

私は大人になった時
今日の事を懐かしく思い出すだろうか…

お兄さんは今日の事をいつか思い出すだろうか…

都会の賑やかさにきっと忘れてしまうだろうけれど…

もし又ここに遊びに来るような事があれば思い出して欲しいと思った。

私は「ちび子」のまま、お兄さんとサヨナラをした。

名前は名乗らなかった。

帰宅してから母に話した。
ネックレスの事
勉強を教えてもらった事

「又遊びに来てくれたらいいね」

そう言ってくれた。

そして…
私はあの海へは行かなくなった。

何故行かなかったのか自分でもよくわからない。

でもいい思い出にしたかったのかなと思った。

無事受験を終えて私は高校生になった。

私には兄が1人
私の双子の妹が1人いた。

母が双子だったから家系的には珍しくなかった。

妹は私と違い、社交的で友達も多かった。
テニス部で活動していた。

図書館で過ごす事が多かった私とは昼間はあまり顔を合わせる事はなかった。

顔は同じだけど性格が違うので見分けやすい双子と周りには言われていた。

普通に仲は良かったし、私の母と叔母のように仲良く大人になって行くんだと思っていた。

そんな妹がある日突然私の前からいなくなった。  スピードを出して止まれなくなった車とぶつかった。

3メートル飛んで後頭部から落ちた。

兄から電話が来て病院に駆けつけたけど…

妹は誰にも別れの挨拶をしないまま旅立った。

両親と兄が妹の身体にすがり泣きわめく中

私はただひとり 
呆然としていた

同じ時間を母のお腹の中から過ごしてきたのに私だけ遺された。

心を半分
身体を半分

失ったような気がして何の感情もわかず喪失感だけが残った。

自室の隅で呆然と座っている私を東京からやって来た叔母が見て泣いた。
私を抱き締めて頭を撫でるようにして泣いていた。 

母と叔母は双子だから…
私の悲しみを理解してくれたのだろう。

妹の葬式が行われた。
私は焼香に来てくれた方々に壊れたロボットのように頭を下げた。

兄に連れられて外で学校の仲間たちに来てくれたお礼を言った。

その中に妹の彼氏だったケンちゃんがいた。
ずっと泣いたのだろう。
真っ赤な目をして少しやつれたように見えた。