明鏡 ーもうひとつの信義ー

明鏡 ーもうひとつの信義ー

韓国ドラマ『信義ーシンイー』二次小説

韓国ドラマ「信義」とは、全く違うお話になっています。
ファンタジーな『信義』です。
二次小説をご理解のうえでお読み下さい。
学生ですので更新は気ままでですが、
よろしくお願い致します。


~明鏡の歩き方~

テーマ毎にお読み頂ければ読みやすいかと思います。

本編①<はじまり>完
本編②<明鏡>完
本編③<明月>完
<ヨンと明月のお話>
本編④<月宵>完
<ウンスとムンチフのお話>
本編⑤<胡蝶の夢>完
<ジニと明媚の出逢い>
本編⑥<紅灯籠>完
<ウンスと閻羅王との約束>
本編⑦<Second Love 哀歌>完
<チャン・ビンとウンスクの泡沫の恋>
本編⑧<Second Love S>完
<ルビの婚姻までの二人>
本編⑨<Second Love >
<ルビとシンの恋の道程>
月・日・星<三光鳥>New❤只今休憩中
本編⑩<父とムスメの三日間>完
<ヨンとルビが入れ替わったお話>
本編⑪<赤い月>完
<ルビとウンスのお話>
本編⑫<ヨンとウンスとウダルチ>完
<トルベとジウンのお話>
本編⑬<前門の白虎・後門の黒豹>完
<ピとウンスのお話>
本編⑭<微睡み>光明『花冠』コラボ
短編<30日俺の事だけを想ってくれ>完
短編<未分類>
短編<艶男シリーズ>
短編<潜入捜査 全8話>
<ヨンとウンスの捕物帳>
短編<王様と私>寝物語
短編<百物語>白蛇抄・奈落の底
<白蛇ウンスとヨンのお話>
短編<Trip>
<明鏡のヨンとウンス・信義のヨンとウンスの夢>
短編<妖あやかし>
<灰猫ウンスとヨン+白猫とトクマン>
短編<獣 全12話>
短編<西域の恋 全8話>
<白虎ヨンとウンスのお話>
短編<西域の愛>New❤不定期更新中
<白虎ヨンとウンス、真珠とコウのお話>
短編<七日一宵>光明掲載
短編<鬼神>
短編<トクマン最後の恋 全8話>
<トクマンとファランの恋>



待って、お願い

病院を買収しようとするチェヨンの腕を私は掴んだ
病院の経営が傾いた時、私は本気で
「こんな病院売ってしまったらいい」
そんなふうに思っていた、これは事実なの
でもそんな時父はこう言ったわ
「例え悪どいと言われても、それで助けられる命があるなら私は悪魔と取引をしてもいい」
「お父さん」
「ユンジョン、お前もいつかはこの病院を継いでいく」
「兄さんが会長になったらいい」
「ユンジョン、一人でできることなどしれている」
お父さんは莫大な借金をして病院を大きくしていった
そしてコ・メディカルホスピタルグループを創りあげた

「ユンジョン、救える命は全て救い取ってくれ」

私は救命救急に特化した高度救命救急センターの院長になるはずだった
「ユンジョン、どうしました」
「ウンスが勤めている病院は、私の病院なの」
「知っています。お辞めになったのでしょう?」
チャンは私の肩に手を乗せた、あたたかい・・・夢じゃない
「いいえ、あの病院は、私の父が創り上げた病院なのよ」
「隊長、買い取らずとも出来る事はあります」
「チャン」
「貴女は、もう辞める必要はないのでは」
気がつけばあの人の両手は私の肩に添えられていた
決して力は入っていないの、振り払おうと思えばできる
でも私はその手をずっと待っていたのかしれない

「ユンジョン、俺に手を貸してください」

目の前にいるチェヨンは、私が知るあのチェ将軍の生まれ変わりだというの
戦うよりもただ一人の女を想い追いかけたそんな男だっていうの




病院のロビーで私とユンジョンは一日中ただ座っていた
大勢の人が自動で開く扉から入り、出て行く
絶え間なくサイレンを鳴らした車が来ては、急患が運びこまれる
かと思えば遠くから聞こえた爆音が次第に大きくなり近づいてきた
「此れは」
「ドクターヘリが近づいてるの」
「人は、この時代でも病を克服できぬのですね」
「できないわ、生きる事は難しいから」
ユンジョンは、困った顔をしていた
「でも見て、治って退院していく患者さんもたくさんいるの」
「そうですね」
「私ね、この病気が治った方がそのまま健康に生き続けられる部門をつくりたいと思っている」
「素晴らしいことです」
「だから、チャン手伝ってくれない?」
重ねられた手が、震えていた
「貴女の傍にずっといて良いのですか」
「いて良いじゃないわ、ずっといて欲しいの。何があっても」
ざわざわと人が行き交う病院のロビーの真ん中で私はユンジョンの頬に手を当てた
「私は、貴女にとって嗜虐的な男ですよ」
「チャン」
「ほら、こんなふうに」
目をとじる暇も隙も貴方はくれない
小さな悲鳴が水面を伝う波紋のように押し寄せてくる
貴方の手が添えられた頬はなんともないのに、私の鼻がヒクついた

「もう怖いものはないでしょう?」
「そうね、今はもう何もないわ」

後で兄さんからこっぴどく叱責をされた
今までなら私は「小さなユンジョン」だった
「聞いているのか、院長が自分の病院で男と・・・」
「兄さん、あの人はね私の特別なの」
「お前」
「だから、あそこであの人はくちづけをしたのよ。もう怖がるなって」
いつもなら真っ赤になって怒り続ける兄さんが、溜息をついた
「やりにくくなるぞ、ユンジョン」
「ずっとやりにくかったから、吹っ切れた」
兄さんは私に一歩近づいた「なに?」どうしたの
両手を広げ体を包みこむように抱きしめた
「手が足りない、父さんと私では。ユンジョンお前がいたらもっと多くの患者を助ける事ができる」
「兄さん今までごめんなさい」
私の歪んだ心が、あの人が変えてくれた

「内緒よ」
「ありがとう」

ユンジョンは俺に病院内の管理システムに入るパスワードを手渡した
「患者の個人情報は絶対入らないで、約束よ」
「わかりました、武士の約束は命をもってです」
「そこまで大袈裟でなくていいから」
「では、あの方が入られる日を」
勤務日を知って何をしたいの?と聞いたら

「朝を一緒に迎えたいのです」

あのチャン・ビンがお節介をしてくっつけたのが分かるわ
純粋なのよ、チェヨンって
「惚れましたか?」
「ちょ」
「冗談ですよ」
真顔で言われて冗談もないわチャン
「それより」
「それより?」
「いつまでチェさんの家にいるの?」
「その事ですか、其れがですね・・・意外にもテソン様の食事が美味いのです」
「なにそれ」
「やわいベッドも寝心地がよく、衣も隊長が着切れないくらいあり」
そういえば会う度に違う服を着ているわ
しかもピッタリなのよ
「あのね、私だってお金はあるのよ。服ぐらい」
私の言葉を私の手を握る事で遮った
「良いのです。今は離れていたとしてもこの先ずっと一緒です」
さぁ行きましょう、チャンは強引に歩きだした

問題は山のようにある、身分証だったり、医師免許
父や兄に紹介もしないといけない、ウンスのこともある

「ほら見られていますよ、ユンジョン」

見られていると言いながら繋いだ手にキスを仕掛けてくる
貴方って人は、根っからのサディストなのね
季節は、春を越えて夏になろうとしていた

「海に行かない?オッパ」





水着で貴方の目を丸くさせてみたい、私だってサディストだから