『白夜行』東野圭吾
|出版社:集英社
|発売年:1999年
|ページ数:860頁(文庫版)
○ジャンル
ノワール/ミステリー
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◯謎ランク
|★★★★★☆☆☆☆☆
|本格ミステリーとは言えないかも。
|純粋に物語の結末を楽しむタイプ。
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◯物語の楽しさ
|★★★★★★★★★★
|ただひたすら物語に引き込まれる
|
◯キャラクターの魅力
|★★★★★★★★★★
|メインの2人以外のキャラも総じて
|良キャラが多い
|
◯リーダビリティ
|★★★★★★★★☆☆
|場面と時が切り替わりまくるが
|極めて読みやすい。
|長さとフォントの小ささで減点
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◯得られる知識量
|★★★★★★★★★☆
|
◯子どもへの安全性
|★★★★★☆☆☆☆☆
|エロ描写:有り
|グロ描写:無し
|
◯おすすめ度
|★★★★★★★★★★
|
○おすすめポイント
・稀代の作家・東野圭吾の代表作
・文章と構成の技巧が凄まじい
・欠点が無すぎて怖いくらい
・長さがまるで気にならない
・圧倒的な読後の余韻
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◯総合ランク:悪 (SSS)
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◇感想
やはり東野圭吾は怪物だな。
これは私がしばらく読後の余韻に浸って頭を冷やした後に思った感想である。
私が売れっ子を忌避する意地っ張りなだけなのだが、東野圭吾作品はどれを読んでも異様なハイクオリティに関わらず、どうしても「好きな作家は東野圭吾です!」などと言いずらいものである。
それはおそらく何かしらの"売る気"を感じ取ってしまうからなのかもしれないが、本作はどう考えても大衆に迎合した作風ではない。
おまけにめちゃくちゃ長い。
つまり本作を読んだことで「好きな作家は?」と聞かれた時に東野圭吾をその一員に加えることができるようになったのだ。
○文章と構成の超絶技巧
これが本当に凄い。
優れたミステリー作家は概ね優れた技巧を駆使するものだが『白夜行』は別格感がある。
膨大な物語の中で主役となる男女が主観になることは一度もなく、その時期に関わっていた周囲の人間の目線の積み重ねのみで構成されているため2人の心理は分からないのだが、それゆえに読者には様々な解釈の余地が残される。
また本作は東西ミステリーベスト100の上位に格付けされたミステリーではあるが、数々の事件の犯人はどう考えても2人が関わっているに決まっているし、事の発端となった質屋殺しについても犯人は言わずもがなだろう。
つまり本作は本格ミステリーではない。
それにも関わらず物語がどのように収束するのかという純粋な謎が気になり読む手を止められないのだから驚きである。
この膨大なストーリーを1つの物語としてまとめあげた東野圭吾の技巧は尋常ではない。
↓ジャンルは違えど心に浮かんだイメージはサガフロンティア2のエッグ戦だ。
○常に不穏、常に面白い。
暗黒小説=ノワールと称されるだけあって、本作は長大な物語の全編に渡って不穏な空気が漂っている。
また物語は淡々と進み、次々にシーンが切り替わっていくのだが緊張感はまったくと言っていいほど途切れることなく最後まで続く。
解説にてノワールの大御所である馳星周氏は非常に面白い解説の最後に以下のように断じている。
重要なことはただひとつ。
『白夜行』は傑作だ__これに尽きる。
まさにその通りだと思う。
ノワールだミステリーだ、はたまた青春小説だなどというジャンル分けは不要であり、ただひたすら面白いのである。
○私の解釈
微妙にネタバレになるかもしれないので未読の方はこの項目は読まない方がいいかもしれない。
本作はなんと言っても主役二人の心理が不明であり、なおかつ解明されていない要素も多々あるため様々な解釈ができると思う。
そこで私は二人は愛し合っていた、または男女の恋愛感情を超えた家族のような関係にあったのだと考えたい。
最後に雪穂は泣いたのだろうと思う。
いや、そう思っておかないとやってられないというのが正直なところだ。
考え方によっては....というか雪穂がサイコビッチで亮司が従順な魔女の騎士と考えた方がスムーズなのかもしれないがそんなの嫌だなあ...。
↓ロマサガ(ミンサガ)より。
二人はこんな関係であってほしい。
○まとめ
日本一の売れっ子である東野圭吾作品だし、その中でも特に売れに売まくった作品であるため私がお墨付きをする必要などないとは思う。
しかしあえて言いたいと思う。
絶対に読むべきだ。
読みたいがページ数にビビっているのならなおさら読んだ方がいい。
900ページ近い長さはむしろ長所でありサービスでもある。