川崎へ着いた俺はB&Dに向かいとりあえず初心者用のランニングシューズとスパイクを購入した。




初めてだし良いよな。




B&Dから出ようとすると身長も高く体つきも良いいかにもって感じの奴が店に入ってきた。


でけえーなあなんて思っていると陸上コーナーの椅子に腰掛けて雑誌を読み始めた。




陸上やってるんだまさか中学生じゃないよな、だって同じ中学生であの体型って卑怯だろ絶対強いじゃんか。



ずっと見ていたせいかそいつ目が合ってしまった、俺は目を反らし何食わぬ顔で店を後にした。


ちょっと見すぎたかな、でも素晴らしい肉体だよあれは、そんなことより塾かーめんどくさ、終わったら早速ランニングしてみようかな、明日部活あるしちょっとだけ。




一回家に帰り宿題を終わらせた俺は塾に向かってチャリを走らせる、聴いている曲は大好きなL'Arc~en~CielのDriver's High、塾の前はこれで無理やり気分を上げる。



信号の前で止まっていると南中のジャージ姿で走っている奴が二人見える。



身長からしてタメだろうな、何部なんだろうか。



俺も早く走りたい。



信号が青に変わると同時にこっちに向かって走ってくる、少し会話が聞こえた。



あの二人も陸上なんだな、毎日走ってるのかなあ。




なんて考えてたらもう塾に着いてしまった、結局気分上がらなかったな。



教室にはすでにヨッシーがいた。



「ヨッシーさあ、塾終わったら一緒に走らない?」


「いいよ、新しいシューズ試してみたいし。」


「俺も!それで走りたくなったの。」


やっぱ新しいもの買うとすぐに試してみたくなるよね、冷めてるヨッシーも一緒なんだそこら辺は。




キーンコーンカーンコーン


授業開始のチャイムがなる。




授業始めるよ~!




塾の後が楽しみだ。








「きょうつけ!礼!」




ながーいながーい校長の話が終わった。

あんたの話なんか興味ねーんだよ…




「次は部活動紹介です」




とアナウンスが流れた。


俺は小学校のころ連合運動会の選手に選ばれたこともあり陸上部に入ろうと考えていた、ヨッシーやクロも陸上部入るっていってたし。




サッカー部、野球部、ハンドボール部とそれぞれの部活が自分たちの部活をアピールしていき、次に陸上部の番が回ってきた。




「それでは次陸上部お願いします」




「はい、えー僕たち陸上部は…」




へー…あれが陸上部の部長か…すげー良い体格してる。とても同じ中学生には見えない。

てかユニフォームださすぎやしねえか?あんなん着たくねえよ。




練習メニューや部員数、実績、スローガンなどを淡々と紹介していく。




そして…




「えー個人的な話になってしまいますが僕の今年の目標は全国大会出場です、部長として恥ずかしくないような走りをして山田先生を全国の舞台に必ず連れて行きたいと思います。以上陸上部でした。」




と言うと部長は礼をして一歩後ろに下がる。




「それでは次テニス部…」




陸上部以外の部活に興味がなかったから他の部活はどうでもよかった、なんかつまんなそうだし。




「以上を持ちまして部活動紹介を終わります、続いては終わりの言葉、教頭先生お願いします」




というと教頭先生が舞台の上に立ち終わりの言葉を告げた。




「以上を持ちまして平成18年度入学式を終わります、きょうつけ!礼!」




あー終わった終わった…



先ほどまでの静けさが嘘かのように体育館内が一気に騒つく。



後は教室に戻って帰るだけ。



体育館の外に出ると雨が降っていた、めんどくせー。



雨に濡れないように足早に校舎内に入り教室へ向かう。



教室に戻ると担任から入部届けを渡された、二週間の仮入部期間を終えてから入部する部活を書いて担任に提出することとのことだ。




考えるまでもなく俺はもう入部届けに陸上部と書いて鞄にしまった。



「それでは今日はこれで終わりにします、起立!きょうつけ!礼!」



終わった終わった…



「直輝~!ヨッシー!今日遊ぼうぜ」




クロが廊下から声を張り上げて言う。




ヨッシーは「ごめん今日髪切り行く」と言い「明日遊ぼう」と言い残し教室を後にした。



「わかったじゃあ明日な、直輝は?」




「ごめん今日用あるから無理だわ」



「はあ?なんだよノリわりーな、じゃあ岡と遊ぶからいいわ」




と不機嫌そうに階段を降りて行った。




なぜ今日遊べないかというと陸上部で使う新しいシューズを買うために川崎のB&Dに行くため。




さすがに小学校のころの靴は使えねーし。




…そういえば今日塾あったんだ、テンション下がる。




とやや下がったテンションのまま靴に履きかえて外に出ると先ほどまでの雨は止み青く澄み渡る春らしい空になっていた。




「おっ雨止んでる止んでる」



下がっていたテンションが上がる。




「塾だりーけどがんばるか…!」




俺は川崎へ向かうためにバス停に向かった。


桜が舞い散る今日


4月8日春




俺、開田 直輝(カイタ ナオキ)は今日、家から10分ほどの距離にある南加瀬中学校に入学する。




正門の前で配られていたクラス表を片手に4階にある自分のクラスへと向かう。




「えーと…ここか…」




ガラガラ…




同じクラスには小学校からの友達である吉岡 佑也(ヨシオカ ユウヤ)が既に指定されている席に座っていた。




「おーヨッシーもういたんだ」




あだ名はヨッシー


小学校のころからのあだ名。




俺は少しホッとした表情でヨッシーの隣の席に座る。




「ヨッシーが同じクラスで良かった~」




とヨッシーに話し掛けるが反応はない。




いつものことだし俺は気にすることもなくクラス表を眺めていた。



すると…



ガラガラ…




「皆さん初めてまして!担任の関さおりです!」




朝からテンション高いなー…




「今日から皆さんは中学一年生です!これから楽しいこと辛いこと色々なことが沢山起きると思いますが頑張っていきましょう!」




あーまじだりー…
こういう熱血教師嫌いなんだよなー…




担任である関さおりがべらべらと喋っている間に体育館へ移動する時間がきた。



「…はい!じゃあ廊下に出席番号順に並んでねー!」



まだみんな緊張しているのか口数が少ない。




出席番号順に並び体育館へ移動している途中に「おい直輝!」と呼ぶ声がした。




クロだ。




クロの本名は黒須健太(クロス ケンタ)。
小学校時代はいつも俺、同じクラスのヨッシー、そしてクロでいたくらいだから仲は良いんだと思う、ちょっと…いやかなりSな奴でちょっと不良っぽい雰囲気。




俺を見つけると列から外れて俺のほうに向かってきた、右手で俺の肩を軽く殴りこう言う。




「お前何組?」




最近、会ってなかったけど中学に入っても相変わらずSだなあクロは…




「3組だったけどクロは?」



「4組だよ、隣だな」




なんだ隣だったんだ




「おい!黒須列に戻れ!」




クロは、「は~い」と言うと「後でな」と言い残しダルそう列に戻っていった。




体育館には今年度入学した約250人ほどの生徒が狭い体育館にすでに列を作って並んでいた。




俺たちのクラスが最後だったんだ。




「はい座って~」




と関さおりが言う。




俺はいち早くその場に座りあぐらをかきながら校長が出てくるのをうとうとしながら待っていた。